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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第四章 クラン飛躍編

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ギリー、帰還する

 アンリエッタ達が帰った後、ボク達は何とも言えない疲労感だけが残った。


 ポルクの目的は、本当に伝言だけらしかった。あの後のドタバタには、完全に傍観者を決め込んだからだ。


 そして、アンリエッタがボクのファンというのも本当の事らしい。セスに渡した懐の色紙に、注意がずっと向いていたからだ。


「えっと、何か疲れたね……」


「そうですね……」


 ボクとハンスさんが顔を見合わせる。お互いに力無く苦笑を浮かべながら。


 そして、さあどうしようかと考えていると、部屋の外から足音が聞こえて来る。まさか帰って来たのかと身構えるが、入室した人物は予想と違っていた。


「……何かあったのか?」


「「ギリー……!?」」


 ボクとハンスさんの声がハモる。そして、ギリーもそれで、ハンスさんに気付いたらしい。


「む……? ハンスさんか……?」


「襲撃の時に、街に出てたんだって」


 ギリーの質問にアンナが答える。その言葉に頷くと、ギリーはフッと笑った。


「何はともあれ、無事で良かった……」


「うん、ありがとう。……それにしても、ギリーも雰囲気が変わったね。ある意味では、アンナちゃんよりも変わった気がする」


「ふむ、そうか……?」


 ハンスさんの言葉は、ギリーの中二病の事では無い。ギリーの中二病は、村の皆が知っていたからね。


 ハンスさんの今の言葉は、一皮剥けたという意味である。そして、その言葉には同意する。今のギリーは、転職に向かう前よりも覇気が満ちていた。


「というか、何故か装備が変わってるんだけど……」


「うむ、道中に色々とあってな……」


 着ているレザーアーマーはいつも通り。だけど、首には見慣れないスカーフが巻かれている。あれは俊敏性を上げるアクセサリだったかな?


 そして、背負っている弓も以前のコンポジット・ボウでは無い。赤い模様の入った、明らかなマジック・アイテムになっている。


 ギリーは弓を壁に立てかけ、背負っていた荷物を床に置く。……というか、置いた荷物の一部がワイバーンの素材だけど何故だ?


「話せば長くなるが、順を追って話すとしよう……」


「うん、お願いするよ」


 ギリーはボクと向かい合う様にソファーに座った。ボクの隣にはアンナが座り、隣のソファーにはハンスさんも座っている。二人も興味津々で耳を傾けている。


「まず、王都に向かうにあたってキャラバンに同乗させて貰った……。このキャラバンには剣豪が用心棒として雇われていた……」


「へえ、剣豪か……」


 剣豪は剣士Lv50で転職可能な上級職だ。自己強化やカウンター等のスキルが豊富で、一対一の戦闘で高い性能を発揮する。


 キャラバンとは商人達が集まって移動する集団の事。お金を出し合って、護衛を雇う事で旅の安全を確保する。仮にも上級職を雇うのだから、それなりにお金を持っているキャラバンだったのだろう。


「そして、道中で野賊に出くわした……。数が三十人程と多かった為、援助を要請された訳だ……」


「ああ、剣豪でその数は厳しいね……」


 剣豪はあくまでも一対一に特化したジョブだ。範囲攻撃等を覚えないので、その数からキャラバンを守るのは難しいだろう。確かに手が足りないので、ギリーの助けが必要な状況と言える。


「王都へ行けなくなると困る為、護衛では無いが加勢する事にした……。まあ、オレがやった事と言えば、全員の足を打ち抜いただけだがな……」


「「「はぁ……!?」」」


 ボクの驚きに、ハンスさんとアンナの驚きも重なる。ギリーは不思議そうに首を傾げているが、その態度が既におかしい。一人で三十人の足を打ち抜く狩人って、どれだけ高スペックなんだよ……。


「何を驚く事がある……? 魔物と違って、真っ直ぐ突っ込むだけの人間だぞ……? 距離さえあれば、十分に対処可能だろう……?」


「……うん、言われてみればそうか」


「いやいやいやっ……!?」


 ボクが納得しかけた所でハンスさんのツッコミが入る。ハンスさんは慌てた様子で手をバタバタさせている。


「おかしいよね……!? 何で当然の様に納得してるの……!?」


 慌てるハンスさんに弁護しようとする。しかし、その前にアンナがハンスさんの袖を引いた。そして、サムズアップして答えた。


「お兄ちゃんなら当然。ギリーはお兄ちゃんが育てた」


「え、えぇ……?」


 ハンスさんは納得しきれない様子だったが、アンナの良い笑顔で沈黙する。話が進まないので、ハンスさんの事は置いておこう。


「それで、その後はどうなったの?」


「ああ、剣豪が全ての盗賊の首を狩って行った……。そして、この疾風のスカーフを謝礼としてオレにくれたのだ……」


「ああ、それは居たたまれない感じだね……」


 護衛である剣豪さんは後処理だけの簡単なお仕事か。確かにお礼の品でも渡さないと、護衛料貰ってるのに、何してるの?って空気になっちゃうね……。


 ボク達三人が微妙な表情を作っていると、ギリーは気にせず話を続けた。


「その後は大きな問題も無く王都に到着した……。そして、狩人ギルドでの転職試験も、問題無く完了した……」


「そっか、心配はしてなかったけど、無事に転職出来たんだね。転職おめでとう!」


「「おめでとう……!」」


 三人に祝われ、ギリーは嬉しそうに微笑む。こういう素の表情は珍しいな。いつもはフッと鼻で笑う感じが多いのだが。


「そして、帰りも同じキャラバンに同乗をお願いした……。想定以上に喜んで貰え、帰りの費用は無料にして貰えたな……」


「まあ、そうだろうね……」


 剣豪さんより役立つ護衛だからね。帰りは上級職のスナイパーになってるし、むしろ護衛料が必要なレベルだと思う。


「そして、帰りも無事とはいかなかった……。二匹のワイバーンが襲って来た……。恐らくは、新しい住処を探す番いだったんだろうな……」


「王都帰りにワイバーンが……?」


 あの辺りにワイバーンがポップする場所は無いはずだ。とはいえ、ゲームの世界とは違うので、何らかの理由で移動する魔物がいてもおかしくは無いか……。


「ああ、そして折角なのでリベンジマッチを行わせて貰った……。あの時のオレとは違い、今回は一方的に狩らせて貰った……」


「リベンジマッチね……」


 ギリーの言葉に苦笑する。ギリーの自信が漲る理由はこれだ。過去の雪辱を果たしたからだ。それによって、大きな自信を得たのだろう。


 ギリーは誇らしげな顔で頷く。そして、フッと笑いながら床の素材に目を向ける。


「狩った後の素材として、皮と羽だけを貰っておいた……。あれらは修理用の素材としても使えるのだろう……?」


「うん、手元が尽きかけてたから助かるよ」


 ギリーだけでなく、ロレーヌにもワイバーン製のジャケットを渡している。もうしばらくはお世話になるだろうし、手元のストックが増えるのは嬉しいね。


 ギリーはボクの回答に満足げに頷く。そして、懐から拳大の魔石も取り出した。


「風の魔石も手に入れておいた……。後は荷物になるので商人に任せた……。そうしたら、あの烈火の弓を謝礼にとくれた……」


 壁に立てかけられた弓に目を向ける。ギリーの身長程の長さを持つロングボウである。追加効果として、矢に火属性を与える事も出来る。オン・オフが出来るので今のギリーには非常に便利と言える。


 それに、このサイズの風の魔石は貴重品だ。必ず手に入る訳では無いレアドロップである。売っても良いし、装備品の素材にしても良い。


「まあ、大きな話としてそんな所だ……」


「そっか、でもあの弓は丁度良かったよ」


「烈火の弓か……?」


 ギリーは不思議そうにボクを見つめる。それに対してボクは、不敵な笑みを浮かべた。


「うん、欲しい装備品があってね。それを取りに行くのに都合が良いんだよ」


「ほう、次の狩場が決まっているのか……?」


 ギリーの目が真剣な物となる。視線の端からアンナの緊張も伝わって来た。


 ボクは大きく頷く。そして、二人に視線を這わせて伝える。


「次の狩場は地下墳墓だ。髑髏の杖を取りに行くよ……」


 烈火の弓により、ゴースト系の対処が可能になった。それによって、アンデッド系のダンジョンへ挑める挑戦権が手に入った事になる。今なら低級の不死系ボスも対処可能なはずだ。


 ……つまり、ネクロマンサー転職への準備が始められるという事である。


 ボクはワクワクする気持ちを押さえながら、装備品を集める順番を一人で考え始めた。

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