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音楽の可能性

私は高校時代にブラスバンド部でトランペットを吹いていました。


あまり上手くはありませんでしたが、この作品を通してトランペットの魅力、音楽(特にジャズ)の素晴らしさなどをお伝えできればと思っております。


私は日常系作品が好きなので、基本的にほのぼのとした雰囲気で書き進めていきたいと思っています。


小説を書くのには慣れていませんがどうぞよろしくお願いします。



俺の名前は青野耕太。21歳の音大生だ。ジャズ科専攻で将来はジャズトランペッターになるのが夢だ。


アマチュアだが「サイドワインダー」というジャズバンドでトランペットを吹いている。


もっぱらリー・モーガンやクリフォード・ブラウンの吹いた曲を演奏している。


オリジナルの曲もやるが、カバー曲の方が評判が良い。


俺には作曲センスって物が無いのだろうか……。



休日の夜、俺は駅前で音源を流しながら路上でトランペットを吹いていた。


時々立ち止まってくれる人がいるが、おひねりをくれる人は少ない。


今時、1950年代の音楽をやってもなかなか分かってもらえないものだ。



ある日の夜、俺は路上演奏を終え、家に帰る途中だった。


もう日が変わりそうなくらい遅い時間だった。人気もほとんどない。


道を歩いていると、急に地面が光り出した。


「うわ!?」とつい大声を上げてしまった。


地面には魔法陣のような物が描かれている。


(これって魔法陣だよな。なにか魔法でも発動するのか)


などと思っていた瞬間、俺の身体は光に包まれた。



気付いたら俺は見た事もない場所に立っていた。


中世ヨーロッパ風の街中の噴水の前、人々の往来は多い。


信じられない事だが、俺は一瞬にして事態を把握した。


これは異世界転移だ。俺はライトノベルやなろう系小説の愛読者だ。特に異世界ファンタジー物を好んで読んでいる。


俺の頭の中は色んな考えでパンパンだった。言葉は通じるか、スキルやレベルはどうなっているのか、ここはどういう世界なのか、同じ境遇の人はいるか、元の世界にはどうやって戻れるのか、魔王はいるのか、死んだら生き返れるのか。


テンプレとしてはこんな感じだろうか。


まず問題なのは俺の服装だ。黒のシャツとジーパン、この世界ではあからさまに浮いて見える。


すぐに人々が集まってきた。俺の恰好を怪しんでいるようだ。


まずは言葉が通じるか試してみた。行商人風の髭面の男に声をかけてみた。


「すみません、俺は遠い異国から来たものなのですが、ここって何っていう国ですか?」


すると男は「ブレイキー帝国さ、この大陸一の都市を知らないなんて相当ド田舎からやってきたんだな」と言った。


やった。言葉は通じる。次は情報だ。


「俺、音楽家なんですけど、この国って路上で演奏しても問題ないですか?」


「ああ、何の問題もないぜ」男は言った。


これで、路銀を稼ぐことはできそうだ。路銀を稼げなくても、運良く今はおひねりが入った箱を持っている。


紙幣はダメでも、硬貨ならどこかでこの国の硬貨と交換してもらえるかもしれない。


10円玉は青銅、100円玉は白銅、500円玉はニッケル黄銅で出来ている。この国でも多少の価値はあるものだろう。



まずは俺の恰好の珍しさに人が集まってきているので、好機と思い、俺はケースからトランペットを出して吹き始めた。


トランペットはV.Bach 180MLSPB GL、純銀のトランペットだ。遠達性のある豊かな音色を持っている。音がまとまった状態でしっかり遠くまで響いてくれる感じだ。値段はしたが、良い買い物をしたと思っている。


曲は「モーニン」ジャズメッセンジャーズのアルバムのタイトル曲だ。それをソロトランペットアレンジしてある。


俺のトランペットの音に混じって人々のざわめきが聞こえてくる。どうやらこの国にはトランペットはないらしく、その迫力ある音に圧倒されているみたいだ。


演奏が終わると聴衆から歓声が届いた。運良く盛況だったみたいだ。


1曲吹いただけで、おひねり箱に銅貨や銀貨、数は少ないが金貨まで入れてくれる人さえいた。


向こうの世界とは大違いだ。


俺はもう1曲吹いて金を稼いだ。



銅貨は58枚、銀貨が19枚、金貨が3枚。価値は分からないが、日本円に換算すると結構な額だろう。


硬貨の価値を知る為に、露店のおばさんに尋ねてみた。


「すみません。俺、遠い異国からやってきたんですが、この国のお金の価値について教えてくれませんか?」


「このリンゴを買ってくれたら教えてあげるよ。銅貨1枚」


俺は銅貨を支払ってリンゴを買った。


「毎度あり!まずは銅貨だね、銅貨は5枚あればそこそこの宿屋に飯付きで1泊できる。銀貨は銅貨の100倍の価値、金貨は銀貨の100倍の価値、それで十分だろう?」


「ええ、分かりました。ありがとうございます」俺は礼を言ってその場を去った。



銅貨は100円程度の価値、銀貨は1万円程度の価値、金貨は100万円程度の価値がある事が推測できた。


すげー!俺が数分の演奏で300万円稼いだのか!


物珍しいからと言って金貨のような大金を俺に恵んでくれた人が居たなんて!


おそらく大商人か貴族のどちらかだろう。物好きというのが居たものだ。



俺はまず宿屋を探すことにした。道行く老人に尋ねてみた。


「すみません。この辺りに銅貨5枚で朝晩飯付きの宿屋ってないですか?」


老人は俺の姿を見て怪しんだが「そこの宿ならそのくらいの値段で泊まれるじゃろう」と店の看板を指さした。


言葉は通じるものの、あいにく文字は読めない。何と書いてあるかは分からないが、俺はそこの宿屋を訪れることにした。


「すみません。遠い異国からやってきたものなんですけど、部屋は空いてますか?」


店主は「ああ、空いてるよ。銅貨5枚で1泊、朝晩飯付きだがそれで良いかい?」と尋ねた。


「もちろん構いません。料金は前払いですか?」


「そうだね。どこもそういうやり方だろうよ。そうでないと夜逃げする奴がいるんだよ」


「なるほど。じゃあこれでとりあえず20日分」そう言って俺は銀貨を1枚店主に渡した。


「毎度。部屋は2階の1番奥だ。風呂と洗濯は庭の井戸でやってくれ。朝飯は陽が昇ってから2時間以内、晩飯の時間は陽が沈んでから3時間以内だ。後は好きにしてくれ。」と言って鍵を渡した。


こうして俺はどうにか寝床と飯を確保できた。


ベッドとテーブルと椅子しかない6帖の部屋が俺の当分の生活スペースだ。



明日は日本円を換金したり、この国に馴染む服を買ったり、必要とあれば武器も買わなければならないだろう。


情報収集もまだ不十分だ。


目的は明確、日本に帰る事だ。


色々考えたい事はあったが、それ以上に今日は色々とあったので睡魔に負けてベッドで眠ってしまった。

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