帰り道
バス停に向かい歩いていると
後ろから
「送るよ」
と声をかけられた。
振り返ると草薙先輩が立っていた。
「あっありがとうございます。
でも、バスなのですぐそこだから
大丈夫です。」
「バス通なのか。
バス停、帰り道だから、ついで。」
「ありがとうございます
じゃあ、お言葉に甘えて送ってもらいます!」
少し気まずさもあるが
草薙先輩が送ってくれる
嬉しさと恥ずかしさと緊張で
いっぱいいっぱいだった。
「おう。
さっきみたいな詩集よく読むの?」
「はい。写真が好きなので詩集だけじゃなくて
写真集もみたりします。」
「そうなんだ。」
「先輩も好きなんですか?」
「あぁ。俺も写真好き。」
「そうなんですね。
さっきの作者さん
空だけの詩集も出してるんですけど
なかなか見つからないんですよね〜。」
「空の彼方?」
「そうです!
先輩詳しいですね!
発行部数が少なくて見つからないんですよね。」
「俺、持ってるよ。」
「えっ、すごい!!」
「貸してやるよ。」
「いいんですか?
すごく嬉しいです。」
「明日持ってくるから。佐伯に渡せばいいか?」
「はい。ありがとうございます!
楽しみです。
あっでも部活休みなので
まゆ先輩と会う機会がないかもです。」
「そーいや、そーか。
じゃあ連絡先教えて。
タイミングみて渡すから。」
「えっあっはい!」
すぐスマホを出し、IDを渡した。
「おっバス来たな。
じゃあ、また明日!」
バス停の手前でちょうど
バスが来てしまった。
「今日はありがとうございました。」
「おう。」
先輩はあっさりと帰って行った。
私はその背中を見ながら
話ができた喜びを噛み締めた。
バスに乗っても
ニヤケが止まらず
表情を隠すように下を向いていた。