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また会う日までさようなら

作者: 三芳野

 「さようなら」は別れを惜しむ言葉である。

 惜しむ言葉を言う暇もない時は「これにて失礼」と言えばいい。

 やや時代がかってはいるが、さようならだって古くから使われているのだ。

「ではまた」だって、また会おうという言葉を省略しているし、そういう点では英語の「SEE YOU」も似たようなものか。大体の別れの言葉はまた会うことを前提にしている。

 では本当に別れるときには何というのか。

 「達者で暮らせよ」とか「体には気をつけて」とか相手の今後を気遣う言葉だったり、○○さんによろしくなど言伝を頼むこともある。

 死んでしまう相手には「ありがとう」とか「地獄に行け」とか今まで思ってたことを端的に吐き出してしまうだろう。

 自分は臨終に立ち会うことは何度かあったが、別れの言葉なんてとても言えなかった。相手が死ぬことを受け入れたくなかったからだ。そういう点では葬式というのは素晴らしいシステムだ。

 もう死んでしまっているんだから別れの言葉なんていくらでも出てくる。

 棺桶の中にはもう生き返ることもない完全に冷たくなった死体が入っている。

 これはもう受け入れざるを得ない。たとえどんなに親しい人であろうとも。

 気が違ってしまうのならまた話は別だが。

 しかしながらそれでも受け入れられない人が中に入るものだ。

 そうでなければ人が生き返る話など誰も発想しなかっただろう。

 まぁあいつが死んでよかったという思いの裏返しの発想もできるからそうでもないかもしれないが。

 黄泉がえりを行う話はいくつかあるが基本的にそれらは失敗することになっている。

 なぜなら人は生き返らないからだ。

 それをちゃんと刷り込ませるために必ず失敗することになっている。

 しかしながら昨今の創作物ではひょいっと生き返ってしまう。

 なぜなのかと言えばそれは物語の様相が変わってきたからである。

 つまりは訓戒よりも娯楽性を、話の筋よりも登場人物を重きに置いたからである。

 それが悪いということは全くない。

 君かいなんて基本的にはわかり切ってることであり、時に行動の邪魔になるものであり、

 想像の世界で迄そのような型にはまったものではたまったものではないからである。

 そういう点では個人的には悲劇にどれほど娯楽性があるのかとも思っているが他人の不幸は蜜の味ともいうしそういう人が見ているのだろうと勝手に考えている。

 悲劇の方が美しいとかわけのわからないことを言う人もいるがそこらへんは分かり合えることでもないので気にする必要はない。

 話はそれたが登場人物に重きを置くとどうなるか、ということが生き返りに重要なのである。

 いったん退場させた人物があまりにも魅力的だった場合再登場させるために生き返らせるのである。

 大体は実は死んでなかったという手法が用いられるが、手段の多少は有れひょいっと生き返らせる作品も中にはあるのである。転生物という抜け道が使われた昔からはとても考えられないことである。

 つまりは死んだ者は生き返らないという当たり前のことをご落成のために当り前じゃなくするのである。

 これは想像の広がりには大いに寄与することではなかろうか。

 重力がある必要もないし、年を重ねたら幼くなっていってもいいし、他人を顧みずあらゆる悪いことも、自分を顧みずあらゆる良いこともできるし、全てを顧みずに何もしなくてもいいのである。考えるだけで宇宙の果てまで行ってもいいし、何のとりえもなくても異性にもててもいいのである。

 実際には確実にできないことをやってもいいのである。

 死んだあと化けて出てきてもいいし、地獄に落ちても極楽浄土に行っても六道輪廻を外れてもいいのである。生まれ変わっても入れ替わっても過去を改変しようともいいのである。

 架空の世界を創造してもいいし神を創造してもいいし、性別だって10や20増やしても構わないのである。

 だから自分は自分の世界の中で死んだ後に親しい人に会えるという話を信じられなくても信じてもいいのである。それで人生が楽しめるならたとえ嘘でもそういうことにしておけばいいのである。

 というわけで、

 また会う日までさようなら。


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