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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第三章 クラン結成編

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ルージュ、海底洞窟(1F)へ潜る

お盆期間(11日~15日)は毎日更新します!

楽しんで貰えれば幸いです♪

 今日は海底洞窟へやって来た。船に乗ったのは初めてだったが、こんなに気持ち悪い物とは知らなかった。


 今はアレク殿のヒールで状態が改善したが、明日以降を考えると憂鬱である……。


 なお、今は洞窟内に入った所だ。アレク殿の指示により役割が決められる。


 そして、私はただ盾で身を守るだけで良いとの事だ。当面は受け流しのスキルレベルを上げるのがノルマらしい。


「さあ、ガンガン行きましょう!」


 アレク殿が号令を掛け、ロレーヌ殿が先頭を進む。私は少し離れてロレーヌ殿の後を追う。


 洞窟の手前には、大きなヒトデやイソギンチャクが現れる。いずれも適正レベルなので、盾で防ぐのも苦労が無い。


 むしろ、アンナ殿の処理速度が速すぎて、盾で受けるのも一度か二度で終わってしまう……。


「うんうん、順調みたいだね。もう少し奥に進んでも大丈夫そうだ」


 アレク殿の言う通り、狩りは順調である。正直、後衛とパーティーを組むと、ここまで戦闘が楽になると知らなかった。


 まだ一時間も経っていないのに、十匹程の魔物を倒している。パーティーとは言え、これは異常なペースだ。


 もし私が一人なら、一日に五匹程度しか狩る事が出来ないだろう。


 それというのも、少数での狩りでは慎重に移動する必要がある為だ。複数の魔物に囲まれると、それは命の危機に直結する。


 それを避ける為にも、斥候をこなせる盗賊は重宝される。実際、これまでのロレーヌ殿の働きは見事な物であった。


 ……それにしても、先程からハスティール殿は何をしているのだろうか?


 時折石を投げるかと思えば、ひたすら力を溜める為のスキルを使っている。


 アレク殿の指示らしいが、あれではアレク殿の役に立っているとは思えない。ハスティール殿の表情から、その事を苦に感じている事はわかる。


 しかし、それをどうにも出来ず、見ている方が辛く感じる程だ……。


 よし、今晩にでも少し慰めておくとしよう。酒を酌み交わして語り合えば、彼の辛い気持ちも多少は和らぐ事だろう。


 アレク殿への接し方を見ていても、ハスティール殿は我々の同志となり得る人材と思われる。きっと我々は仲良くやって行けるはずだ。


 私が意気揚々と今夜の事を考えていると、どうやら今までと異なるエリアに入ったらしい。出現する魔物の質が、これまでと異なっている。


「ああ、ルージュさん。このエリアからは、確実に盾で防御を行って下さい。盾以外でダメージを受けると、かなり痛い思いをしますよ?」


「アレク殿、それは一体……?」


 アレク殿の忠告に慌てて振り返る。


 しかし、タイミングが悪かったらしい。振り返った先に見えたのは、アレク殿のアッと言う表情。


 ……そして、脇腹に突き刺さる強烈な痛みだ。


「ぐあっ……! 何だ……!?」


 急いで痛みの元を見る。すると、脇腹の鎧が覆っていない箇所に、毒々しい色の触手が突き刺さっていた。


 私は手にした剣で、その触手を切り裂く。


「ルージュさん、構えて下さい!」


「くっ……。何という失態……!」


 続けて襲い来る触手を盾で防ぐ。先端が鋭く尖っているが、威力はそこまで高く無い。盾で防げば問題無いレベルの攻撃である。


 しかし、先程の触手が刺さった箇所が、猛烈な熱と痛みを伴っている。私は歯を食いしばって必死に耐える。


 そして、程なくしてアンナ殿の魔法により、身を隠していた魔物が倒される。


「キュア・ポイズン」


 私が痛みに耐えて膝を着いていると、アレク殿が治癒魔法を掛けてくれた。


 どうやら、先程の攻撃には毒が含まれていたらしい……。


「ヒール」


 更に傷口も塞いでくれる。多少の出血はあったが、この程度なら問題無く狩りが続けられる。


 身体を動かして具合を確かめるが、痛みが残っているという事も無い。


「助かりました。流石はアレク殿の治癒魔法ですね」


 私が笑顔で謝礼を述べると、アレク殿は首を振る。そして、気不味そうな表情で、逆にこちらへと謝って来る。


「いえ……すみませんでした。私が言い忘れていたのが悪いのです。ここの一部の魔物は、身を隠すスキルを使って来ます。ロレーヌさんの索敵能力を持ってしても、一部の魔物はすり抜けて来る事があるんですよ……」


「何と……!? そういう事でしたか……!」


 突然に横から攻撃された為、完全に油断をしていた。確かにその情報を知っていれば、私も油断せずに攻撃を防げていたかもしれない。


 ……とはいえ、通常の探索で完璧な情報等は望め無い。アレク殿が謝る事では無いだろう。


「いえ、油断していた私が悪いのです。次からは私自身も周囲への警戒を怠らない様に致します」


「……すみません。それと、以降は宜しくお願いします」


 主人にこの様な表情をさせる等、私もまだまだ未熟という事だ。


 きっと、メアリー殿に知られれば、あの恐ろしい笑顔で責められる事だろう。


 どうも昨晩の一件から、私のヒエラルキーはかなり下へと位置付けられてしまったのだから……。




 その後も、洞窟内の狩りは続いた。青色のトカゲや、やたら刺々しい魚等が水面から襲い掛かって来る。


 しかし、その全てを何とか盾で受け止める。内心では冷や冷やした場面も多かったが、アレク殿に対する大きな失態は見せずにすんだだろう。


 ……それにしても、この盾を頂いていて本当に良かった。


 手に伝わる衝撃から、鎧で受ければ相当なダメージとなる事が予想出来る。鉄の盾では、今頃は使い物にならなくなっていただろう。


「おや? アンナのレベルが上がったね?」


 アレク殿の発言により、皆の視線がアンナ殿へ集まる。


 時間としてはそれ程長くは無いが、相当数の魔物を狩り続けている。そろそろ、誰かのレベルが上がっても不思議では無い頃合いであった。


「アンナ殿、おめでとう!」


 私が真っ先に祝福の言葉を送る。冒険者でパーティーを組んだ際は、こうする習わしと聞いている。


 そして、私に続いてハスティール殿も祝福の言葉を送り、ロレーヌ殿も探索から戻ってお祝いに加わる。


 アンナ殿は照れた様子で、アレク殿の陰へと隠れてしまった。アレク殿はそんなアンナ殿を温かく見守っていた。


 アレク殿は本当に、アンナ殿の事を大切にしているのが伝わって来る。


「この調子でガンガン行きましょう!」


 アレク殿の言葉に、一同は大きく頷く。これ程に順調な狩りなのだ。きっと、他のメンバーも同じ様に、レベルが上がる可能性がある。


 そう思うと、我々は更に一層の気合を入れて、狩りを続ける事が出来た。




 ……しかし、私の考えは甘かった。


 その後の狩りでは、これまでの倍のペースで魔物を狩り続けた。序盤は基本が一対一で、稀に二体の魔物を相手取るスタイルだったのだ。


 所が、アンナ殿のレベルが上がってからは、基本が一対二で、稀に三体の魔物を相手取るスタイルに変わる。


 当然の事ながら、全ての攻撃を防ぎ切れるはずも無い。自然と身体に被弾する回数も増えて行く。一戦毎の戦闘時間も倍以上に伸びる。


 私の疲労は恐ろしい速度で溜まって行く……。


 しかし、アレク殿はヒールを使って強行軍を続ける。ヒールでは体力は回復するが、疲労感までは回復しない。


 それをわかっているらしく、集中力の途切れそうなギリギリで休憩が入る。洞窟内だというのに、紅茶や砂糖を使った菓子まで提供される。


 それらによって疲労感が抜けると、再び強行軍が再開される……。


 完璧なまでに計算され尽くした狩りであった。恐らくはこのメンバーで、これ以上の効率良い狩りは行えないだろう。


 一日に何十体の魔物を討伐したのかわからない。余りにも数が多くて、途中から数えるのも馬鹿らしくなったのだ。


 結果として、一日で全員のレベルが上がっていた。アンナ殿に至っては、一日で二レベルも上がっていた。


 Lv10を超えると、普通は上りが遅くなるものだ。この速度の成長は異常としか思えない……。


 そして、帰りの船でアレク殿に聞いたが、収集した素材は販売すれば三万Gになりそうらしい。


 しかも、ある程度はアレク殿で加工が可能な為、実際の収入は四万G近くになるとの事である。


 中級冒険者が、一月で稼ぐ金額に相当する。それが5人パーティーとはいえ、たったの一日である……。


 ……私は賢者様の一族には、特別な秘密があると考えていた。


 アレク殿、ギリー殿、アンナ殿と、その全てが年齢に対して、圧倒的に高レベルだったからだ。


 そして、本日の狩りでその秘密が理解出来た。


 その秘密は特別という程の事では無い。膨大な情報から組み立てられる計画。人の感情を排して、機械的に魔物を狩り続けるスタイル。


 そして、それらによって齎される、圧倒的なまでの時間効率である……。


 この狩りは、情報さえあれば誰にでも可能である。


 しかし、一般的な人間には、到底受け入れられないスタイルでもある。


 この狩り方を知れば、多くの人間は感情から拒否感を覚えてしまうであろう。


 見る者によっては、人を人とも思わない、非道な行いと非難するかもしれない。


 ……しかし、ここには一般人など存在しない。


 アレク殿の言葉を受け入れられる人間だけが集まっている。アンナ殿もそうだし、ハスティール殿もそうだ。


 ロレーヌ殿はわかり辛いが、少なくともアレク殿への拒否感は感じない。


 きっとこのパーティーは強くなる。その思いのお陰で、船の中では会話が盛り上がった。


 ハスティール殿だけは、疲れていたのか大人しかったが……。




 ……その日はぐっすりと眠った。余りの疲れに、風呂を出たら眠気に勝てなかったのだ。


 そして、翌朝に目を覚まし、ハスティール殿を慰め忘れていた事を思い出す。


 きっと、この先も狩りの日は同じ状況が続くだろう。


 なので、酒を飲み交わす事は諦め、狩りの中で気遣っていこうと心に誓った。

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