1話
鳥の鳴き声が聞こえてくる気持ちのいい朝だ
ふぁ~と大きな欠伸をかき軽く周囲を確認する
一言「よし、今日もいつも通り異世界だな」
俺には物心ついた時には父親の存在が確認できなかった
家にいるのは母さんと俺だけだ
だからといって寂しいとかそういうわけじゃない
村には結構親しくしている人達もいるからな
元日本人で転生してきた身としてはそれなりに楽しんでいるつもりだ
「おはよ、母さん」
「あら、今日は早いのね?」
「あ~、でもそろそろ準備しないとアイツが来そうだな」
「そんな煙たがらないの!女の子には優しくしなさいよ」
と雑談をしつつ軽い朝食をすまし朝の支度をする
朝の支度といってもいつも使っているダガーとショートソードの確認ぐらいだ
身なりを少し整えて顔を洗う
ちなみに母さんの容姿は金髪の美人で30代には見えない
20代ですと嘘を言ってもいけそうだ
「あんまり優しくするとなぁ・・・ほどほどにしとくよ」
そういってる間にアイツが来たようだ
「おーい!このボクが迎えに来てやったぞ!早く出てこいリュート!」
朝からアイツは元気だなと考えつつ俺は家を出る
「はいはい、今出るとこだったんだよ朝からうるせーぞボクっ子」
「うるさいはないだろ!リュートは朝が弱いんだからボクがいないとダメなんだよ!」
このボクっ子の名前はフェル昔から俺に付きまとっているヤツだ
魔族侵攻時、孤児になってた所をアイラさんが拾って育てたそうだ
アイラさんってのはこの村一番の弓の名手でアイラ叔母さんと呼ぶと鬼の顔になる
結構怖いご近所さん
ま、だからと言っては何だが多少弓が使えるのでいつも狩りでは結構役に立つ
「そーですか、ありがとよっと」
もう・・・いつもリュートはとかブツブツ呟いている
「今日は西の森でブッシュ・ド・ボアを狩るの?」
気を取り直したのかいつものように目標を定める
「いいや、今日はそうだな森ウサギを何匹か狩るかぁ」
今日はダガーの調子を確認したいんだよな
「ウサギ肉が食べたくなった?ボクも今日はウサギ肉の気分なんだ!一緒だね!」
「いや、ダガーの調子が気になって」
と言うと少し不機嫌になりつつフェルが歩き出した
そこは一緒だって言ってくれてもとかまたボヤいている
しばらく歩くと目視できる位置に森ウサギが見えた
弓を引き絞るフェルに俺にやらせろと合図をおくる
狙いを定めてダガーを素早く投げる
俗にいう投擲術だ俺には先生みたいな人が4人いてその内の一人
ザイスさんに教わった技術だ
ダガーはウサギの頭に綺麗に命中し絶命させた
「リュートって結構器用だよね、ボク何かマネできそうにないよ」
「結構難しいんだぞこれ、それにお前には俺にはない馬鹿力があるだろ?」
「馬鹿力じゃないよ!!」
そんな他愛もない雑談を交えつつ今日の獲物をしとめていった
村に帰ると獲物を二人でわけて一旦家に戻る
今日の夜ごはんはウサギ肉のスープね!母さんが張り切っている時に
玄関先の戸がたたかれた
「ここがリーン・シェイダさんのお宅ですかな?」
身なりの良い初老の男が玄関先に立っていた