出会い
5月
始まった高校生活にも慣れたある日
廊下でいつものように
4人で話していた。
たまたま
見上げた2階のベランダに
1つ上の先輩達が
騒いでいるのを見つけた。
その中の一人の笑顔に
とても惹かれた。
もともとカッコかわいい系が
タイプの私。
ボーッと見ていただろう私に
「どうしたの?」と舞が聞いてきた。
「いや、なんでもないよ〜
先輩達が楽しそうだから見ちゃってた!」
めっちゃタイプの先輩を見つけたとは
なんとなく恥ずかしくて言えなかった。
ベランダの場所から
4組らしいことは分かるけど
それ以外は分かんないし。
その日から
ベランダを見るため
上を見上げるのがクセになっていた。
数日後
普段はお弁当と水筒を持参しているのだけれど
朝バタバタしていたから
お茶を持ってくるのを忘れた。
「飲み物買いに購買行ってくるから
先に食べてて」
皆にそう伝え購買に行こうと思ったら
香織もお茶を買いに行くと言うので
2人で行くことにした。
2階の購買へと
階段を上がっていると
あの先輩がこっちへ
友達と2人で降りてくる。
なんかちょっと照れるなぁと
思っていると
香織が
「こんにちは」と先輩達に
声をかける。
えっ!?知ってるの?
と思って香織の方を見ると
笑顔がかわいい先輩ではない方が
「ちは。購買?混んでるから
早く行った方がいいよー。」
と話しかけていた。
「ありがとうございます。
急ぎます。」
と階段を登っていく香織。
そのあとを
ペコっと頭を下げて
通り過ぎた私。
とても緊張した。
やっぱり近くで見ても
素敵だなぁと思いながら
ニヤニヤするのを抑え
香織のあとを追う。
「部活の先輩?」
「うん、そうだよ。よく話すんだ。
弓道すごく上手で去年全国行ってるんだって」
無事にお茶をゲットし
教室に戻りながらさっき話していた先輩のことを
聞いていた。
聞きたいのはもう1人の先輩の方だけれど
すれ違えた喜びを噛み締めていた。