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白のネクロマンサー ~死霊王への道~  作者: 秀文
第六章 アトランティス諸島編

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水神祭(前半戦)

 アトランティス諸島の四日目。今は朝の五時頃。空はまだ闇に覆われていた。


 しかし、『白の叡智』一同は、グローリー島の浜辺に集結している。これからのイベントに向けて、それぞれが装備の確認を行っている所だった。


「アレク、おはよう御座います……」


 ホテルの方角から、アンリエッタがやって来る。目をこすり、まだ眠そうな様子である。その後ろにはセスも付き従っており、こちらへ軽く会釈を行っていた。


「おはよう、アンリエッタ。間に合ったみたいだね」


 ボクが微笑むと、アンリエッタも笑みを返す。そして、篝火に照らされた浜辺に目を向け、不思議そうに首を傾げる。


「他の方々は、余りいらっしゃらないのですね?」


「うん、日が昇ったら増えると思うけどね」


 ボクはアンリエッタと同じく、浜辺の参加者に目を向ける。そこには、剣や杖を手にした冒険者が、まばらに集まっている。全て合わせても、二十人もいない程度である。


 そして、ボクは仲間達に目を向ける。ギリーとアンナは準備万端といった様子。ハティ、ルージュ、ロレーヌは軽く雑談を行っていた。ドリーとグランは飲み過ぎたらしく、少し気分が悪そうに見える。そして、今回はギルもイベント参加組みだ。雷属性のミスリル・ナックルも用意し、事前準備にも抜かりが無かった。


 ボク達の人数は全員で九名。この浜辺の人数の三分の一になる。そこから考えても、気合の入り具合が、他の冒険者と違う事がわかるだろう。


 そう、『白の叡智』は遊びでは無いのだ。本気でイベント報酬を狙う、所謂ガチ勢なのである。


 アンリエッタはクスリと小さく微笑む。そして、ボク達にエールを送った。


「皆様は頑張って下さいませ。ワタクシは観覧席で、皆様を応援していますわ」


「うん、アンリエッタの分まで頑張るよ」


 ボクの返事に、アンリエッタは嬉しそうに微笑む。そして、セスを伴って浜辺から去って行った。向かう先は、貴族専用の貴賓席である。水神祭の本番戦も、観光客向けの見世物の一つとなっているのだ。


 ……ちなみに、イベントに参加出来ない彼女が、ごねない何てあり得ないよね? アンリエッタが素直に去ったのには理由がある。


 昨日はセスと一緒に、アンリエッタの説得を行った。そして、むくれる彼女に対し、ボクは一つの提案を行ったのである。


 その提案とは、イベント報酬の一つをボクが贈る事。ユニーク級の装備一つは手痛いが、イベントを成功させる為である。ボクは泣く泣く提案したのである。


 しかも、セスはその提案に便乗した。彼はその贈り物が、アクセサリーである事をアピールしたのだ。ボクからアクセサリーが贈られる。その言葉に、アンリエッタはアッサリ納得した。


 確かに、アクセサリーは交換レートが低い。ボクとしても、その方が助かるのは確かだけど……。


 そんな訳で、アンリエッタはプレゼントを心待ちにしているのだ。そして、ボクはアンリエッタの分まで、水神の魔石を稼ぐ必要があったりする。そういう意味でも、ボクはこの時間から頑張る必要があった。


「お……? 日が昇って来たね……」


 水平線がうっすらと明るくなる。そして、太陽が僅かに顔を覗かせ始めた。ボクは、メンバーに向けて声を掛ける。


「改めての注意事項だけど、横殴りはマナー違反だからね。他人が攻撃している場合は手出し禁止。獲物の取り合いで、無駄な時間を取られない様に。……まあ、その必要も無さそうだねどね」


「ふむ、確かに……な」


 ボクの言葉に、ギリーが呆れた声で返して来る。ボク達は茫然としながら、ただ浜辺を眺めていた。


 見つめる浜辺には、続々とクラゲの群れが上陸中である。その数は、数百という単位である。浜辺は大量のクラゲによって、徐々に埋め尽くされて行く。ボク達はその膨大な数のクラゲに、ただ圧倒されるしかなかった。


 ……これって、知らない人が見たら、完全に海からの侵略者だよね?


「えっと、先は長いから、皆も程ほどに頑張ってね……」


 ボクが告げると、一同は思い思いに散って行く。各々が近くのクラゲに狙いを定め始めた。獲物は選び放題な状況である。


「さて、ボクも始めるかな」


 近くのクラゲへ、ゆっくり近づいて行く。相手はユラユラと揺らめくだけで、特に攻撃の意思を示したりしない。


「ライトニング・ボルト」


『…………!!』


 ボクの発動した攻撃魔法は、水神の使いへと命中する。弱点である雷属性の為、大きなダメージを与えたはずだ。ただ、相手は身をくねらせるだけ。一撃では倒れてくれなかった。


「流石にタフだね……」


 海神の使いは反撃を行わない。それは彼等が、倒される事を前提とした存在だからである。


 とはいえ、そう簡単に倒される存在でも無かった。簡単に魔石が手に入ると、イベントとしては盛り上がりに欠けるからね。


 そして、ボクは同じ魔法を四回繰り返す。五回目の攻撃で、やっと海神の使いは倒れてくれた。


 ボクは足元のドロップアイテムを回収する。拾い上げたアイテムは「海神の魔石(欠片)」である。これを十個集めると、「海神の魔石」と交換して貰えるのだ。


 そして、海神の魔石五十個で、アクセサリー類と交換可能。武器や防具なら百個が必要となる。つまり、ボクはアンリエッタの分も集める為に、最低でも千体の海神の使いを倒す必要があった。


 ……それを考えると、浜辺を埋め尽くすクラゲが、必然なんだと思えて来たよ。


「さて、皆の様子はどうかな?」


 周囲に目を向けると、仲間達はそれぞれに頑張っていた。ギリー、アンナ、ドリー、グラン、ギルの五名は順調そうである。魔石も百~百五十個は集まると思われる。


 逆に苦戦しているのが、ハティ、ルージュ、ロレーヌだ。ハティは消費が激しく、爆裂波動拳が使えない。ルージュは元々、攻撃能力が高く無いので仕方がない。


 しかし、ロレーヌの腰が引けてるのは何故だ? 彼女はもう少し、頑張れると予想していたのだが……。


 この調子だと、三人は五十個が限界かもしれないな。そうなると、交換出来るのはアクセサリーが一個のみ。ルージュは特に悔しい思いをしそうだな。


「まあ、ボクも人の心配をしてる場合じゃないけどね」


 ボクの場合、爺ちゃん譲りの「賢者シリーズ」がある。その為、武器や防具は必要無い。


 とはいえ、折角のイベントなので、アクセサリー二種は手に入れたい。アンリエッタの分と合わせて、百五十個の魔石が必要な状況なのだ。


「集中しないとね……」


 ボクは近くのクラゲに狙いを定める。そして、ボクは攻撃を再開した。


 このイベントは、日が沈むまで続く。残り時間を考えると、昼までに最低五百体は倒しておく必要がある。


 ボクはボクで頑張らないとな……。

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