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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第四章 クラン飛躍編

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アレク、悪魔公を再封印する

 崩れ落ちた悪魔公は、顔を上げてこちらを睨む。


『何故、ここまで……?』


 悪魔公の疑問は理解出来る。相手の能力を把握し、その対策が全て準備されているのだ。ボクが逆の立場でも、同じ事を思うだろう。


 だが、答えてやる義理は無い。ボクはマリアさんへと視線を向ける。


「マリアさん、予定通り再封印をお願いします」


「はい、わかりまし……って、あれ?」


 急に慌て出すマリアさん。そして、リュートさんや周りの皆が気まずそうな表情を浮かべる。


「有りません……。封印石が有りません……!」


『くはははっ……。封印石なら、我が既に砕いてやったわ!』


 悪魔公の言葉を肯定する様に、リュートさん達は俯いていた。その様子から、何となく事態は理解した。マリアさんの胸が貫かれたのは、そういう経緯なのだろう。


 顔を青くしたマリアさんは、震える声で問い掛けて来る。


「アレクさん……どうしましょう……?」


「ふむ、仕方がないですね……」


 余り使いたく無かったが、こうなっては仕方が無い。ボクはマジック・バッグから、そのアイテムを取り出した。


「これを使って下さい」


「これは……って、えぇ……!?」


 ボクがマリアに渡したのは、予備の封印石だ。受け取った彼女は、目を白黒していた。


 そして、封印石とボクを交互に見つめる。マリアさんは混乱したまま尋ねて来る。


「えっと……えっ? ど、どうして……?」


 周囲の皆も驚愕の表情を浮かべている。なので、ボクは淡々と答える。


「こういう時の為に準備しておきました」


「「「おおっ……!?」」」


 周囲から感嘆の声が上がる。彼等の顔には、称賛の表情が浮かんでいた。


 ……ただし、リュートさんとポルクだけは違う反応を示している。彼等二人だけは、ボクに呆れた目を向けていた。


「ふーん、予備ねぇ……?」


「それなら、事前に知らせて欲しかったですね……」


 ボクは彼等の声を無視する。そして、彼等もそれ以上は何も言おうとしない。そう、気付かないなら、そのままの方が良いという事もあるのだ。


 元々二個目の封印石は、ボク個人用にこっそり作った物だ。何かの際に使えるだろうと思い、リュートさん達に多めの素材を集めて貰っていたのである。基本的にはイベントアイテムで、市場に出回らないアイテムだからね。


 ……ちなみに、話すと領主に取り上げられると考え、誰にも話してなかったりする。リュートとポルクには、その辺りの魂胆がバレてしまった様だが。


「マリアさん、お願いします」


「はい、お任せ下さい!」


 マリアさんは大きく頷くと、封印の儀式に取り掛かる。儀式はプリーストで無いと出来ないが、それ程難しい内容では無い。後はマリアさんに任せれば大丈夫だろう。


 そして、ボクはふと視線に気が付く。その視線は、悪魔公の物であった。


『貴様は……一体、何者なのだ……?』


「ボク? 只のしがない賢者だけど?」


 ボクの回答に悪魔公は黙り込む。そして、回りからは何故か、否定的な眼差しを向けられる。


 ……何故だ? 味方からのこの仕打ちは想定外である。


『その知識……その戦術……』


 悪魔公は一人で何かを呟いている。その目はジッとボクに向けたままで。


 まあ、ジッと見られて気味は悪いが、暴れないだけマシだろう。というか、再封印を始めてるのに、一向に抵抗する気配が無いな?


『いや、その目、その髪、その魂……。そうか、そういう事か……!』


「ん……?」


 悪魔公は勢い良く身を起こすと、その場にドカッと座り込む。そして、愉快そうに笑いだす。


『く、くははははっ……! あの御方の差し金か……! ならば仕方あるまい!!』


「あの御方……?」


 悪魔公が意味有り気な発言をする。皆の視線が悪魔公に集まるが、彼は気にした様子を見せない。そして、一人だけ満足した様に腕を組んで頷いていた。


『人間共よ! 楽しませて貰った礼に、大人しく封印されてやろう!』


「えっと……。あの御方って誰の事かな……?」


 ボクは悪魔公に問う。しかし、悪魔公は首を振って答えない。


『若き英雄よ! 精一杯、足掻いて見せよ! 貴様の未来には、多くの試練が待っているだろう!』


「え、えぇ……」


 ……何か嫌な宣言をされてしまった。


 といか、悪魔公は何を知っているんだ? ゲーム内には無いイベントなので、ボク個人に関わる何かとは思うんだけど……。


『では、さらばだ! 汝に神の加護があらんことを!』


「神って、どの神様ですかね……?」


 光の神スルランとは思えない。ならば、闇の神スレインだろうか? しかし、そんな話は聞いた事が無い。悪魔だから魔王とか魔神とかだろうか?


 結局、ボクの疑問に悪魔公は答えなかった。悪魔公は抵抗もせず、マリアさんの持つ封印石へと封じされた為である。


 イベントの最後としては呆気ない終わり方だったな。そして、最後に嫌なフラグを立てられた気がするのだが……。


 しかし、イベントは終わった訳では無かった。油断したボクの背後に、ぬっと影が伸びて来る。


「……アレク! やりましたね!」


「え……? ち、ちょっと……!?」


 突然、アンリエッタがボクに飛び掛かって来る。そして、彼女の腕はボクの首に絡み、そのまま抱きしめられてしまう。


 ……美少女に抱き着かれて嬉しいかって? 鎧がゴリゴリ押し付けられて、とても痛いだけです。まあ、ちょっと良い匂いはするんだけどさ。


「ダメ……。離れて……!」


 すかさずアンナが間に入る。そして、アンリエッタとボクを引き剥がそうとする。


 しかし悲しいかな……。聖騎士であるアンリエッタと、魔術師であるアンナでは、筋力に差が有り過ぎた。


 結局、アンリエッタはアンナを巻き込んで、ボクへの抱擁を続けるのであった。

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