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プロローグ
第二章 火に飛び入る砂漠の虫
一話
◆キーア暦144 3月2日◆
早朝、まだ日が昇りきっていない時間。とある武官学校の正門通りを、一人の少女が歩いている。赤い髪を腰まで伸ばし、気品のある雰囲気を纏っている彼女だが、学校の制服は着ておらず、その表情もどこか暗い。
「ちょっと、もう行くの?」
正門へ向かって歩く少女を、背後からの声が引き留める。それは、中等部から時間を共にしたルームメイトの物だった。葬式でもあるのか、黒の喪服を着ている。
「まだ時間はあるでしょ。せめて最後のお別れくらい」
赤髪の少女は少し間をあけて答える。
「ううん、いいの。わたしに見送られても嫌がるだろうし。それに…あいつの前では、弱気は見せないって決めてるから」
「…っ」
赤髪の少女は再び歩き出す。
「じゃあね」
引き留める声はもうなかった。
四年くぐり続けた門の前に立つ。ここを通るのは、恐らくこれが最後だろう。
(あいつがいたら…)
少女はふと、今は無き少年のことを考える。
彼がいたならどうしただろうか?
いつものように罵声を浴びせただろうか。
くだらない冗談を交わしただろう。
それとも…共に付いて来てくれただろうか。
「フッ、それはないか」
苦笑を浮かべながら門をくぐる。そのとなりに、悪友ウィル=リーガスの姿は、今はもう無い。




