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異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした  作者: 冬野月子
第5章 繋がる過去

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38/62

01

「ふーむ……」

手元の紙を見つめてランドは唸った。

「こういう事はもっと早く言って欲しかったな」

「すみません……」

「内容的に言いづらくて……」

二人で話し合った結果、ランドには乙女ゲームの事を明かそうという事になった。

口で説明するのも大変なので、ゲームの内容などをまとめて書いたものを持ってきたのだ。


「……まあ確かに。自分たちがその恋愛ゲームとやらで女の子に攻略されるといわれてもね」

ランドは微妙な表情を浮かべた。

「殿下は喜びそうだけど」

「……喜ぶんですか」

「ここ数日、王宮内で回っている噂を知ってる?」

ランドは顔を上げると二人を見た。

「王太子殿下はある子爵令嬢に想いを寄せているんだけど、身分の違いに悩んでいるって」


「……それって……」

ルーチェは顔を引きつらせた。

「アルジェント将軍の戦略を参考にしたってオリエンスが言ってたよ」

「戦略?」

「先に噂を撒いて周囲に認めさせるって。ロゼとヴァイスの件も、陛下にまで知られてしまったらフェール達も否定出来ないからねえ」

そう言ってランドは口角を上げた。

「これまで一切女性の影がなかった殿下の初めての噂だ。王宮中が相手を探っているよ」

「――ちなみにですが……そのお相手は……」

「君しかいないでしょ、ルーチェ」

「……どうしてそうなっているのか分からないんですけれど」

こちらから断れる立場ではないとはいえ……あれだけはっきりと拒否の意思を示したのに。


「〝攻略〟したんじゃないの」

ランドは手元の紙に視線を戻した。

「そんな覚えはありません」

「まあ、君の何かが殿下に響いたんだろう。……ところでこれ、君たちが書いたんだよね」

「はい……」

「ずいぶんと分かりやすくまとめられているけど、もしかして向こうの世界で書く能力を身につけたの?」

ルーチェはロゼと顔を見合わせた。


「そうですね……大学でレポートをよく書いたので……」

「ダイガク? レポート?」

「あ……ええと。大学という、大勢の人が集まって様々な学問を学ぶ場所があるんです。そこで学んだ事や調べた事をまとめて提出する事が多いので……」

「そこは女の子も学べるの?」

「……そうですね、私たちがいた国では性別や身分は関係ありませんでした」

この国では日本の大学のような教育機関はない。

騎士や王宮などに勤める事になった者は集められて一定期間指導を受けるが、それらは専門的なものだ。

貴族達は個人で教師を雇い子息の教育を行うが、男女でその内容は異なり、ロゼたちが日本で身につけた文章術や計算能力と言ったものは、普通の令嬢は知らないものだった。


「へえ、興味深いね」

ランドは目を光らせた。

「そこで学んで文官になるの?」

「文官に限らず、色々な仕事に就くことが出来ます」

「仕事先は自分で決めるの?」

「必ずしも希望通りではありませんが……選ぶ事は出来ます」

「それはいいね。うちの図書館はいい人材の確保に苦労していてね……この国の仕事は基本世襲制だから外部から連れてくるのも難しいんだよ。向こうの世界の教育制度について今度詳しく教えてくれる?」

「はい、ぜひ。……できれば私のような下級貴族の女性が就ける仕事が増えるといいのですが」

この国の貴族の家に生まれた女性は他の貴族の家に嫁ぐのが普通で、仕事といえば王宮などの侍女くらいしかないのがルーチェには不満だった。


「――ああ、そういう考えをするから君は殿下に怒っていたのか」

納得したようにランドは頷いた。

「……そう……ですね」

転生してから十八年間、この世界の住人として生きているけれど、どうしても前世での環境や感覚を忘れる事ができなかった。

結婚して家に入るよりも働きたい。

それは〝ひかり〟の望みでもあった。


「確かにこの国の貴族の女性は仕事を持つ事はあまりないからね」

「向こうでは結婚しても仕事を続ける事が出来るんです」

ルーチェは視線を宙へと向けた。

「……性別や生まれた家で仕事や役割が決められてしまう現状が変わればいいんですけれど」


「君が王妃になれば変えられるかもよ?」

「え……は?」

ルーチェは目を丸くしてランドを見た。

「この国では女性の立場は弱いけど、王妃は別格だからね」

「素敵じゃない、ルーチェ!」

話を聞いていたロゼが目を輝かせた。

「ルーチェが王妃になってこの国を改革するのね」

「いや、それは……」

「変わってほしいと思ってるだけじゃ変わらないのよ」


「はは、ロゼも言うね。でも確かにルーチェならば変えられるかもしれないよ」

「……そうでしょうか……」

「何せ君は〝光の乙女〟だからね」

ランドは笑顔で言った。

「君が関わる事で相手を変えられるんだろう? ああ、それを言ったらロゼもか」

「私……ですか?」

ロゼは首を傾げた。

「フェールとヴァイスはロゼのおかげで変わったよね」

「……私には分かりませんが……」

フェールのロゼへの態度は昔から変わっていないし、ヴァイスも初めて会った時からロゼへの好意を隠そうともしていなかった。


「君が戻ってくる前のフェールはまさに氷のようだったし、ヴァイスも騎士団員には慕われていたけれど貴族相手の態度は酷かったからね。二人がまともになったのはロゼのおかげだよ」

「そう……ですか」

「だからルーチェにも期待しているよ、殿下を変えてくれるって」

「……はあ……」

ランドの言葉にルーチェはやや遠い目をして曖昧に返事を返した。

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