表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサシン クロニクル  作者: キツネ
火に飛び入る砂漠の虫
40/46

後悔

十三話


電の砲(エレクトガン)!」

シズネの放った電撃は、積み上がった岩に打ち消される。すでに何度も打ち込んでいるようで、肩で息をしている。

「どうにかして、戻らないと」

シズネはいつになく焦っていた。いつもなら確実性をとり、多少時間が掛かろうともすぐに別の出口を探すか、助けを呼びに行っている。今も、その方が効率的なのはわかっているが、どうしても此処から離れられなかった。

(影鬼は、まずい)

今の状況はシズネにとって、最悪に近い物だ。ウィルが一人なのもそうだが、相手が影鬼というのが更に悪かった。

(ウィルじゃあ影鬼には勝てない)

「早く、戻らないと!」

息を整えヴァジュラを構える。しかし、引き金は引かなかった。

「違う。助ける側の私が冷静にならなきゃ」

頭をなんとかひやし、冷静さを取り戻す。

いつか、ピエロとの一戦を思い出す。あの時、ウィルはすぐに駆けつけてくれた。

(私の方が先輩なのに、情けない)

「すぐに助けに行く。だからそれまで…!」

シズネはヴァジュラをしまうと、階段をかけ上がっていった。



術式付加・火スペルプラス・フレイム

ウィルは回りの廃材にリークを投げ込む。廃材は燃え上がり、回りを明るく照らした。

「グオオ」

目の前には影鬼が立っている。

(まるで、底の見えない崖だな)

影鬼の魔力はウィザードのそれと比べても、異質だった。まず、底が見えない。巨大すぎて魔力量というものが図れないのだ。次に、魔力の質。今までのどの魔力よりも、淀んでいる。何人もの魔力が混ざりあっているかのような、不自然さがあった。

(何より、あの腕はまずい)

三、四本目の腕。何かの魔術が発動しているようなのだが、今まで見たどの魔術より複雑で、かつ綻びがない。何かはわからないが、かなりの大魔術だろう。

(さて、どうするか。ここ付近の通路は広い。前と同じ手は使えない。かといって戦うのはもっての他)

「引いても死。進むも死か。なら」

リークを二刀で構える。

「動かず、粘らせてもらう!!」

「ゴアアアア!!」

ウィルが構えたのを合図に、影鬼が走り出す。

(焦るな、落ちつけ)

繰り出される突進を、余裕をもって避ける。

(こいつの腕力は驚異だが、動きは単純)

振るわれる左腕をしゃがんで躱す。

(読むのも、避けるのも訳はない)

続けざまの豪腕も、間合いをとって難なく避けていく。

(その隙を縫っての反撃も)

三、四本目の腕も、逆に懐に入ることで当たらず、そのまま狙いを、影鬼の足に定める。

(たやすー)

しかし、ウィルのリークが影鬼に届くことはなかった。



金属音が砂漠に高々と響いていた。

「こっの!」

「ー」

少女がサムライに向けて剣を振るう。が、サムライはそれをすべていなし反撃に移る。少女も簡単には当たらず、ぎりぎりのところで避けていくが、押されているのは明らかだった。

(こいつ、今まで見た誰よりも剣が上手い。防御さえままならない。でも)

「これならどう?」

少女の回りを炎が包む。砂漠の砂さえ黒く焦がすほどの業火だ。

「私に刀が届く時にはあなたは黒焦げよ。これなら近づけないんじゃ」

「下ラン」

炎にも構わずサムライが少女を切り飛ばす。刀は少女の体を完全にとらえていた。

「そ、んな」

激痛の中、少女はサムライを見た。炎の中に踏み込んでいたにも関わらず、その体には傷一、火傷一つなかった。



十四話


「つっ…」

背中に硬い感触を感じ、ウィルは自分が壁まで吹き飛ばされていることに気づく。

「なんだ、今のは? 回し蹴り?」

ウィルが影鬼の懐に潜りこみ、一撃を与えようとした時、影鬼はいきなり武術を使ってきたのだ。今までの影鬼からは、想像もつかないほど、洗練された技だった。

顔を上げると、影鬼が近づいて来るのが見える。

「まずい。早く逃げないと…?」

立ち上がろうとするが力が入らない。手をみると、血で染まり真っ赤になっていた。

「嘘だろ」

意識したとたん、忘れていた激痛が襲いかかる。口は鉄の味で一杯になり、腹部からの出血は止まる様子がない。

「くそ、動けよ!」

吐血しながら何度も力を入れるが、体は鉛のようにおもく、視界も暗くなってくる。こうしている間にも影鬼はゆっくりと近づいて来ていた。

(まさか…死ぬのか?)

血は止まらず、痛みも感じなくなってくるなか、ウィルは考えていた。

(何が間違いだった?)

(影鬼に一撃加えようとしたこと?)

(うぬぼれていたのか)

(少し死地をくぐったことで、いらぬ自信ができていたのか)

(恐怖が麻痺していた)

(そうだ、もとから敵うはずなどなかったのに)

(こんなことなら、あの時引き返すべきだった)

(もう遅い)

(なら、死ぬのか?)

(何故)

(なんのために)


ー自分のためだけに生きることは簡単だけど、何も残らないー


(その通りだ。俺の人生、何の意味も無いじゃないか)


ーきっと後悔するー


(ああ、後悔してるとも。こんなこと、もっと早く気付いていれば)

(あの時の俺は、何もわかってはいなかった)


ーこんなところでは死ねないのです!ー


(いつかのメイドとの戦いも)

(生き残るべきは俺ではなかった)

(少なくとも彼女には生きる理由が、意味があったから)

(俺には何も)


ー大丈夫ー


その時思い出した声は


ーウィルは死なないからー

ーあなたは死なないからー


誰かとかぶって聞こえた。



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ