閑話 襲撃 1.5 ユーシャパーティ
ここに来てユーシャ登場!?
最前線にラインハルト率いる800名の兵士達が横に80×10列の広がりで陣形を広げる。最前列には大楯を構えた剣士。そして3列目から5列目までは槍隊。
6列目から8列目までは弓士と魔法使い、9列目と10列目は僧侶が並んでいた。
後に続く冒険者達は少数精鋭のパーティ総勢1200名程だ。それぞれ名の通ったものもいたが最高でもCランクパーティが4つ、その他殆どがDランクやEランクの駆け出しといってもいいようなパーティだらけだった。
数だけは多いがラインハルトは後方にゴブリンが漏れ出したが最後、冒険者達だけではこのモンスターの数は抑えきれないと睨んでいた。
最前線に立ちながらもラインハルトはギリギリ苦虫を噛んだような顔をしていた。
(あの場では言わなかったが事前の情報によるとゴブリンやオークだけではなく、オーガも発見されていたという。そしてその数は少なく見積もって約2万体。いや、3万、4万、それ以上の想定をしなければならない。我が王宮騎士団は総勢で2000名程でその内の800名を連れてきた。残りの1200名で城門や住宅街、王宮の警備を任せてきた。くそ、もう少し連れてくれば良かったか?いや、アグナハルだけは死守しなければならない。後方の冒険者達の力を信じるしかない…か)
* * *
「アニキ、これは名前を挙げるチャンスですぜ」
「ねぇー、湿気で髪の毛が纏まらないから外に出たくなかったんだけどー」
「何言ってんだアリス。お前は元々天然パーマじゃないか。纏まりがないのはいつものことだろう?」
「うーん、これは俺の魅力がゴブリンを魅力してしまったからなのか?俺も罪な男だ…」
「「「それはないだろ」」」
勇者パーティと呼ばれていた4人組がこのゴブリン討滅戦に参加していた。
そのリーダーであるユーグリッド=シャインは背中に大きな剣を抱えていた。ユーグリッドはその名前のせいで幼い頃からユーシャと馬鹿にされて育った。だが、アグナハルの王妃が乗る馬車を襲っていたモンスターを幼い頃のユーグリッドは1人で討伐した、ということになっている。
実際は近くで遊んでいたユーグリッドが落とし穴を作っていてそれにモンスターがたまたまハマっていただけだ。そして馬車が最初にその落とし穴にはまり、モンスターに襲われるピンチを招いたのはいうまでもない。
そして現在のユーグリッドがここに存在する。背中に抱えたその剣を抜いた姿を見たものはいない。噂では抜いた姿を見たものは死んでしまうからだ、とされていたが実際はそんなことはない。抜けないのだ。
「俺にこの聖剣クラウソナスを抜かせるなよ、手加減できそうにないからな」
(あーやべえ、この剣重くて重くてまともに構えることができないんだよなぁ…しかもぶっちゃけこの剣は魔剣喰嘘茄子っていって嘘をついたやつをナスビに変えてしまうという剣なんだ。抜いた瞬間に俺が茄子になってしまうなんて情けないことになってしまう可能性だってあるし)
「アニキにその聖剣を抜かせる相手なんざ魔王しかいやせんぜ。わざわざこんな雑魚に抜く必要なんてありやせん」
「そ、そうか。なら仕方がない、ゴブリンなどこの腐乱鐘樹で充分だからな、聖剣を振るうとせっかく聖剣に溜めた力をまた何ヶ月も貯め直さなければならないしな」
「ねぇ、このヘアスタイル大丈夫?イケてる?」
「ああ、大丈夫だよアリス」
「いや絶対ダメでしょ?ここなんか変に跳ねたりしてるしもーー」
(あー、アリスも髪の毛もそうだし見た目ばっかり気にしてるし面倒なんだよなぁ。装備も可愛くないと嫌っていって殆どパーティに行くようなドレスみたいな格好だし。それに比べてアニキと慕ってくれるゴンスケは本当出来た弟分だ。だが相当な不細工すぎて俺はまともに目を見て話したことがない。不細工っていうより醜いんだ。あぁ、そうそう、この腐乱鐘樹も魔剣の一つなんだ。切った相手を腐らせて、その死体からは樹が生えてくる。そしてその樹に鐘のような実が一瞬にしてなるんだが、それがまた臭いのなんのって)
「ユーグリッド君、私はまた新しい魔法を覚えたよ」
(あぁ、もう説明してるのに空気を読めないな。こいつはロミオ、とにかくイケメンで時折動作に合わせて光り輝くエフェクトが見える。そして魔法創造というユニークスキルを持つ天才だ。いや、馬鹿の天才だ)
「なんだ?また魔法を作ったのか?」
「よく聞いてくれたねユーグリッド君。(いやお前が自分で言ってたよね?)実は特別な風魔法を作ってみたんだよ」
(あー、また始まったよ。今度はなんなんだ?)
「それで一体どんな風魔法なんだ?」
「ふふふ、ちょっと威力が未知数でね、ここで使うには少し勿体無いんだよ。ゴブリンを見つけたら見せてあげるよ、ハッハッハッハッアガッ!!」
グギリっと物凄い音がしたがロミオの顎が外れただけだ。いたって問題ない。いつものことだ。すぐにロミオが纏う光が治してくれる。
(おっと、ゴブリンどもの姿が見えてきた…ってなんだあの数は?!)
前線にいた王宮騎士の兵団は大量のゴブリンともみくちゃになっていて、その隙間からゴブリンやオークが溢れてこちら側に向かってきていた。
「さて、私の魔法の出番だね、下がっていなさい!エアシャイン!」
ロミオが魔法を唱えると自慢の長い銀髪は風に揺れ、そして全身が光り輝いていた。
「おい、ロミオ。その魔法なんなんだ?」
「よく聞いてくれたねユーグリッド君。(なんかさっきも聞いたな)これは風魔法と言ったけれども光魔法との合成魔法なんだよ。柔らかな風が私の髪を揺らし、そして光でそれをさらに演出する…!どうだい。素晴らしいだろう?そしてユーグリッド君、君の存在が空気みたいに、あるのが当たり前だが当たり前すぎて認識できなくなるという隠蔽機能もついているのさ。だからエアシャインというのさ。そしてその隠蔽機能というのはだね、敵にしか反応しないんだ。あぁ、もっと簡単に説明しよう。僕ら味方にとっては何事も起きてはいないが、敵には君の存在が認識することができない。どうだい、この2つの意味をもった素晴らしい魔・・・」
「おい、ゴブリン向かってきてるぞー?」
「なに?!ぶべぇっ?!」
ロミオは空の彼方へ吹き飛んでいってしまった。
「あーあ、言わんこっちゃない。その魔法私にかけてくれればよかったのに」
「アリス。お前はそのー、なんだ。別に柔らかな風がきたからってその天然パーマが矯正されることはないからね?」
「うるさいわね、ファイアボール!」
ユーグリッドに放たれた複数のファイアボールは全てあさっての方向に飛んでいったが偶然にもゴブリンに全てあたっていた。さすがエアシャイン。ユーグリッドの存在を魔法に認識させないとは。
「っあっぶねえな!当たってたらどうすんだよ!」
「なによ!あんたなんかどうでもいいわよ!帰る!」
そしてアリスは泣きながら帰ろうとしていたがそれは逆方向。ロミオと同じくゴブリン達に襲われ空の彼方へと消え去っていった。
「アニキ、あっしと2人だけになってしまいやしたね」
「あ、あぁ。だが逃げるわけには行かない」
そして2人だけになった勇者パーティの前にゴブリンの群勢が押し寄せてくる。
いくらエアシャインで隠蔽されたユーグリッドでも物理的に死ぬ。圧死する。
「「うおおおおおおっ!」」
ユーグリッドとゴンスケが突撃した瞬間に目の前のゴブリン達が炎に焼かれていた。
「な、なにが起こったんだ?!」
「アニキ、いつのまにこんな爆炎魔法を!?」
ゴンスケの目にはユーグリッドが剣を振るった瞬間に爆炎が起きたためにユーグリッドがその炎を起こしたと勘違いをしていたが実際は違っていた。
「あ、アイツらは一体…」
ユーグリッドの目には2人の本物の勇者が物凄い速度で駆けていくのが見えた。




