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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第十五章 和平交渉編

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アレク、伝言を受け取る

 ボクとアンリエッタの結婚式から五日が過ぎた。結婚式の様子は、今のヴォルクスで最もホットな話題となっている。


 そして、今日のボクは、アンリエッタと家の見学を行っている。それも、『白の叡智』の仲間全員から嘆願されてだ。


 何故こうなったかは、まったくもって不明。ただ、恐らくは皆からの気遣いなのだろう。


 新婚であるボク達に、もっと夫婦らしい時間を、と……。


 なので、ボクはその好意に甘える事にした。新しい家が決まるまで、クラン活動は休暇扱いとなった。


「先ほどの屋敷は良かったですわね? 次の屋敷も楽しみですわ!」


「いや、あれは広すぎじゃない? ボクとしては、もう少し狭くても……」


 クランハウスのリビング。そのソファーに並んで座るボク達。今は午前中に回った物件について、意見交換をしている所である。


 クラン事務局から紹介された不動産屋は、誠実そうな中年男性だった。実に丁寧に物件の説明を行ってくれる。


 ただ何故か、紹介物件が全て屋敷なのが謎である。夫婦二人が住むにしては、明らかに広すぎるのだ。


 夜に帰って寝るだけなのに、二十部屋もある屋敷なんて必要無いのにね?


「何を言っているのです! 今後の事を考えれば……って、アンナちゃん?」


 アンリエッタは話の途中で、急に扉の方を向いた。ボクもそちらに顔を向ける。


 すると、そこには微妙な表情のアンナが立っていた。半分背中を向けている事から、引き返そうとして見つかったっぽいな。


 アンナは諦めた表情で、ボク達の方へと向き直る。そんな彼女に、アンリエッタが手招きをする。


「ふふふ、どうしたのです? こちらで一緒に、お茶でも飲みませんか?」


 その誘いに、困った表情を浮かべるアンナ。やはり、未だに気持ちの整理が着いていないのだろう。


 しかし、チラリとボクに視線を送る。そして、小さく息を吐き、ボク達の向かいに腰を下ろした。


「お兄ちゃん達は、午後も部屋を探すの……?」


「うん、早く部屋を決めてしまいたいしね……」


「ふふふ、アンナちゃんも一緒に回りますか?」


 アンナの問いに答えるボク。そこへ、更に誘いを掛けるアンリエッタ。


 アンリエッタはアンナを気に入っているみたいで、普段からこの位はグイグイ攻めている。


 そんなアンリエッタに、アンナは笑みを浮かべる。向けられる行為に、アンナも悪い気はしていないのだろう。


「ううん、今日は止めとく……。あ、それと、お兄ちゃんに師匠から伝言……」


「師匠って……ワトソンさんから?」


 アンナの師匠と言えば、ボクを除けばワトソンだけだ。彼は魔導士ウィザードの師匠として、今でもアンナの指導を行ってくれている。


 しかし、伝言とは何なのだろうか……? わざわざ、アンナに頼むなんて……。


「フェリシアの事で話がしたいって……。師匠の過去に関係するみたい……」


「「えっ……!?」」


 フェリシアと言えば、カーズ帝国の大将。エクストラスキル『魔王召喚サモン・サタン』の使い手である。


 敵国の中でも圧倒的な脅威度を誇る存在。そんなフェリシアとワトソンさんに、どんな関係が有ると言うのだろうか……?


「――アレク。午後の予定はキャンセルですわ」


「アンリエッタ……?」


 静かな落ち着いた口調。見ればアンリエッタの表情は、キリリと引き締まっていた。


 普段の天然モードでは無い。重要な場面でのみ顔を出す、アンリエッタの本気モードがそこにあった。


「私もワトソンさんに伺いたい事があります。ご一緒させて頂きますね?」


「あ、はい……」


 質問形式の様で、実は質問では無い。アンリエッタの中で、同行は既に決定事項なのだ。


 こういう時のアンリエッタには、逆らうだけ無駄である。素直に応じておくのが得策だろう。


 ……何というか、時々妙に男らしいんだよな。


「それでは、出かける準備を致しましょう。ギルにも伝えねばなりませんね……」


 アンリエッタはテキパキと行動に移る。そんな彼女の様子に、ボクは苦笑を浮かべた。


 そして、二人揃ってソファーから立つ。すると、アンナが小さく手を上げた。


「あ、そういう事なら一緒に行きたい……。駄目かな……?」


 ボクとアンリエッタは、共に顔を合わせる。アンナの反応が意外だった為だ。


 伝言を預かった以上、久々に顔を合わせたい等の理由ではないだろう。それ以前に、アンナの表情は神妙で、強い意志を瞳に宿していた。


「アレク……。どうしますか……?」


「うん。それじゃあ、一緒に行こう」


 ボクの返事に、アンナがパッと笑顔を浮かべた。その変化に、アンリエッタも微笑みを浮かべる。


 アンナの考えはわからないが、彼女なりに考えがあっての事だろう。ならば、ボクはその意思を尊重するだけだ。


 エクストラスキルこそ未収得だが、自分の将来を考えろと伝えたばかり。なのに、アンナの意思を蔑ろにしては、彼女の今後に悪影響を与えかねないからね。


「とはいえ、急に押しかけて大丈夫かな? 一応、ワトソンさんも忙しい立場だからね……」


「大丈夫だよ! 仕事で忙しくても、私が行けば優先してくれるから!」


 屈託のない笑顔のアンナ。その表情を見れば、普段の二人の関係が良くわかる……。


 ……というか、ボクの周りの女性は、強引な人が多い気がするな。ミーアにも、そういう節があったしね。


「まあ、いいか……。それじゃあ、魔術師ギルドまで行くとしますか」


 ボクの言葉に二人は頷く。手土産の一つも無いけど、特に気にする必要は無いだろう。


 顔を出すだけでも、いつも喜んでくれる人だからね。


 こうして、ボク達三人は連れ立って、ワトソンさんの元へと向かうのだった……。

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