02
苛立ちを隠しきれず、フェールは部屋の中を歩き回っていた。
「申し訳ございません……!」
「――いや……書状も馬車も本物だったのだ……仕方ない」
震えながら平伏し謝罪の言葉を叫ぶ侍女たちの姿に我に返ると、フェールは深くため息をついた。
「ロゼ……」
ルーチェは祈るように胸の前で両手を握り締めた。
最初に帰ってきたのはルーチェだった。
アルジェント家から迎えが来てロゼが出かけたと聞かされ、何か違和感を感じ……それはすぐに悪い予感となった。
ロゼが本当にアルジェント家に行ったのか確認するよう頼み、王宮へも使いを出してもらった。そして連絡を受けたフェールがすぐに帰ってきたのだ。
ヴァイスも将軍も、ロゼを屋敷へ呼んでなどいないという。
だがフェールが確認した、使いが持ってきた書状は確かにアルジェント家のものだった。
迎えの馬車もアルジェント家のものだとロゼを見送った使用人たちが答えた。
王宮で話を聞いたヴァイスが確認のために屋敷へ行き、その連絡を待っているのだが……それはとても長く感じた。
「フェール様は……ロゼと共鳴しているのですよね」
ルーチェは口を開いた。
「それでロゼの居場所を知る事は……」
「――私が分かるのはロゼの感情が乱れた時だけだ」
フェールは息を吐いた。
「それに距離が離れてしまっては……」
「……そうですか」
ルーチェは俯いた。
「探知の魔法があればいいのに……」
ルーチェには癒しの力しかない。
他の色持ちも、その能力は限定されている。――前世の物語にあったような、多彩な魔法が使えたら良かったのに。
バタバタと廊下が騒がしくなり、フェールとルーチェははっとした。
乱暴に扉が開くと息を乱したヴァイスが立っていた。
「……ロゼは」
「――兄だ……」
「ディラン?」
「あいつが……ロゼを連れ去った……」
ルーチェは息を飲んだ。
「どういう事だ!」
「……あいつは今朝屋敷へ現れると封筒と馬車を用意させ、また出て行ったと……」
馬を飛ばしてきたのだろう、荒く息を吐きながらヴァイスは言った。
「馬車は戻っていない……第二騎士団に捜索命令を出した。――あいつが手配中なのは屋敷の人間も一部しか知らなかったらしい……」
ヴァイスは拳を握り締めた。
「……捜索を内密に進めていたのが裏目に出た」
「ど……うしてディラン様がロゼを……」
「……分からないが……あいつはおそらく追い詰められている」
ヴァイスは息を吐いた。
「何の為にロゼを……どこへ……くそっ!」
ダンッ! と乱暴な音を立ててヴァイスは拳を打ち付けた。




