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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ロレーヌ、海底洞窟(1F)へ潜る

クラン加入メンバー視点。

暫くの間、更新が月、水、土の週三日を予定。

 今日はこのクランで、初めての狩りの日である。目的は依頼や素材集めでは無く、メンバーのレベル上げらしい。


 収入を気にしないとか、お金持ちなボスならではだね。


 ちなみに、場所は海底洞窟の有る孤島である。先輩盗賊が依頼で行った事があり、聞いた事がある場所だ。


 一階は弱めの魔物が多いけど、地下は魔物が強くベテランでないと厳しいらしい。あたし達には当分、縁の無い場所だね。


「さて、中に入る前に作戦を説明しますね」


 海底洞窟の入り口で、ボスがメンバーを召集を掛けた。


 ルージュとハスティールは緊張した表情で集まる。あたしも同じだから、気持ちは良くわかるよ。


 ……けど何故か、アンナちゃんはリラックスしていた。


 街の中では不安げな様子だったのに、どうして外の方が自然体なのかな?


 あたしは凄く気になったけど、ルージュとハスティールは気付いて無い。ボスも気にせず話を続けた。


「まずロレーヌさんは索敵をお願いします。獲物を見つけたら、一撃だけ入れて下さい。その後、魔物は全てルージュさんに押し付けて下さい」


「うん、わかった」


 逃げて良いなら何とかなるかな? 反撃は怖いけど、ここまで来た以上は頑張らないとね……。


 あたしは腰に差したダガーを引き抜く。炎の魔石が付いた方だ。折角だし使ってみたいけど良いよね?


 ……チラチラとボスを見たけど、何も言われないから大丈夫そうだ。


「……って、ちょっと待って下さい! 最後ってどういう事ですか? オレは何をすれば良いんですか?」


 急にハスティールが叫び出した。ボスの指示が無かったらしい。


 ……話を聞いて無かったから、ちょっとビックリしたよ。


 ハスティールはボスに説明を聞いて、何故かショックを受けた様子だった。


 けど、ボスはまったく気にしていない。そのまま海底洞窟に向けて歩き出した。


 ……何というか、ボスって所々で図太いよね。普段は凄く気遣いをしてるのにさ。




「後は宜しく!」


 引き付けたヒトデ型の魔物をルージュに引き渡す。ルージュは大きく頷くと、雄叫びを上げて魔物に向かって行った。


 不思議な事にルージュが叫ぶと、魔物が攻撃対象をルージュに変えるのだ。


 きっと、魔物も大声に驚いて、あたしへの怒りも忘れちゃうんだろうね。


「プロテクト……バリア……」


 背後からボスの支援魔法が掛かる。


 先程からこれのお陰で、魔物からのダメージがまったく無い。魔物が攻撃して来ても、透明な壁が防いでくれるのだ。


 それに、魔石付きダガーも切れ味抜群だ。


 魔物にサクッと切り傷を付けて、ついでに火傷までさせてしまう。力の弱いあたしでも、簡単にダメージを与える事が出来てしまうのだ。


 まさに致れり尽くせり。狩りが超楽チンなんだよね。今まで怖がって、狩りに出なかったのが馬鹿みたいだよ……。


「うんうん、順調みたいだね。もう少し奥に向かっても大丈夫そうだ」


 ボスはご機嫌みたい。ニコニコと笑いながら、メンバーへの支援魔法を掛け直している。


 アンナちゃんも相変わらずリラックスした様子である。しかも、可愛い見た目に反して、サクサクと魔物を倒してくれる。


 ルージュは戦いに慣れて無いのか、さっきから魔物相手に苦労してた。まあ、実戦は初めてって言ってたし、ゆっくり慣れると良いと思うよ。


 ……けど、ハスティールは何をしてるんだろう?


 さっきから遊んでるみたいなんだけど。でも、楽しそうに見えないし……遊んでる訳では無いのかな?


「さて、進みますよ?」


 あたしが戸惑っていると、ボスか声を掛けて来た。あたしは頷くと、ボスの指示に従って進み出した。




 あたしは何故か、ティータイムを楽しんでいた。魔物がウロウロする、海底洞窟の中なのに。


 ボスがテーブルやティーセットを取り出し、今は皆にお菓子まで配っている。


 まあ、ルージュは疲労困憊って感じたし、あたしもかなり疲れてるから助かって良いんだけど。


 出されたお茶もお菓子も美味しいし、あたしに異論はまったく無い。


 ただ、時々やって来る魔物を、ボスが片手間で倒してるんだよね。あたし達の苦労が馬鹿らしい位にアッサリとさ。


 ……うん、何となく理解した。


 ボスがレベル上げを優先したのは、今のあたし達では、ボスの足手まといにしかならないからだ。


 今のあたし達は、ボスにとって保護対象でしか無い。本当の意味で、ボスの仲間と認められるには、まだまだ先が長そうである。


「ねえ、アンナちゃん。どうしてそんなに強いの?」


「…………?」


 あたしの質問に、アンナちゃんのお茶を飲む手が止まる。


 質問が理解出来ないみたいで、キョトンとしていた。


「私は強くない……。少なくとも、お兄ちゃんの足元にも及んで無いから……」


「いやまあ、ボスと比べたらね……」


 比較対象が間違っている。


 ボスより強い冒険者なんて、ヴォルクスでは一握りしかいないはず。それと7歳の女の子を比べる人はまずいない。


「そうじゃなくて、魔物が怖く無いの? 凄く簡単に倒してるけどさ」


「怖く無い訳じゃない……」


 アンナちゃんはポツリと呟く。その目をボスに向けた状態で。


「けど、私には力が無い事の方が怖い……。お兄ちゃんが危ない時に、助けられない方が怖い……。だから、私は強くなる為に、魔物を沢山倒さないといけない……」


「そっか。やっぱり、アンナちゃんは強いね」


 アンナちゃんの気持ちはわかる。あたしも院長先生に対して、同じ気持ちを持ったからだ。


 でもそれで、恐怖を乗り越えられるかは別だ。


 あたしは未だに魔物が怖い。失敗して死ぬのが怖い。ボスの魔法が無ければ、今頃は逃げ出していたと思う。


 本当は、あたしも院長先生の為に、強くなりたいんだけどね……。


 あたしが俯いていると、アンナちゃんが身動ぎする気配を感じた。


 あたしが顔を上げると、アンナちゃんの顔が不快気に歪んでいた。


「……ロレーヌは、お兄ちゃんを信じて無いの?」


「へ……?」


 ボスを信じて無い? ボスの何を信じて無いって言うんだろう?


 あたしが首を傾げると、アンナちゃんはわかって貰えずムッとした。


「この場所はお兄ちゃんが選んだんだよ……? それに、その装備はお兄ちゃんが用意した物だよね……。それで、この狩りではお兄ちゃんが守ってくれてる……。怖がる理由が無いでしょ……?」


「そ、そうかな……?」


 ボスが守ってくれるから大丈夫って事だよね? ボスを信じてるなら、不安を感じる必要も無いと。


 ……いやいや、流石にそこまで信じられないよ。


 あたしはボスと出会って三日しか経って無い。まだボスの事をそこまで知ってる訳じゃないしね?


「お兄ちゃんを信じれば良いんだよ。そうすれば、怖い事は無くなる。そして、あたし達は強くなれる」


 兄への全面的な信頼である。そして、アンナちゃんはカップに口を付ける。


 話しは終わったとばかりに、あたしから視線を逸らした。


「ボスを信じるか……」


 多分、それがアンナちゃんの強さなのだろう。


 疑う事無くボスの指示に従う。それが出来るから、彼女は迷い無く突き進めるのだ。


 今のあたしには無理な事だ……。


 ただ、もう少し長くボスと付き合えば、それが出来るのかな? そうすれば、あたしもアンナちゃんみたいに強くなれるのかな?


 あたしは期待と不安が混ざる中、ゆっくりと紅茶を飲み干した。




 そして、帰りの船の中で、あたしはギルドカードを確かめた。


 更新されたカードには、『盗賊Lv16』と表示されていた。


「ええっ! レベルが二つも上がってるよ!? あたしは何のスキルを覚えたんだろう……?」


「恐らくは『急所攻撃』ですね。終盤は手応えを感じなかったですか?」


 ボスの言葉に、先程の狩りを思い返す。そして、ふと思い当たる事があった。


「あ、もしかして……!」


 何となくだけど、魔物の柔らかい場所がわかる様になったのだ。


 それで、そこを狙うとサクッと刃が通る。あれが魔物の急所だったのか……。


 あたしの反応に、ボスは満足気に頷いた。


「元々、ロレーヌさんにはスキルを覚えて貰うつもりでした。ただ、気付くとロレーヌさんは、自分で急所を狙い始めたんですよね。やはり、ロレーヌさんには、そちらの才能がありそうですね……」


「えへへ、そうかな……?」


 ボスに誉められたみたいだ。あたしは嬉しくなって照れてしまう。


 ……ただ、そちらの才能って何かな?


 ボスの目がキラッと輝いたのも気になる所だ。


「ああ、それと、これを見て下さい」


「へ……?」


 ボスはマジックバッグから、沢山のアイテムを取り出した。半分近くは小さな魔石で、残りは魔物の体から取れる素材である。


 魔物を倒した後に、ボスが何かしてたのを思い出す。あれは魔物から収集品の回収をしていたのか。


 レベル上げが目的って言ってたのに、意外とお金の面もしっかりしてるね。


「明日からロレーヌさんに、素材の剥ぎ取りを教えます。しっかり覚えて下さいね」


「え、あたしがやるの……!?」


 確かに通常のパーティーでは、盗賊や狩人がやる仕事だ。手先が器用な職の方が、良質な素材を剥ぎ取れるからである。


 ただ、あたしはこれまでに経験が無い。魔物狩りを避けて来たからだ。上手くやれる自信が無いのだけど……。


 しかし、ボスはニコニコと微笑んでいた。そして、それを確定事項として話を進める。


「本当はギリーの方が教えるのも上手いんですがね。まあ、私でも標準レベルの剥ぎ取りは教えられるので安心して下さい」


「……えっと、覚えないとダメかな?」


 正直、やりたくは無い。魔物の死体に触るのがちょっとね。


 それに、剥ぎ取りをすると、刃が血と油でベトベトになるし……。


 しかし、ボスは笑みを深めて説明を始めた。


「ロレーヌさんが、魔物の不意打ちに対処してくれるなら良いですよ。私が剥ぎ取りをしてると、その間の警戒が出来ません。ロレーヌさんが、仲間の安全を保証してくれるって事で良いんですよね?」


「いえ、あたしが素材の回収をやります!」


 淡々と説明するボスは、ヒンヤリとした圧力を掛けて来る。顔は笑顔なのが余計に怖い。


 あたしには、ボスの指示に逆らう事なんて出来なかった……。


 ボスは満足気に頷く。そして、数枚の紙を渡して来る。


「海底洞窟一階の魔物と、その回収出来る素材をまとめてあります。今日中に目を通しておいて下さい」


「え、今日中に……!?」


 あたしは既にヘトヘトなんだけど……!?


 しかし、そこに慈悲は無い。ボスは笑みを浮かべたまま、当然の様に頷いた。


「暗記までは要求しません。ただし、明日から一度は私が教えますが、二度目からは自分でやって貰います。忘れない様に、復習は大切だと思いませんか?」


「そ、そんな……」


 つまり、一度教えたら、それで覚えろって事だよね?


 ……それで、覚えられないなら、帰ってから勉強しろと。


 ……鬼だ! ここに鬼がいるよ!


「孤児院の皆と院長先生の為にも、頑張って下さいね?」


「イ、イエス、ボス……」


 ボスはニコリとほほ笑む。


 あたしは恐怖に震えながら、ただガクガクと頷くしか出来なかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ強さにも色々あるけどね。ジョブが決められててそれ以外は使えない場合は大まかにチームの役割としての強さと単体での強さに分かれるよね。
2022/05/14 15:37 退会済み
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