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悠久のワールドガーデン  作者: 加治 翔馬
01 王都アグナハル篇
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旅立ち

アルフレッドから更に魔法技術と剣術を叩きこまれたレイは自分の特性を生かした戦い方を身につけていった。

魔法の詠唱は通常であれば杖を使うか両手の詠唱が基本であり、片手詠唱をすると威力は半減して安定しない。

レイに関していえば威力が半減したとしても通常の魔法よりもまだまだ強力で問題はなかったし、魔力が回転しているため安定していた。


ある日修行中に今まで使っていたショートソードが折れてしまった。


(このショートソードにはだいぶお世話になったな。)


レイはとても悲しんでいたが、家の倉庫にあった刃渡り85センチのロングソードに持ち替えていくつもの修行をこなしていった。





そして遂に成人を迎えた今日、レイは村を出ることになった。


「今までお世話になりました!」


村の入り口の前にレイは立ち一礼、サラとアルフレッドを始め、村長やメアリーさんにケイト、ロイ、ボブさん達も集まって手を振り声をかけていた。


「あんまり無理するんじゃないよー!」

「いつでも帰っておいで!」

「レイ兄ちゃん気をつけていってらっしゃい!」

「もし帰ってくるときは王都でお土産よろしくね!」


村人達はレイの姿が見えなくなるまで手を振り続け、まるで村を救った勇者のように見送った。



チェスター村を出たレイは冒険者としてギルドに登録するために王都アグナハルを目指した。

それともう一つ、診療所にいる母のハルに会うためでもあった。

王都アグナハルはこのチェスター村から歩いて約二日。

馬車で移動したとすれば一日かかるかかからないか、それくらいの距離にあった。


しばらく道を歩いて日は傾きかけていた。遠くに建物が見えた。

レイはその建物に近づくと食べ物のいい匂いがした。


(そういえばお腹空いたなぁ…野営しようと思ってたけど宿屋に泊まれるならそっちの方が安全だしな、うん、そうしよう)


レイはお腹をスリスリしながら宿屋に入った


「いらっしゃいませー、お一人様ですか?どうぞどうぞー!」


八才くらいの可愛らしい獣人の女の子が猫耳をひょこひょこさせながら出迎えてくれた。

なるほど、この宿屋は食事処も兼ねているというわけだ。何人か冒険者の姿がちらほらと見えた。


「うん、一人なんだけど一泊いくらかな?」

「はーい、お一人様ですと朝食付きで五百ペルカでーす!」


通貨単位は一ペルカが銅貨一枚、百ペルカで大銅貨一枚、千ペルカで銀貨一枚、一万ペルカで金貨一枚、百万ペルカで白金貨一枚だ。


チェスター村では通貨流通があまりなかったため馴染みがなかったが、レイはカバンから袋を取り出して大銅貨五枚を支払った。

大銅貨二十五枚に銀貨八枚の一万五百ペルカが袋の中に残った。お金は何かあったときのために母が残してくれていたものを少し貰っていたのだ。


「ありがとうございます!はい、これお部屋の鍵です!」

「ありがとう、部屋に行く前に食事したいんだけど大丈夫かな?」

「大丈夫ですよー!一名様ご案内しまーす!」


女の子はそういうと入り口から奥にある窓際の席を案内してくれた。


「何かおススメみたいなものはあるかな?」

「今日はお父さんが鹿を狩ってきたから鹿の料理が新鮮で美味しいよ!」

「じゃあそれを頼むよ」

「わかった!他には何かいる?飲み物とかいるかな?」

「うーん、そうだなぁ。あ、あそこの棚にあるのはミードかな?それの水割りをよろしく」

「はーい、お父さーん、鹿のお料理をお兄ちゃんにお願ーい!」


女の子のお父さんが厨房で切盛りしながら手を挙げて返事をした。


「ベッカちゃんはお父さんのお手伝いして偉いねぇ、将来はいいお嫁さんになりそうだな!」


女の子の名前はベッカというらしい。

冒険者風の男が笑いながらそういうとベッカは恥ずかしそうに顔を赤らめて、耳がお辞儀をしていた。

ベッカはカウンターに入って上の棚にあったミードの瓶を取ろうとしているが背伸びしても届きそうになかった。

それを見ていたお父さんは笑顔で瓶を取ってベッカに手渡して頭を撫でていた。

レイの座っている席から見るとカウンターからベッカ耳だけが見え隠れしていたが、台座にのったらしく、顔が見えるようになった。少し身長が伸びたようにみえるベッカはまず水を木のマグカップの半分くらい入れた。今度はミードが入った瓶の蓋を開けて両手で丁寧にに注いで入れた。そして蜂蜜を少し落とし入れてレモンを少し絞って入れた。

蜂蜜の重みでゆっくりとミードは水に溶けていき最後は木で作った棒でかき混ぜていた。


「はい、お兄ちゃんおまたせ!」

「ありがとう、ベッカちゃんっていうんだね、お父さんのお手伝いをしてて偉いね」

「えへへ、ありがと!もうすぐお料理持ってくるからそれ飲んで待っててね!」


ベッカは鼻の下を人差し指で擦りながら耳をピンと伸ばして笑っていた。

レイはお酒を飲むのは初めてだったがこれはとても美味しかった。

ミードの水割りに蜂蜜とレモンを絞って入れるだけでより蜂蜜で作ったお酒というイメージが強くなった。

搾ったレモンがいいアクセントとなって蜂蜜の甘みが強くなっていた。


半分くらいミードを飲み終えたくらいで料理が運ばれてきた。

サラダとトマトを煮込んだスープ、いい匂いがするのは鹿のステーキだった。

サラダには塩とオリーブオイルがかけてあり、スープは鹿の骨を煮込み出汁がよく出ていた。ステーキはよく焼けていて、ナイフで切ると中までちゃんと火が通っていて肉汁が溢れ出ていた。

レイは口の中から唾液が出るのがわかった。


「美味しそうだね、いただきます!」

「はーい、お父さんの作るお料理は凄く美味しいよ!ゆっくり食べてね!」

ベッカは木で作られたお盆を胸の前に両手で抱えてお辞儀をした。



レイが食事をしていると、酒を飲んでいた二人の客が言い争いをしていた。


「おい、なんだその態度は。俺はお前より冒険者としての経験があるから言ってるんだ」

「はいはい、でも俺が言ってることって間違ってますかねぇ?」

「なんだと?!」


髭面の冒険者は相手の胸ぐらを掴み立ち上がった。


ベッカちゃんがそれを見てあたふたしていた。


「やめなさい!子どもが見ている前でいい大人が恥ずかしくないの?」

金髪のロングヘアの女冒険者がそういって仲裁に入った。


「あ、あぁ、すまない、大人気なかった。ベッカちゃん。親父さんも悪かった」


髭面の男ともう一人もやってしまった、というような顔をしていた。

女の冒険者はというと自分の席に着くとあたりを見回していた。

そして女冒険者は静かに呟く。


(( 鑑定 ))


(な、なんなのあの子の魔力は!?…もしかしたら…!?)



«…ねぇ、聞こえる?»


どこからか頭の中に声が響いた。どこからしたのかわからなかったために辺りを見回した。


「こんばんわ、ちょっとそこの席いい?」


返事を聞かずに彼女は向かいの席に座るとまたレイの頭の中に声が響いた。


«…おーーい、聞こえる?あ、やっぱり。目があったってことは聞こえてるわね。初めまして、私の名前はアカネ。アカネ=スターフィールドよ。突然でビックリしただろうけど聞いてちょうだい»


レイは静かに頷くとアカネはそのまま話を続けた。

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