VS ゴブリンロード
(このダンジョンは推奨レベル10の初心者向けなはずなのにここのゴブリン達はあまりにも強すぎる。一体何が起きているのかしら…)
無事に五階層へと辿り着いた二人であったが、アカネの気配察知に異常なほどの数の魔物が引っかかっていた。その中でも一際大きな気配も感じていた。
「あー、いたいた。見える?あれがゴブリンロードよ」
身長約三メートル。金属製の棘がたくさんついた兜。金色のような金属製の重厚な鎧に深い緑色のマント。
体よりも長い大剣をひっさげたゴブリンロードが洞窟の一番奥のほうに待ち構えていた。
その前には百は有に超える魔物たちがガヤガヤなにか話しているようだった。
ゴブリンやゴブリンメイジ、ゴブリンアーチャーやゴブリンナイトがうじゃうじゃいる。
もう俺たちがここに来ているのはとっくにバレてるはずだ。
「流石に数が多すぎやしないか?こんな数一体どうやって…」
「あら、私が本気になったらゴブリンロード以外なら殲滅できるわよ?ちょっとだけそこで待機してて」
そういうとアカネはゴブリン達の目の前に姿を現した。
「影分身の術!」
複雑な印を結んでいたアカネの影からたくさんの分身が現れてきた。
一人、また一人、とアカネの影はどんどん増えていき十人となった。影はアカネの姿にそれぞれ色づいていった。
そしてそれぞれがまた新たに印を結んでいく。
「「「水遁の術の弐・水牙翔破!」」」
無数の水の弾丸がこれでもかというくらいに飛んでいく。前方にいたゴブリン達がどんどん青い粒子へと変わっていく。
「「「雷遁の術の壱・雷撃衝!」」」
続けざまに放たれた術は水に濡れるだけで始末できなかったゴブリン達を焼いた。
洞窟の地面に充分広がった水を媒介にして紫色の雷はバチバチとゴブリン達を昇華させた。
「「「紅時雨 一の太刀」」」
九人の分身たちが一直線に抜刀してゴブリン達の間を一瞬で駆け抜け往復する。
「「「儚く散りなさい」」」
その言葉に合わせるように千をも超える斬撃がゴブリン達を襲っていく。
「ざっと、こんなもんかしら・・・?」
先程まで百はこえるゴブリンがいたはずだが、もう姿形さえない。影分身達はアカネの影の中へ戻り一人に戻った。そしてすこしフラッとしてその場に座り込む。
一瞬の出来事にゴブリンロードは狼狽するが、残った数少ない部下たちに進め!といわんばかりの大声を張り上げた。
鼓膜が破けそうなほどの怒号に耳を抑えていたアカネにゴブリンリーダー達が襲いかかった。
レイはアカネのもとへ駆け寄ると火球を連続して唱えて牽制した。
「・・・大丈夫ですか、アカネさん!」
「レイくん、ごめんなさいね、無茶しちゃったわ、ありがとう」
アカネは舌を出してテヘっという感じで謝っていたが、俺にとっては全然そんな場合ではなかった。
「ちょっとなんなんですかさっきの魔法に剣撃!めちゃくちゃじゃないですか!そんでもってちょっとピンチになったら無茶しちゃったって幾つ命があっても足りませんよ!」
「まぁまぁそういわないで!レイくんがちゃんと助けに来てくれるってわかってたから、ごめんね」
しょんぼりした顔でアカネは謝る。
「さぁ、今度は俺が相手だ!」
レイはゆっくりと両手を前に掲げ魔法の詠唱を始める。
ユニークスキルの魔法合成をしようとイメージを広げていた。
(…火球と風刃で……よしっ!)
「合体魔法・火炎風刃!」
レイは両手をパンッと合わせてからゴブリンに向かって手を突き出す。
解き放たれた魔法は目の前のゴブリン達を灼熱の風で焼いていった。
「レイ君。その魔法って…?」
「あぁ、さっきスキル取得した"合体魔法"っていうのを試してみたんだよ。ぶっちゃけ出来るかどうかなんてわからなかった」
「ちょ、ちょっとまって。"合体魔法"なんてそんなの存在しないから。ありえないから」
「え?いや、普通に取得できたし、そんなありえないっていうのがありえないでしょう、実際できたんだし」
「そ、それもそうよね、あはは」
アカネもアカネだがレイもレイだ。
「お、おかげでもう残っているのはゴブリンロードだけよ。アイツさえ倒せばクエストクリアなんだから!私もやるわよ!」
ゴブリンロードは魔法に多少怯みながらもその大きな大剣で二人を薙ぎ払った。
二人は武器で防御をとったがその衝撃で壁へと跳ね飛ばされた。
「かぁぁぁ、痛ぁぁぁぁい!!もう怒ったわよ!!」
アカネは腰を落とし低い姿勢になり抜刀した。
「飛燕双斬!!」
刀から放たれる二つの斬撃がゴブリンロードに飛んでいく。が、しかしそれを大剣で防ぐ。
「くそっ、それなら!燈花一閃!」
超高速での抜刀術。ガキンッという音が遅れて耳に入る。
「これも効かないなんて、どうなってるの!?きゃあっ」
大剣を物凄いスピードで振るうゴブリンロードにアカネは驚きを隠せていなかった。
「アカネさん!僕がやります!少し足止めしていてください!」
「ちょっと!あんたの魔力がいくら高いからってこのゴブリンロードの強さは半端じゃないわよ!こんなはずじゃなかったのにってあああああもう!」
刀で受けると衝撃で吹き飛ばされてしまうのでアカネはギリギリのところで攻撃を避け続けていた
レイはイメージを膨らませた。
ゴブリンロードは絶対的に防御が高い。アカネさんのあの技でも全然聞いていなかった。それなら…
レイはゴブリンロードの防御を貫くような最大火力を求めて閃いた。
「合体魔法・|魔法極強化!」
次に唱える魔法が三ランク上がる魔法を合成していた。
(火力を求めるならば火の魔法が一番強い。そしてそれを二重に重ねれば…!)
「アカネさん!引いてください!喰らええええ!合成魔法・煉獄火炎球!」
レイの両手から放たれた青白い炎の球はゴブリンロードよりも大きいものだった。
「いっけえええええええ!」
ゴブリンロードはその大剣で必死に防いでいたが、やがて融解し為す術もなくゴブリンロードを炎で覆い、悲痛な叫び声はその大きな体は四散するまで続いた。
レイはその場に崩れ落ちるように倒れた。アカネはハッとしてレイのもとへ駆け寄る。
「ちょっと!人に無茶しないでとかいっときながら無茶しちゃって、まったく・・・。
「ハハハ、でもやっつけられましたね。これで王都に危険はなくなったのか・・な」
レイは膨大な魔力を消費して気を失った。
アカネはレイに聞こえないくらいの声でありがとう、と呟いた。




