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アサシン クロニクル  作者: キツネ
火に飛び入る砂漠の虫
33/46

プロローグ

第二章 火に飛び入る砂漠の虫



一話


◆キーア暦144 3月2日◆


早朝、まだ日が昇りきっていない時間。とある武官学校の正門通りを、一人の少女が歩いている。赤い髪を腰まで伸ばし、気品のある雰囲気を纏っている彼女だが、学校の制服は着ておらず、その表情もどこか暗い。

「ちょっと、もう行くの?」

正門へ向かって歩く少女を、背後からの声が引き留める。それは、中等部から時間を共にしたルームメイトの物だった。葬式でもあるのか、黒の喪服を着ている。

「まだ時間はあるでしょ。せめて最後のお別れくらい」

赤髪の少女は少し間をあけて答える。

「ううん、いいの。わたしに見送られても嫌がるだろうし。それに…あいつの前では、弱気は見せないって決めてるから」

「…っ」

赤髪の少女は再び歩き出す。

「じゃあね」

引き留める声はもうなかった。

四年くぐり続けた門の前に立つ。ここを通るのは、恐らくこれが最後だろう。

(あいつがいたら…)

少女はふと、今は無き少年のことを考える。

彼がいたならどうしただろうか?

いつものように罵声を浴びせただろうか。

くだらない冗談を交わしただろう。

それとも…共に付いて来てくれただろうか。

「フッ、それはないか」

苦笑を浮かべながら門をくぐる。そのとなりに、悪友ウィル=リーガスの姿は、今はもう無い。

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