第2章:18 『オール・イン・ワン』
「さあ、王女さんの配達は済んだんだ。約束通り、宿の件どうなってんのか説明してくれよ」
修道院に帰ってきたシンゴは、あのくそ苦い茶を呑気に飲んでいたアネラスに開口一番、ここを発つ前に交わした約束――宿の件について問い質した。
シンゴがこうも急いでいるのには、当然ながら理由がある。というのも、既にだいぶ日は遅く、ともすれば日付が変わりかねない程の時刻だ。
今から宿に移動する時間を考慮すれば、距離によっては明日になってしまう。
そんな事情もあり、シンゴは苛立ちを隠せないままアネラスに詰め寄っているという訳なのだ。
しかし、そんなシンゴの急かすような言い方にもアネラスは特段動じる事はせず、残っていたお茶を全て飲み干すと、ゆっくり息を吐いた。そして、
「コネリア、おかわり」
「はい、ただいま」
「聞けよ人の話を!?」
全身で不満をアピールするシンゴ。しかしアネラスは、小指で耳を掃除しながら片目を閉じると、迷惑そうに「うるさいねえ……」と呟く。
「あんまり大声を出すんじゃないさね。子供達が起きちまうだろ。それに、そんなに急がんでも宿は目と鼻の先さね」
「え? すぐ近くにあんの? よかった……てっきり本気でボケがきてて、俺との約束をド忘れしてたのを必死に誤魔化してんのかと思ったぜ。ありがとな、約束守ってくれて――ババア」
「感謝と罵倒を同時にすんじゃないさね!? ――ったく、アンタはある意味じゃイレナ以上だよ……」
「そっちこそ失礼な!?」
ババアとガンのくれ合いをしていると、シンゴの頭に軽い衝撃が走った。
「いて!?」
「シンゴ、君はもう少し年配の方を敬うべきだよ。それに、そんなに大声を出したら子供達が起きちゃうって言われたばかりじゃないか……」
シンゴが頭を押さえながら後ろに振り向くと、腰に手を当て、シンゴとお揃いの手袋をした右手を手刀にしたアリスが、半眼を向けながら嘆息した。
「そうだぜ、シンゴ。年寄りは大切にしろって親に教えて貰わなかったのか?」
腕を組んだカズが、アリスに同意するようにシンゴを追撃してくる。
しかし、シンゴにも言い分がある。
「親――っていうか、俺の家じゃもっと過激だったぜ? うちのじいちゃんと相対するときは、手加減なんかしてたらこっちが殺されかねないからな。――つっても、俺が全力でいったとしても骨折で済めばいい方なんだけどな。俺の身近なお年寄りは」
「…………それは……会ってみたいような……会いたくないような……」
アリスが若干引きつつそんな事を言ってくるが、何も分かっちゃいない。
アリスの言葉に遠い目をして掠れた声で笑うシンゴ。そんなシンゴを見て、同じく軽く引いた様子のイレナが問いかけてくる。
「い、一体あんたのおじいさんと何があったのよ……」
そんなイレナの問いかけに、シンゴは遠い日の記憶を思い出すように目を細めると、あの地獄を回想する。そう、あれは――
「――記憶が飛んでて理由は思い出せねえけど、全身複雑骨折で入院させられた事があったり、これもショックで記憶が飛んでて理由が曖昧だけど、生きた虫を口いっぱいに放り込まれた事もあるな。――後は、吹雪の夜に突然、根性が足らん! だとか言いだしたかと思ったら、次の瞬間見知らぬ山の中で目が覚めたりしたな。……後は眼球――」
「も、もういいよ、シンゴ……!」
顔を盛大に引きつらせたアリスが、青い顔でシンゴの昔話に待ったをかける。見れば、周りの面々も皆同じような表情でシンゴを見ている。僅かに哀れみの感情が垣間見えているのは気のせいだろうか……。
「まじで? まだ序章にも入ってねえんだけど……」
「マジかよ……。オレ、初めてお前がすげぇと思ったぜ……」
「あたしもちょっと見直したというか……不憫になってきた……」
各々の反応――主に引かれるという反応をされ、シンゴはやっぱり俺んちは異常だったんだな――と、悟りたくなかった事を異世界で悟る。
そういえば、クラスメイトにじいちゃん関連の話をした時に急にゲロった奴がいたが、今思えばそういう事だったんだなと、シンゴはかなり遅い反省をする。――が、確かそのクラスメイトは前田だったような気がしたので、反省はすぐさま取り下げる。
そして、毎度の事ながら話が逸れてしまっていた事に気付き、シンゴは改めてアネラスに向き直る。
向き直った先のアネラスの顔はアリス達と同じように引きつっており、シンゴは回想で荒んだ心が少しだけ晴れた気がした。
「――んで、宿ってどこにあんの? それと、またここにも寄ったりしていい?」
シンゴにとって、既にここは思い入れがある場所となっている。
王都に来てから大半の時間を過ごしたからというのもあるが、ここでの多くの出会いがシンゴの心に強い印象となって残っているから――というのが理由の大部分だ。
それに、子供達ともまた会いたいし、別れるとしてもちゃんとお礼を言う時間は設けたいと思っての言葉でもあった。
しかしそんなシンゴの心配は、アネラスがニヤリとして発した次の言葉で杞憂に終わる事となる。
「寄らんでも大丈夫さね。アンタ達の宿は――“ここ”なんだからね」
「――――ん?」
シンゴ達の活動拠点が決まった――。
――――――――――――――――――――
シンゴ達は、紆余曲折ありはしたが無事に宿を――王都での活動拠点を確保する事ができた。
しかし、食事にしても宿泊料にしても、全てがタダというおいしい話では当然なかった。
今までと同じ部屋に泊まり、シンゴは起床する。
女子闖入事件が起こるかもとワクワクしながら身構えていたシンゴは、結局朝まで一人もやってこず寝不足となった頭を振りながら部屋の外に出ると、大きな欠伸を一つかます。
すると、そんなシンゴに横から声がかかる。
「おはようシンゴ。……眠たそうだけど、あまり眠れなかったのかい?」
同じタイミングで廊下に出ていたらしいアリスが、朝の挨拶と共に苦笑を覗かせる。
起き抜けに見るアリスの姿は、朝日を浴びてこの上ない神々しさを醸し出しており、シンゴは思わず、
「ありがたや〜」
「な、なに?」
シンゴはアリスに向かって手を合わせると、朝一で美少女を拝めるというこの上ない幸福を噛みしめた。
シンゴの突飛な行動に狼狽えるアリス。そんなアリスにシンゴは、「この世に生まれる事ができた幸福に感謝してただけさ――」と気障に微笑む。
「そう……てっきりボクは、寝不足でいつもみたいに頭がおかしくなったんじゃないかって心配してたんだけど……杞憂だったみたいだね」
「俺は“いつも”って部分が杞憂だと信じたいかな!?」
朝っぱらからアリスの無自覚な毒を浴びつつ、その後下階に下りたシンゴ達は、朝食に後片付けと、そろそろ慣れてきたルーチンをこなす。
そして食後の休憩を少々挟みつつ、シンゴ達は昨日アネラスに言われた事についての詳細を再び確認する。
アネラスはあの後、シンゴ達を泊める代わりにある“条件”を提示してきた。
やはりというか、シンゴの何か企んでいるのでは?――という憶測は、見事的中した訳だ。
しかも言い出すタイミングが、これまた意地が悪い。
あのタイミングで断りでもすれば、あのババアの事だ――冗談抜きでシンゴ達を放り出しかねなかった。
やけに引き延ばすなと思っていたが、こういう思惑があったのかとシンゴはアネラスを睨み付けたが、当のアネラスは涼しい顔で「どうするさね?」と、既に答えの見えた質問を投げかけてきた。
断れるわけもなく、シンゴは渋々、アリスとカズは快く承諾した。
して、その条件についてなのだが、昨夜はもう遅く、“明日に障る”というアネラスのさっそく何かさせようとしているのが見え見えの進言により、その条件の詳細を聞く事なく就寝となったのだ。
そして現在。シンゴ達は改めてアネラスにその“条件”とやらを聞くために、何もせずに席に座って待機しているわけなのだが――
「遅くねえか、あのババア……」
「きっとう○こよ」
「イレナ……君……」
シンゴの愚痴に対し、女子がおよそ口にしてはいけない単語をさらっと口にするイレナ。そんなイレナに過去、とある川のほとりで「吐く」なんて口にしていたアリスさんが呆れた声を出す。
おそらく、あの時は場の空気を和ませようとしての発言だったのだろう。そう思いたい。
すると早速、噂をすればなんとやら。アネラスがすっきりした顔で腹をさすりながらやってきた。――さすがにずっと生活を共にしているからと言うべきか、どうやらイレナの予想は的中していたようだ。
アネラスは「よっこらせ――」と年寄りくさい事――事実ババア――を言いながら決まった席に腰を下ろすと、コネリアが先読みで淹れておいたお茶に口をつける。
そして一息つくと、自分を見つめるシンゴ達に気付く。そして眉を寄せると、
「なに見てんのさね?」
「…………なあイレナ。このババア本当にボケてねえよな!?」
シンゴがイレナにぐるんと首を回して吠える。
そんな様子を見たアネラスは、イレナが答えるよりも早く「アッハハハ! 冗談さね!」とゲラゲラ笑う。
「このババア……いい加減にしねえと、俺の十八番奥義が火を吹くぜ……!」
拳を握りしめるシンゴの言葉をスルーして、アネラスは「さて――」と前置きすると、昨日の話に出た“条件”とやらを説明する。
「アンタ達をここに寝泊まりさせるための“条件”、やる事は簡単さね。――ようは、“仕事”をしてもらうのさ。イレナのお供としてね」
「イレナの……?」
シンゴ達が視線を向ける先では、イレナが「ああ、そういう事ね!」となにやら一人で納得している。
より具体的な事を教えて欲しいと、シンゴがアネラスに視線で問いかける。
するとアネラスは人差し指をピンと立て、「要するに――」と言葉を継ぐと、
「『酔いどれ亭』に向かえって事さね」
「「「『酔いどれ亭』に???」」」
シンゴ、アリス、カズの言葉が重なる。
どうやら、またあの酒場に行く事になりそうだ――。
――――――――――――――――――――
「なんだいあんたら! そんなにここが気に入ってくれたのかい!」
来店早々、シモアの大声に出迎えられる。
シモアは最早お約束となった恐怖の抱擁をイレナと交わすと、次いでシンゴに顔を向けて「ん!」とか言って両手をがばっと広げてきたので、首が痛くなるほど高速で顔を横に振って、丁重にお断りする。
「そうかい……。で、今日は何の用だい?」
「あのね、シンゴ達はしばらくうちに泊まることになったから、家賃代わりにあたしの“仕事”を手伝う事になったのよ!」
「ほう、そうだったのかい。しかし、タイミングが悪かったねえ……。ついさっき他の奴が“仕事”を持っていっちまって、今は“危ないのしか”ないんだよ……」
「うん! それでいいわよ!」
「ちょ〜っと待とうかイレナ君?」
「何よ?」
どんどん話を進めていくイレナだったが、さすがに聞き逃せない単語が混じっていた気がしたので、シンゴは一旦「待った」をかける。
「今さ、“危ない”とか聞こえたような気がしたんだけど……今から俺らがやる“仕事”って、危険なの?」
シンゴの胸中で、嫌な予感がどんどん大きくなっていく。
縋るようなシンゴの視線を受け、しかしイレナは躊躇するなど微塵もせず、「そうよ?」と、何を今さら――みたいな顔で頷いた。
「…………まじかよ。……いや、危ないってのはまあ、今は横に置いとくとして――」
シンゴの横に置いとくのジェスチャーを目で追いかけるイレナに、シンゴはやっぱり最初に訊いておくべきだったかな――と、アネラスの件での反省をまったく生かせなかった自分に軽く後悔しつつ、その概要について訊いてみる事にした。
「その“仕事”って、具体的にはどういったもんなんだ? まずはそっからだと思うんだよ、俺ら全然知らない訳だし」
シンゴと同じ意見なのか、隣のカズとアリスからも頷く気配が伝わってくる。
イレナはその質問に「そうだったわ!」と、やはりというか、説明義務を完全に忘却していた事を今思い出したみたいな反応を見せる。
まあ、これは完全にシンゴ達の落ち度である。“あの”イレナに期待していてはいけなかったのだ。
シンゴの胸中は後悔の念で埋め尽くされ、その感情を抑えるように拳をぎゅっと握りしめる。
「ねえ、なんか失礼な事考えてない?」
「いや、可愛いイレナちゃんの説明まだかなーって」
「そ、そう? じゃあ、早速説明するわよ!!」
意外と勘が鋭いイレナに胸中を看破されかけるが、脳味噌単純で事なきを得る。
どうやらイレナの勘は、ユピアやアリスのいわゆる『女性の勘』というものよりは、どちらかというと『野生の勘』に近いんだろなとシンゴが考えていると、イレナが不審な目をこちらに向けてきた事で確信に至る。
「ねえ、やっぱりあんた――」
「イレナちゃんの可愛い声で説明が早く聞きたいなー」
「もう、しょうがないわねー!」
イレナの扱いに慣れてきたシンゴに上手いように弄ばれながら、そんな事など露程も自覚していない上機嫌なイレナは、早速“仕事”の内容とやらの説明を始める。
イレナはまず、ずびし!とあさっての方向を指差す。
シンゴ達は揃ってイレナの指差す方向へと視線を向ける。
指差す先、そこにはなにやら“ボード”のようなものが備え付けられており、そこへ数枚の紙が貼り付けられていた。
見れば、そのボードの前にガタイのよさそうな男が数人集まり、張り出された数枚の紙に目を通すと、「うわぁ……」とか言いながら去って行くのが窺えた。
シンゴは危険を知らせるアラームが頭の中でガンガン響くのを意識して無視すると、軽く死んだ目でボードを指差し「……なにあれ?」とイレナに問いかける。
そんなシンゴの問いかけに、イレナは何故かふんぞり返りドヤ顔を見せると、
「あのボードには色んな“依頼書”が張り出されていて、その依頼をこなして報酬金を稼ぐのが、あたしの仕事なのよ!」
「へえ……。それっていわゆる“ギルド”みたいな感じだね」
イレナの説明を聞いたアリスが、“ギルド”という単語を口にする。ちょうどシンゴも同じような事を考えていたところだ。
やはり、育ちが同じ世界であるアリスとシンゴの物の考え方は、必然的に似通うようだ。
しかし、やはり素朴な疑問は残る。というのも、何故ここ『酔いどれ亭』が“ギルド”のような事をしているのかという事だ。
シンゴは、RPG系のゲームをあまりやらない。別に嫌いという訳ではなく、理由は二つ――“疲れるから”と“次の作品をプレイできない”という事情があるからだ。
疲れるというのは、どうやらシンゴは感情移入しやすいタイプらしく、感動シーンなんかが終わった後などはボロ泣きして、やる気等が根こそぎ持ってかれるのだ。
ならば感動要素の少ないすっきりでさっぱり系ならば?とも思ったが、こちらに関しても二つ目の理由である“次の作品がプレイできない”が原因であまり出来なかった。これはどういう事かというと、先に述べた通りシンゴは感情移入しやすいタイプであるがために、あまりに前の作品の印象が心に残ってしまって、次の作品が頭に入ってこないのだ。
つまり何が言いたいかというと、“酒場”というものが“ギルド”の役割を兼任しているというのは普通なのだろうか?――というRPG関連のゲームから知り得るだろう情報が、シンゴにはないのだ。
もちろん、この世界がゲーム等の世界観と同じかと問われれば、イエスともノーとも答えられないというのが現状だ。
ならどうするか。シンゴのスタイルである「分からない事は素直に訊く」の出番と言う訳だ。
シンゴは早速イレナに向き直ると、質問をぶつける。
「なあ、なんで『酔いどれ亭』がこんな事やってんだ? ってか、どういう仕組みなんだ?」
「お? シンゴにしてはイイとこ突くじゃねぇか。――まあ、オレも知らんがな。ってな訳で説明頼む」
上から目線で会話に割り込んできた割に、結局は知らないらしいカズが問いかける――シモアに。
ああ、確かにここの店主がいるのに、イレナに訊いていたシンゴは間抜けだ。
そして、カズに話を振られたシモアは腕を組むと、
「なあに、“うちの子達”を養うための副業みたいなもんさ。仕組みは簡単! 依頼主から依頼書とその報酬をここで受けとり、そこのボードに張り出す。そんで、依頼を受けたもんが依頼達成の“証拠”をここで提示すれば、『酔いどれ亭』の仲介料が差し引かれた報酬が支払われるって寸法さ!」
「……なるほど……よく出来た仕組みじゃねぇか」
「ありがとよ」
カズは今の話が理解できたようだが、シンゴはなんとなくしか理解できなかった。しかし、他の面々が理解していればいいか!と丸投げする。
そして一同はボードの前に移動すると、三枚の依頼書に目を通した。
「えっと? うーわ……。全部魔物の討伐じゃん……」
依頼書に一通り目を通したシンゴは、依頼書に大雑把に描かれた見るからに強暴そうな魔物を見て、今すぐ帰りたい衝動に見舞われる。
「なあ……絶対にこん中から選ばねえと駄目なのか? 一日空けて明日にとかさあ……?」
「無理よ。今日、収入が無かったら色々アウトよ」
「退路はなし……だね」
「そのようだな……」
シンゴの提案をイレナが綺麗さっぱり両断する。思っていたより、バレンシール修道院の懐は寂しいようだ。
そして、そんなところにお邪魔になっている以上、シンゴ達にも退路はない。
イレナの言葉を受け、アリスとカズも描かれた魔物の絵を見ながら覚悟を決める。
「んー、やらなきゃなんねえのは分かったけど、せめて一番簡単そうなやつを……ん?」
どれを選んでも強そうな事には変わりなさそうな魔物達だったが、シンゴはふと、三枚の依頼書のうちの一つに書いてあった注意書きに目を止めた。なんでも――、
「この、“オール・イン・ワン”の討伐って依頼書。注意書きに撃退でも可って書いてあるんだけど、これってどういう事だ?」
シンゴは狼のような魔物が描かれた依頼書をボードから剥がして手に取ると、それを覗きこむ形でアリス、カズ、イレナが。そして真上からシモアが覗きこんでくる。
シンゴは突然の窮屈さに依頼書を持ってしまった事を後悔するが、アリスとイレナが密着しているので良しとする。
するとイレナが「ああ、これはね――」と、複数描かれている狼――“オール・イン・ワン”の中で、一番大きく描かれている個体を指差す。
「“オール・イン・ワン”は、群れで行動する魔物なのよ。で、その中にボスとなる“特異種”がいるんだけど、その“特異種”さえ倒してしまえば、他の“オール・イン・ワン”達は自分達より強いボスを倒すほどの者がいるって分かった途端、その土地から離れる習性を持っているのよ」
「――つまり、そのボスさえ倒してしまえば、“撃退”って事になるわけだね?」
「そういう事!」
アリスの確認の言葉に頷くイレナ。
しかもボス単体では、他の依頼書の魔物よりも弱いらしい。
「“オール・イン・ワン”か……。なんかめっちゃカッコいい名前だけど、俺達の獲物は――君に決まりだ!!」
そう言うと、シンゴはシモアに向かって依頼書を突き出したのだった――。




