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冬の童話祭2018に参加できません。

作者: ワンフラット

 ここはある小説家の作り出した世界の中の物語。その世界の名は『PTA vs 童話の住人』

 その世界の中で、とある人物が悲痛な叫び声を上げている。

 彼の名前はP。髪の毛がボサボサな背の高い青年である。彼はPTAと呼ばれる組織に所属しており、主に子ども達を創作物の過剰表現から守るために活動しているのだが・・・今日はどうやら様子がおかしいようだ。


P「悔しい!とっても悔しいのです」


 Pは地面に四つん這いになり何度も拳を地面に叩きつけている。そんな彼の元に鎧兜をまとった男が近づく。日本一の旗を掲げたその男の名は「桃太郎」。


「どうしましたかPさん?」


P「うおおお!猛烈に悔しいですー」


「悔しいのはわかりましたから、ちゃんと説明してください。今の段階では読者の方はチンプンカンプンですよ」


P「そうだな、その通りだ桃太郎。では説明しよう!」


Pは勢いよく立ち上がり、拳に力を込めた。


P「2017年 08月22日 14時25分 ”PTA vs 童話の住人”という作品が投稿されました。我々PTAと童話の住人はそこで誕生しました。」


「その話は知っています。ワンフラットなる人物が我々に命を与えた・・・実感が全くないので、とても信じられませんが。」


P「そして問題はここからなのだよ桃太郎くん。その数か月後に、冬の童話祭2018という企画が始まることを、我々PTAは知ったのだ。」


「童話祭ですか?偶然ですね。童話の住人である我々も参加したい」


P「・・・残念だが、それは不可能なのだ。」


「なぜですか!なぜ童話の住人が童話祭に参加できないのですか?」


P「童話祭に参加するには、幾つかの条件をクリアしなければならない。①ジャンルが童話であること。②”冬童話2018”という指定キーワードを入れること。③文字数が3000字以上であること」


「おや?”PTA vs 童話の住人”はジャンルがコメディーのようですが・・・」


P「そこは編集で童話に変更できる。元々童話の住人が登場しているのだからジャンルが童話でも問題はない。本当の問題はその後だ。④作品の投稿期間が2017年11月30日(木) 13:00~2018年1月18日(木) 12:59でなければならない」


「・・・え」


P「投稿日時、つまりは我々が誕生した2017年 08月22日 14時25分では、参加できないのだ。」


「そ・・・そんな。我々が早く誕生してしまったがために、童話祭2018に参加できないとは」


P「これは差別だ!生まれた日時によって我々に参加資格がないなど。異議申し立てを行う」


?「まぁ落ち着きなさいP」


P「Tさん」


 突然奥から姿を現したのは、Tと呼ばれる厚化粧の中年女性。彼女もPTAに属するメンバーの一人である。


T「私が調べたところによると、この童話祭というのは今年が初めてではなく、毎年冬に開催されているそうじゃないの。だから投稿期間を指定しないと前年と同じものを出されても困るでしょ?」


P「うっ・・・確かにそうですが、我々は前年の童話祭には出ていませんし。最初はすごい縁だと思ったのですよ。まさか童話がテーマの企画が来るなんて。こりゃ参加したいと思うじゃないですか。なのに・・・なのに」


Pは悔しさからか体の震えが止まらない。そんなPの姿を遠くから眺め、ほくそ笑む謎の影が近づく。


?「おーっほっほっほ。天罰です。天罰が下ったのです。」


P「お、おまえは」


 姿を現したのはリンゴ売りに化けた王妃。白雪姫の世界からわざわざやってきたようだ。


王妃「お久しぶりですわねPTAの皆様。”PTA vs 童話の住人”ではよくもやってくれましたわね。私の計画である、白雪姫殺害を邪魔したあなた方に、天からの罰が下ったのです。」


P「どちらにしろ成功しないじゃないですか。お話の流れを見れば、最後あなたは真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされ続けるんですよ。」


「無礼者だまれ!ここは童話のifストーリーの世界。そんな運命捻じ曲げ、必ずにっくき白雪姫を殺しますわ。」


 王妃は高笑いをしながら、Pに近づく


「だいたい、なにが”子ども達の正しい教育のため”ですか。PTAは物語の根幹を否定し勝手に歪め、お話の面白みを無くしている。確かに残虐な描写は子どもにはショックが大きいかもしれない。だけど一部を歪めることによって、物語全体で矛盾が生じてしまう。王子様のキスで目覚めるなんて、絶対に現実では起こりえない。バカらしいですわ。」


T「子ども達に夢を持たせるのが童話です。夢や希望を持たせることの何が悪いのですか?」


「夢は所詮夢のままで終わる。子どもも成長すればやがて気付く、キスで目覚めるなんて絶対にありえない、あれは現実味のないロマンだけのストーリーであると。そしてさらに気付く、世の中は姑息で悪知恵の働くものが勝利するとね。だって、この世の中は正直者がバカを見る世界。悪事を法律的に証明できなければ罰に裁かれることもない。」


T「悪が勝つですって、そんなことは絶対にさせません。PTAの名にかけて」


「オーッホッホッホ!PTA会長のA氏がいないあなた方など、牙をなくした肉食獣同然。軽くひねりつぶして差し上げますわ」


王妃は両手を大きく広げ、大笑いした。


・・・


P「あのー、少しよろしいですか。さっきから現実味がないとおっしゃっていますが、あなたの部屋にあるしゃべる鏡も十分現実味ないですよね。」


「ええ、その通りです。しゃべる鏡などバカらしい。そんなものは存在しません。」


P「では誰が世界一美しい人間を決めるのですか?」


「もちろん、王妃であるこの私です。そしてもちろん、世界一美しいのは王妃である私。誰もこの運命を変えることはできないのです。」


P「一番美しいのがあなたなら、なんで白雪姫を殺そうとするんですか?」


「・・・え?」


P「いやあの、え?ではなくてですねぇ。そもそも、白雪姫を殺そうとするのって、白雪姫があなたよりも美しいからですよね?でもあなたが世界一美しいのなら、殺す理由がないじゃないですか。」


「・・・・・・ああっ!そうですわね。」


P「・・・」


「オーッホッホッホ!そうですわ。何を勘違いしていたのかしら、世界一美しいのは私。それは揺るぎのない事実。今度、貧乏で哀れな白雪姫をお茶会にでも誘ってあげましょう。オーッホッホッホ!」


王妃は高笑いをしながら、その場を去っていった。


P「なんか勝手に自己解決して出ていきましたね。」


T「いいじゃないの、丸く収まったみたいだし」



・・・・・・



A「待たせたな」


P「Aさん」


 しばらくして現れたのは金髪で無精ひげを生やした男。彼こそがPTA会長であるA氏である。


A「今回はみなに謝らなければならないことがある。投稿期間の決まりにより”PTA vs 童話の住人”が童話祭2018に参加できなくなったこと。つまりは我々PTAが童話祭において、過剰表現の規制に目を光らせることができなくなってしまったこと。非常に残念に思っている。」


P「全くその通りですよAさん。この企画では基本的には全年齢対象の作品しかだせないものの。”R15作品も可”と書いてあるではありませんか。こんなものを見た子供達の未来が心配です」


A「俺も少し、童話祭2018作品を見させてもらった。恨み、妬み、嫉み、さらには過激な残虐性を含む作品が少なからず存在している。これらの作品は断じて容認できるものではない。」


P「ですが、童話祭に参加できない我々PTAは・・・」


A「あぁ、それらの作品の規制に手を出すことはできない。その運命はPTA会長である私をもってしても無理なのだ。」


P「なんと残酷な運命なのでしょうか。おそらく来年の童話祭も投稿期間の縛りにより、我々は参加できないでしょう」


Pは頭を抱え、髪の毛をくしゃくしゃにしながら悶えている。


A「ふっ!過剰表現の規制をしていた我々が、逆に消されるとはな。だが我々は諦めない。いずれチャンスが訪れるはずだ」


PTA「「子供達の未来は私たちが守る!!」」


終わり





 本文の通りですが、去年の八月に投稿した「PTA vs 童話の住人」を投稿したかったのに、できなかった嘆きを書かせていただきました。

 なにせ冬の童話祭の企画を知ったのは今回が初めてだったので、いろいろとミスをしてしまいました。

 次からは気を付けます。

 それではまた。


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