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異世界冒険譚  作者: 吉橋 喨
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第一話 少年と少女

  少年は、腰の後ろにある剣を引き抜いた。

なぜなら、三体のゴブリンに囲われてしまったのである。


 だが少年はいたって冷静だった。まず正面にいるゴブリンに前傾姿勢で突っ込み、ゴブリンの後ろに回り込んで心臓を一突き。このゴブリンの死体を片方のゴブリンに蹴り飛ばし、少しの間身動きを封じる。

 その間に近づいて来ていたもう片方のゴブリンに回し蹴りをお見舞いする。


 ゴキッ、


 どうやら運よく首の骨が折れたようだ。

 残りの一体は未だに死体の下敷きになっていた、そこで少年は死体ごとそのゴブリンを突き刺した。


「ふぅ~、楽勝だったな」


などと言いながら、少年は五〇㎝程の剣を引き抜き、血を拭った後鞘に戻した。


 その後、少年は、リュクサック型のバッグから懐中時計に似た時計を取り出し、時間を確認した、


(そろそろ戻るか)


そう思い少年は自分が住んでいる集落に帰ろうとしたが、


「おっと、忘れちゃいけないな」


ゴブリンの死体から数歩離れた場所で少年は大切なことを思い出し、バッグから火打石と発火剤を取り出しゴブリンたちの死体に火を付け始めた、


「一度死んだモンスターは、また生き返って来ちまうから後始末はちゃんとしないとな」


一度死に蘇ったモンスターはアンデットになってしまい、とても手に負えない程強くなってしまう。例えそれが最弱モンスターであったとしても。


「よし、ちゃんと燃えたな」


少年はちゃんと燃え尽きたことを確認すると、モンスターを倒した後で手に入るドロップアイテムをしっかり手に取った。


「爪と牙か」


少年は不服そうに呟き、その場を後にした。




 外に出た時には空が薄暗くなっていた。


「げっ、もう日が落ちかけてるじゃん」


 少年は草原にぽっかり空いた穴から出てきた。

先程まで少年は、ダンジョンと呼ばれる迷宮に一人で挑んでいた。

 ダンジョンには、多種多様なモンスターが多く存在しており、モンスターを倒すと戦利品として先ほど少年が手に入れた爪や牙のようなドロップアイテムが手に入る。そしてダンジョンには一度手に入れれば、一緒遊んで暮らせることできる程のレアアイテムが存在するが、レアアイテムの多くはダンジョンの奥深くにあり、その周りには強力なモンスターがいるわけで、そうそう簡単に取れるわけではない


「早く帰らないと、アイツや親父さんに怒られちまうな」


そう言い少年は走り出した。

少し走った所でゴブリンとコボルトに遭遇した。


 基本モンスターはダンジョン以外には存在しないのだが、時々ダンジョンから外に出て来てしまうことがあるらしい。

このモンスターもダンジョンから出てきたのだろう、だが残念なことに、運悪く少年と鉢合わせてしまった。


「じゃあな、今は急いでるんだ」


だが少年は、モンスターの相手をしてやる程暇ではないため無視して走った。




 少年は洞窟の狭い入り口で、月を見ながら寝転がっていた。

どうやら、急いで帰るのを諦めてしまったようだ。

 少年は明日に向けて、今日ダンジョンであったことを思い返したり、明日ダンジョンでどれくらい戦うのかを考えたり、これからダンジョンでどのように戦っていくのかを自問自答しながら、士気を高めていた。


「なにをやっているの?」


だが、その声が一瞬にして少年の士気を下げることになった。


「はぁ~、何しに来たんだよ」


少年は疲れと呆れが混じったような声で返事をした。


「質問してるのはこっちなんですけどー」


そう言いながら少女は少年の隣に足を伸ばして座り、月を見上げた。


「どう見ても休憩中だろ」


反論するかのように少年は少女の方を向かずに言った。


「休憩なんかしてていいのかなぁ~?」


少女は不敵に笑った。

少年は上体を起こした後、胡坐をかき少女の方を見た。


「どうゆう意味だよ」


少年には少女が発した言葉の意味が理解できなかったが、嫌な予感がした。


「お父さんが集落の入り口、君の帰りをずっと待ってるよ」


少女は微笑みながら少年の方に顔を向けた。


「マジ?」


少年は絶望に満ちた顔で少女の方に顔を向けた。


「うん!まじ」


少女の微笑みは、満面の笑みになっていた。

少年は目を閉じ月を見上げ、


「はぁ~」


息を吸い込んだ。

 そこからの少年の行動は早かった。少女から少し離れた場所に移動し自分のほこりを払った後、少女を強制的に立たせ、自分たちが座っていた場所の痕跡を消した。最後に少年は、月明かりに照らされた草原に体を向け、五感を研ぎ澄ませた。辺りに気配が無いのを確認した少年は、息を吐き出した。


「ふぅ~、」

「めんどくさいよね」


終わったことを確認した少女は、後ろから少年に話しかけた。


「けど人がいた痕跡を消さなきゃ、モンスターたちがやって来ちまうからな」


そう言いながら少年は、バッグを手に洞窟の奥へと消えていった。





少女は、少年が少し離れたことを確認した後、少年に聞こえないような声で呟いた。


「そうだね。」


その顔からは表情がなくなっていた。





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