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虚飾のアリス ‐不死の少年と白黒の吸血鬼‐  作者: 竜馬
第2章 王都トランセル
52/214

第2章:38 『薄暗い廊下』

「――――」


 階段を一息に駆け上がったシンゴを出迎えたのは、窓が閉め切られ、一定間隔ごとに備え付けられた明かりがぼんやりと照らす、光量の乏しい薄暗い廊下だった。

 シンゴはちらりと背後、今しがた駆け上がってきた階段を見下ろす。正確には、シンゴが気にしているのは今頃、下の階で激闘を繰り広げているだろう二人のことだ。


 ついつい引き返してしまいそうになる足に力を込め、今ここで自分が戻ってしまえばアリスとカズを裏切ってしまうと己に言い聞かせ、シンゴは後ろ髪を引かれる思いを振り切るように最後の一段を上りきる。

 そして、改めて薄暗い廊下の奥へと目をこらす。


「やっぱ便利だな……この目」


 真紅に染まる右目辺りにそっと手を添えてそうひとりごちると、シンゴは左目を閉じ、右目のみの視界で廊下を歩き始める。

 廊下にはシンゴの靴音のみが響き、他には音が聞こえず、奇妙な薄気味悪さを感じる。――ふと、シンゴはこの状況に妙な既視感を覚えた。


「なんか……前にもこんなとこを歩いたことがあるような……」


 しかし、その既視感の取っ掛かりに指が掠めるか否かのところで、“それ”はシンゴの手からするりと滑り落ちてしまう。

 シンゴは嘆息すると、今はこんなことを考えている場合ではないと頭を振って意識を切り替え、周りへと意識を向ける。


「ドアは……ねえな」


 長く続く廊下には扉は一つも見当たらず、ただ真っ直ぐと伸びているだけだ。

 シンゴは無意識のうちにごくりと生唾を飲み込むと、歩くペースを少しだけ速めた。

 あまり長居したくないという理由もあってのことだが、それとは別に、前方に左右に分かれた道と、さらに真っ直ぐ伸びる、計三つの分かれ道を見つけたからだ。


「――――」


 シンゴは恐る恐る顔だけを突き出し、まずは右の通路を覗き込んでみる。

 そこには、今しがたシンゴが歩いてきた廊下と同じ構造の廊下が真っ直ぐ伸びていた。その事実に、シンゴは知らぬ間に詰めていた息をほうっと吐き出す。


 シンゴはあまり幽霊などの類は信じない派なのだが、それでも『未知』という存在への恐怖は感じる。世間一般で見れば、シンゴのような人間は多々いるだろう。

 ともあれ、曲がり角を曲がった瞬間に化け物に出くわすなどというホラー映画的な展開は訪れなかった訳だ。


 そのことに再び安堵しながら、シンゴはゆっくりと通路の交差する真ん中へと進んで、正面から右の通路を見据える。


「誰ですかい?」


「――――ッ!?」


 突如、背中に投げかけられた声に、シンゴの全身から一気に血の気が引く。体中の汗腺が開き、大量の冷や汗が溢れ出す。

 飛び跳ねるようにその声から距離を取り、弾かれるように後ろへ振り返った。


 果たして、そこにいたのは――、


「――おや? 誰かと思ったら、あんときの兄ちゃんじゃねえですかい」


「あ……あんたは……」


 シンゴの震える声音での問いかけに、その男は後頭部に手を当ててケラケラ笑うと、


「やだなあ、もう忘れちゃったんすか? あっしっすよ、リエルっすよ! 関所で会った! ……あれ? そういや、兄ちゃんには自己紹介してなかったっけ?」


「ああ、あのときの……」


 ようやくシンゴが眼前の男の素性を理解する。

 相変わらずそのぐいぐいくる性格と言うか、距離間というかは健在な様子だ。

 しかし、その男――リエルが何故こんな所にいるのか。そのことに疑問を抱く前に、リエルが突然その目を大きく見開いた。

 なにごとだとシンゴは首を傾げるが、リエルはそんなシンゴの“目”を指差し、


「兄ちゃん……その目!」


「え? ――あ!」


 慌てて右目を手で覆うが、時すでに遅しだ。

 ――しかしここで、シンゴはあることに気が付く。右目を手で覆い隠したことで、残ったのは暗視能力のない普通の目だ。


 そして、廊下には奇妙な蛍光灯のような、ランプのようなものが壁に備え付けられているのだが、その明かりでは人の体の細部を見分けるには少しばかり不十分なのだ。

 つまり何が言いたいかというと、シンゴの“左目”ではリエルの目の色などを詳細に見分けることができない。


「どうした、兄ちゃん?」


「…………」


 シンゴの胸中に嫌な予感がよぎる。

 逸る鼓動。深くなる呼吸。それらを鮮明に意識したまま、シンゴは恐る恐る手を離し、右目――暗視能力の備わった吸血鬼の瞳でリエルを見やった。

 リエルの目は――、


「あ……紅色……ッ!」


 シンゴがそう口にした瞬間、リエルから表情が消える。

 そして、次の瞬間――、


「――――う?」


 シンゴは頭蓋を揺らす衝撃と、ぐるんと回る視界にそんな間抜けな声を上げる。

 そして一瞬の浮遊感の後、背中から床に叩き付けられた。


「あぐッ!?」


 視界が明滅し、遅れて頬の痛みがシンゴの痛覚を刺激したが、その痛みはすぐさま吸血鬼の力で消えた。

 ここでようやく、シンゴは自分が顔を殴り飛ばされたのだと気が付く。


「――ったく、まさか兄ちゃんまで吸血鬼だったとは……。さすがにあっしも驚きましたぜ。しかも“従者”なうえに、片目だけの真紅の瞳。なかなかに傑作ですな! ――となると、主様はあの嬢ちゃんで?」


 語りながら、リエルが体を起こしたシンゴに近付いてくる。


「ひっ……!」


「そんな怖がんねえでくだせえよ……。兄ちゃんも、あっしと“同じ”なんでしょ? だったら、仲間じゃねえっすか!」


 そう言いながら、リエルはシンゴの首を片手で掴むと、そのまま吊るすように軽々と持ち上げた。


「が……は……ッ!?」


 そのひょろ長い腕のどこにそんな力があるのか、リエルはまるで重さを感じていない様子でシンゴを吊し上げながら、


「まあ、兄ちゃんがあっしの仲間だったとしても、この屋敷に勝手に入り込んでいる以上は生きて返すことはできねえんっす。――あ、さっきは殴ってすんません。許してくだせえ、兄ちゃん。――なんせ、これからがもっとキツイんっすからねぇ〜」


 リエルは舌なめずりをすると、空いた方の手で腰からナイフを取り出す。

 そしてその刃先に舌を這わすと、


「兄ちゃん、吸血鬼の殺し方って……知ってっかい?」


「ふ……ぐッ」


 口の端から涎を垂らし、苦しみで足をばたつかせるシンゴは、当然リエルの質問に答えられる状態ではない。

 しかし、リエルはそんなシンゴの状態など気にも留めず、まるで自慢話をする子供のような無邪気さで、吸血鬼の殺し方とやらについて説明する。


「兄ちゃんも知っての通り、吸血鬼は簡単には死なない。だったらどうするのか……答えは簡単! ――死ぬまで殺し切るんっすよ!」


「……ふ……ぅッ!?」


 首を絞めるリエルの五指が力を上げ、シンゴの頸椎がみしりと嫌な音を上げる。

 脳へと巡るはずの血流が阻害され、意識が白濁してくる。じわぁと首元が熱くなるのを感じ、シンゴは本能的に手を伸ばす。

 しかしその手はあらぬ方向へと向かってしまう。このことから、シンゴからまともな方向感覚が徐々に失われ始めているのが窺える。


 ――しかし、シンゴにしては珍しく、今回はそれがいい方向へと働いた。


 手を伸ばした先――指先に、ちょうど手の平に収まるくらいの何かが触れた。

 残った意識をかき集め、シンゴはそれを掴むと同時に、リエルがそのナイフを一閃した。


「お゛あ゛あ゛ぁぁ――ッ!!」


「――――ッ!?」


 塞がれた喉を無理やり震わせて吠え、シンゴは手に掴んだ何かをリエルへと叩き付けた。

 物が割れる甲高い音が響き、咄嗟にリエルはシンゴの喉から手を放す。

 あらぬ方向へと振るわれたナイフが、二人にしか見えない銀色の線を暗闇に描き出す。


「げほっ、がは……ッ!」


 尻餅を着いたシンゴが、目尻に涙を浮かばせながら激しく咳き込む。本能的に喉に手をやろうとして――空振った。

 首元にねちゃりとした感触が生じる。


「あ……ゆ、びぃ!?」


 ぼたぼたと滴り落ちる血液の流れ出る元は、親指以外が綺麗な断面を覗かせて切断されたシンゴの指の根元だった。

 全身を冷んやりとした嫌な感覚が駆け抜けるが、瞬きした次の瞬間には、まるで今見たものが錯覚だったかのように、シンゴの指はちゃんとあるべき場所に五本ちゃんと存在していた。


「はぁ……はぁ……」


 手の平を見やり、呆然と息を荒げるシンゴの耳に苦鳴が滑り込んだ。

 はっとして前方を見ると、ちょうど頭を押さえたリエルが立ち上がってくる瞬間だった。

 ふとリエルの足元を見れば、何やら白い破片と水、そして花が落ちていた。


 ちらりと横を見れば、廊下が交差した所の四隅にそれぞれ四つの台座があり、その上にシンゴが掴んだものを除いた、三つの花瓶が花を生けられて鎮座していた。

 そして再び視線を眼前のリエルへと戻せば、リエルは「いってぇ……」と低い声で呟きながら、頭を押さえて首を横に振っている。


「――――ッ!」


 手を離したリエルの頭部には、シンゴがぶつけた花瓶の傷跡は存在していなかった。

 シンゴは手加減したつもりなどなかったので、本来なら大量の出血があってもおかしくないのにも関わらずだ。

 そう、本来なら――だ。


 リエルは細めた真紅の瞳で、驚くシンゴを見下ろしながら言う。


「なに驚いてるんすか。あっしの体のことは、同じ体の兄ちゃんがよく知ってんでしょうが」


「…………ッ」


 はっとなるシンゴに、リエルはゆらりと歩み寄ってくる。


「兄ちゃんよ……アンタ、全然、椀力ねえのな。それとも、その片目だけの“瞳”と何か関係あるのかねぇ……?」


 リエルはそう首を傾げながら、やがてシンゴの眼前までやってくる。

 そして冷めた瞳で、ガタガタと震えるシンゴを見下ろして、


「まあ、どっちでもいいっすか。どうせ殺すんですし」


「あ……う……ッ」


「はあ? 聞こえませんよ、そんな小さな声じゃあ」


 詰まる喉から漏れたシンゴの言葉ではない声に、リエルがわざとらしく耳に手を添える。

 瞠目するシンゴだったが、次の瞬間――、


「ぎぃぁ――ッ!?」


 苦痛に顔を歪ませたリエルが、そんな悲鳴を上げて体を後ろにのけ反らせる。

 何ごとだとリエルの背後を見てみれば、そこには小さな人影がリエルの背中にナイフを突き立てていた。


「アン、リ――!?」


 シンゴがそう叫ぶと同時に、アンリはリエルからナイフを引き抜く。再び苦鳴を上げるリエル。

 見れば、アンリの手に握られているナイフは先ほどまでリエルが持っていたものだ。おそらく、先のシンゴの花瓶による攻撃でリエルの手から離れたナイフを、この廊下のどこかに潜んでいたアンリが拾ったのだろう。


 ナイフであれば、この薄暗い廊下でも僅かな光で反射して分かる。そして、この薄暗い環境で人を刺すという行為は、狙いを定めないのであれば、この光量で十分に実行は可能だ。


 それにしても、シンゴが憂慮していたアンリの才能の片鱗が、今の刺突で証明された。

 しかし、今はそのことについて考慮するのは後回しだ。何故なら、リエルが既に刺された傷が治った様子で、自分を刺したアンリへと振り返ったからだ。


「……嬢ちゃん、人を刺すなんて駄目じゃないっすか」


「あ……」


 自分のことを完全に棚上げしたセリフを吐きながら、リエルがアンリから軽々とナイフを奪い取る。

 そして――、


「あっしがこのナイフの正しい使い方を教えてあげまっすよ」


「逃げろ! アンリぃ!!」


 必死にシンゴが叫ぶが、アンリはリエルの真紅の目に射すくめられ、動けないでいる。

 振りかぶられるナイフ。アンリの顔が恐怖で歪み、


「やめろぉ――ッッ!!」


「やめねえっすよ」


 無情にも振り下ろされるナイフ。その銀閃が、アンリの顔面を斜めに斬り裂く寸前――、


「――――」


「――え?」


 アンリの上げた疑問の声と同時に、リエルはナイフを振り上げた姿勢のままで、ぐらりと真横に倒れ込んだ。

 突然のことに驚くシンゴと、腰が抜けてその場にへたり込むアンリの顔に困惑の色が浮かぶ。

 そんな二人の困惑を解消する声が二人の間――すぐ目の前から発せられた。


「はぁ、はぁ、人の妹に、なにして――くれてんのよ!」


「「――――!」」


 いつの間にそこに現れたのか、茶の髪をツインテールに結んだ少女が呼吸荒く、倒れ込んだリエルにそう吐き捨てたのだった。



――――――――――――――――――――



 パン――という乾いた音がアンリの頬から響く。

 アンリは叩かれた己の頬を押さえ、目尻にうっすらと涙を溜めて自分を叩いたイレナを見上げる。

 そんなアンリに、イレナが怒った表情で、


「アンリ、自分が一体なにをしたのか分かってる?」


「…………ッ」


 唇を噛みしめ、漏れ出そうになる嗚咽を必死にこらえながら、アンリが口を開く。


「……だって……私がやってなきゃ、シンゴが――」


「うん、それは分かってるわ。――でも、あなたがしたことは、人の命を奪う行為なのよ。……今回は運良く相手が特殊な体をしていたから避けられたけど、そうじゃなかったら今頃アンリは――人殺しになっていたのよ?」


「――――」


 とうとう堪えきれずに、アンリの頬に涙が伝う。

 イレナは、顔を伏せて目元の涙を手で拭うアンリを怒った顔のまましばし見下ろし、やがてその雰囲気を軟化させると、


「――無事で良かった」


「――――ッ!」


 その場に膝を着き、アンリを優しく抱きしめた。

 そこにはつい先ほどまでの怒った雰囲気など微塵もなく、あるのは、ただただ妹の無事に安堵する優しい姉の姿だった。

 抱きしめられたアンリは、やがてイレナの胸元に顔を埋めて嗚咽を漏らし始める。そんなアンリの背中をイレナが優しく撫でる。


「怖かったのよね。シンゴを助けるために、頑張ったのよね。――でも、約束して。もう二度と、あんなことはしないって」


「ん……ぅん……」


 密着したアンリが頷くのを感じ、イレナは「いいのよ――」と呟き、包み込むように優しく諭す。

 そんな二人のやり取りを少し離れて黙って見ていたシンゴは、アンリのあの方向性の間違った才能は、これで開花しきることはないだろうと思えた。

 しかしそれも、普通に生活する場合の話だ。アンリからその危うい才能が消えた訳ではないのだから――。


 ちなみに、シンゴは先ほどイレナにグーで殴られた。アンリを何故ここに連れてきたのだという、ごもっともな理由でだ。

 当然その理由は説明したのだが、なら何故アンリから目を離したのかと反対側の頬を再びグーで殴られた。


「ほんと、俺のせいだよな……」


 そう小さく、己を戒める言葉を呟いたシンゴは、倒れ伏して気を失っているリエルを見やる。

 シンゴの失態で、アンリを人殺しにしてしまうところだった。あれだけ自信たっぷりにアリスを説得しておいて、このざまでは笑えない。――ほんと、笑えない。


 そしてリエルだが、彼は先ほどイレナの打撃を背後から不意打ちでもらい、完全にその意識を刈り取られていた。

 確かに吸血鬼を倒すのは容易ではない。傷は瞬く間に癒え、その強靭な身体能力が相対した者を追い詰める。


 リエルは、吸血鬼を殺すには死ぬまで殺し切るしかないとシンゴに言った。しかし、シンゴ自身が何度も経験したように、その意識を刈り取ってしまうこともまた、吸血鬼を無力化する方法のひとつなのだ。


 それに、シンゴの見立てが正しければ、おそらくリエルは――。


「――よし」


 そう呟いて思考を中断したシンゴは、アンリが落ち着いてきた頃を見計らい、彼女たちの元へと歩み寄る。


「そろそろ移動するぞ。早くリドルとアルネを見つけねえと」


 立ち上がり頷くイレナが、シンゴの意見に異存がないことを告げてくる。そして、目元に涙のあとを残したアンリを見下ろし、


「ここまで来たら、アンリも連れて行くわ。――いい、アンリ? 勝手な行動は、皆を危険に晒すってことを肝に銘じておくのよ」


「うん」


「よろしい!」


 頷くアンリに微笑みかけ、イレナがその表情を引き締めてシンゴを見やり、


「シンゴも、アンリのことは絶対に守るのよ!」


「それは絶対に守るけど、代わりに戦闘になったらお前が戦ってくれよ? 俺じゃ、囮くらいにしかなんねえからよ。――いちおう訊くけどさ……お前は大丈夫なのか?」


「何がよ?」


「いや……」


 シンゴから見た限り、イレナはかなり息が上がっており、その顔も疲労の色が濃い。

 そんなシンゴの憂慮が伝わったのか、イレナは気丈に笑ってみせると、


「へっちゃらよ、これくらい。それよりも、速く移動しましょうよ。まだそいつみたいな奴が他にもいるかもしれないし」


 リエルをちらりと見やったイレナが、早急な移動を促してくる。

 正直、リエルの身動きは封じておきたかったのだが、生憎、拘束できるようなものの持ち合わせもなければ、実際に縛ったとしても、吸血鬼の腕力で引きちぎられるのがオチだろう。それに、時間もあまりないのは事実だ。背に腹は代えられない。だから、危険だがリエルはこのままで放置していく方針で、シンゴとイレナは相談の末に決めた。


「さて……まずはどっちに向かうかだけど――」


 改めて、シンゴは四つに伸びる廊下を見やる。その内のひとつは、先ほどシンゴが進んできた廊下なので、選択肢の候補から除外してもいいだろう。そうすると、残る道は――三つだ。


「どの道が正解なんだ――?」


「あ! あたしはこっちから来たわよ」


 シンゴが進んできた廊下から見て右の通路を指差したイレナが、選択肢をさらに一つ削る。


「――となると、後は左か真っ直ぐだけど……」


「うーん……」


 首を捻るシンゴとイレナだったが、そんな二人に、残った最後の一人――アンリが思わぬ朗報をもたらした。

 アンリは左の廊下を指差し、


「私は最初あっちに進んだけど、空っぽの部屋が何個かあるだけで、あとは行き止まりだったわ」


「じゃあ……」


「ええ……」


 シンゴたち三人は、残った真ん中の廊下を揃って見据えて――、


「「「真ん中」」」


 進むべき道が判明したことで、シンゴたちは素早く移動を開始した。


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