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虚飾のアリス ‐不死の少年と白黒の吸血鬼‐  作者: 竜馬
第2章 王都トランセル
31/214

第2章:17 『王女のお願い』

5000PV突破しました!

これからも『虚飾のアリス』をよろしくお願い致します!

「……王女様、足速すぎませんかね……?」


 結局一人も捕まえる事が出来なかったシンゴが、どんどん距離を引き離して走り去っていくユピアの後ろ姿を思い出し、げんなりした顔で呟いた。

 夕食も終わり、後片付けの際につまずいたアルネを助けようとしたシンゴが足を思いっきり踏まれるという一幕を挟みつつ、現在は食後の休憩を取っているところだ。


「そりゃそうよ! ユピ姉はあたしより足が速いのよ?」


「さすがです……!」


 まるで自分の事のように胸を張ってドヤ顔で答えるイレナ。

 そんなイレナがもたらしたユピアの意外な長所に、隣に座っていたカズが驚きつつもユピアに尊敬の眼差しを送っている。

 当のユピアは特段誇る様子もなく、どころかやんわりと首を横に振ると、


「そんな事はありませんよ。私も最初は足が遅かったんです。だから、どんどん先に走っていくイレナ達に追いつこうと、私なりに頑張って、頑張って、頑張っていたら、いつの間にかこんなに速く走れるようになっていたんですよ」


「そりゃあんた……あんなに一日中走り回ってたら、嫌でも速くなるってもんさね。後の差は、育ちの差さね」


 そう言うと、アネラスはチラリとイレナの胸部に視線をやる。そして「ふ――」と鼻で笑った。


「ちょっとマザー!? いくらなんでもそれはないんじゃない!?」


 アネラスに鼻で笑われたイレナは、バンっと机に手を付くと勢いよく立ち上がった。

 ちなみに、シンゴの前田直伝――バストリサーチによると、イレナはアリスといい勝負だ。しかし――


「ユピ姉と比べるのはあんまりよ! あたしは平均値のはずよ!」


 そう言うとイレナは、アネラスの肩を揉んでいるユピアの巨峰をずびしっと指差し、ともすれば全面戦争も辞さない構え。

 指差されたユピアは、このやり取りもいつもの事なのか、澄ました顔でアネラスの肩を肘でグリグリしている。


「あ、あ〜そこそこ……。ったく、イレナもユピアを見習いな。こういうところで差が出てくるんだよ。貧乳から脱したいなら、ユピアの爪の垢でも煎じて飲みな――」


 アネラスはそう言って、後ろのユピアを親指で指し示す。

 しかしイレナも引く気はないらしく、「なんですって――!?」と喧嘩腰になるが――


「双方そこまで――ッ!!!!」


 大声でこの不毛な喧嘩に待ったをかけたのは、あろうことか途中まで女子のおっぱいトークはすばらしい!(ババアは除外)と、カズと共にホクホクしていたシンゴだった。

 当然、皆が驚きを顕にするなか、一番の驚きを示したのは今しがたシンゴと盛り上がっていたカズだった。


「オイオイ、このタイミングで待ったかけるなんて……お前、死ぬのか?」


「そこは天変地異を心配しろよ!? ってかそれもすんな!」


 シンゴは「――ったく」と嘆息すると、ジロリとアネラスを睨み付ける。

 一方、睨まれたアネラスは片眉を上げ、不審そうにシンゴを見ている。そんなアネラスに、シンゴは一言――。


「謝ってくれ……」


「…………アンタ……女だったのかい?」


「ちっげえよ!? 何故そうなったし!」


 大変な誤解を生んでしまったようだが、当然シンゴは歴とした男で、もちろん女体化願望があるわけでもない。――いや、ちょっと興味本位でなってみたい気もするが、今はどうでもいいことだ。


「なら、誰に謝れってんだい? まさか、イレナに――なんて事……言わないだろうさね?」


 シンゴの態度に、アネラスが不信感を隠そうともせず睨み付けてくる。

 めちゃくちゃ怖いが、ここで引いては男が廃る。それに、“彼女”にも示しがつかない。――そう、アネラスが真に謝るべき相手とは――


「――これ以上、アリスの心を抉るのはやめてあげてくれ……!」


「――――は?」


 絞り出すように発したシンゴの言葉の中にあった、予想外の少女の名前にアネラスは気の抜けた声を出すが、実際にアリスの方に視線をやると、その表情が引きつった。


「……“私”はまだ成長期だもーん。今は貧乳でも、可能性はあるもーん」


 アリスは机に突っ伏して、人差し指で『貧』という漢字を延々と書き続けていた。さらには、一人称の「ボク」が「私」に変化している。これは、アリスが精神的に不安定な時に見られる症状だ。


 どうやらアリスは、先ほどのアネラスがイレナに対して放った「貧乳」という部分を聞いて、イレナ=アリス、イレナ=貧乳、アリス=貧乳と計算した様子。

 隣に座っていたシンゴが、横から聞こえたゴン――という音を偶然拾って、このアリスの状態に気が付いたのだ。


 シンゴは悲しげな顔でアリスを見て、次いでアネラスに振り向くと、


「アネラスさん――ごめんは?」


「――――すまん」


 アネラスは素直に頭を下げたのだった――。



――――――――――――――――――――



「そういやアネラスさん……俺らの宿の件、進捗の方はどんな塩梅で?」


 ようやくアリスが本調子に戻ってきたところで、シンゴはかねてからアネラスに一任するという形を取っていた宿について、現状どうなっているのかと質問した。しかし、アネラスから返ってきた反応はというと――、


「は? 宿?」


 頭に疑問符を浮かべて、首を傾げるという反応だった。

 これにはさすがにシンゴも――


「うおおおおい!? 宿の件は任せてたじゃん! あんたから任せろって言ってきたんじゃん!! それともあれか? そろそろボケが始まってんのか? このババア!!」


「ババアとは失敬さね! ――それに心配せんでも、ユピアをちゃんと送り届けてきたら宿の件は話してやるさね。だからほれ、行った行った!」


「ぐっ……信用ならねえ……!」


 シッシッ――とされたシンゴは、タダ飯喰らいの上にタダで宿泊をしている分、これ以上は強く出る事が出来ず、握りしめた拳に込めた力のやり場に窮する。

 しかし、どうにかダイヤモンドの精神でアネラスに殴りかかるのだけは自制し、ため息と共に脱力する。


 そして、ダイヤモンドって堅いけど何か脆いんだっけ?などと、どうでもいい事を考えていると、支度の済んだユピアが上階から下りてくるのが見えた。

 ユピアの姿を確認したカズ、アリス、イレナの三人が、それぞれ椅子から立ち上がる。


 ユピアの見送りは、今しがた立ち上がった三人にシンゴを加えた四人で行われる。

 人数的にも少なくて丁度良く、さらにはそれぞれの役割として、先導役ともしもの時の護衛を兼任する形でイレナ。さらに護衛の層を厚くするという名目で、イレナの目が届かない範囲を担当するカズとアリス。そして最後にシンゴは――


「あれ!? 俺の役目なくね!?」


 道も分からない。戦えない。完全に足手まといな自分に、シンゴは驚愕の声を上げる。しかし、そんなシンゴにアリスは首を振ると、


「そんな事ないよ。シンゴがいてくれるだけでもしもの時、ユピアを逃がす事が出来る可能性がグンと上がるんだ」


「それって俺、完全に囮にされる流れだよな!?」


「ほら、くっちゃべってねぇでさっさと行くぞ。ユピア様が待ってんじゃねぇか」


「ユピアで構いませんよ?」


 嫌がるシンゴの襟をカズががしっと掴むと、そのまま引きずるようにして玄関口まで連行する。


「ちょっ!? 待って! 俺は囮なんか嫌だからな!? 違うって言って!? ねえ!? 嫌だ!! 俺はここにのこ――」


 ――バタン!


「……………………」


 アネラスはシンゴが消えていったドアを無言で数秒見つめると、おもむろに空のコップを近くに立っていたコネリアに差し出す。


「……コネリア、お茶」


「はい、ただいま」


 淹れてもらったお茶に一口つけて、ほっと息を吐いたのだった。



――――――――――――――――――――



 シンゴは修道院から借りてきたフード付きの外套に身を包み、フードで頭をすっぽりと覆っている。他の四人も同じような感じだ。

 先頭にイレナ。少し距離を置いて真ん中にユピアとシンゴ。さらに後方には、距離を空けてカズとアリスが続いている。


 距離を空けているのは、もしもの時に身動きが取りやすいようにという意味の他に、少しでも索敵範囲を広げる目的もある。

 そして、もしもの時は囮にされかねないという恐怖と戦っていたシンゴに、隣を歩いていたユピアが距離を詰めてきた。


「――?」


 シンゴは「何だ?」と思いつつ、肩が触れ合う程の距離に近付いてきたユピアに視線だけ向ける。

 なにやら後ろから唸り声が聞こえてくるが、アリスが「どうどう――」と言って宥めているので、おそらくカズだろう。


 ユピアはフードの隙間から碧眼を覗かせ、シンゴを見上げると、


「――シンゴさんは、イレナの事をどう思っていますか?」


 そんな突飛な事を問いかけてきた。

 平素なら大声でまずツッコミを入れている場面だが、今はなるべく大声を出さないように歩いているという状況的な理由と、ユピアのその真剣な眼差しを受けて、シンゴはこれが真面目な話だと判断する。


 そして、ユピアがシンゴに近付いてきたのは、これから話す内容がなるべくアリス達に聞かれたくない事であるというのも、なんとなくではあるが察する事が出来た。でなければ、わざわざ距離を詰めて来て小声で話したりなんかしないだろう。


 さらに、シンゴとユピアの二人から前後の三人は距離を空けて歩いている事も、内緒話には打ってつけのシチュエーションというわけだ。

 ――と、そんな事を考えている間にも、シンゴはユピアの先ほどの質問――イレナをどう思っているかという事についても考える。


 ここで変に嘘をついたとしても、シンゴには何もメリットはない。なので、シンゴはユピアの質問に対して正直に答える事にした。――つまり、自分がイレナの事をどう思っているのかを。


「――第一印象では、明るくて元気な――そう、太陽みたいな女の子だなって思った。基本笑ってるし、前向きだし、馬鹿なとこもあるけど、優しい奴だと思う。……悩み事なんてないだろうなって性格してるって思ったし、事実そんな感じだろ? まだ会って時間は経ってないけど、俺の中であいつは強烈な存在として刻まれてるよ。……あと、人の深い所にも土足でズカズカ踏み込んでくる奴ってのも追加。……こんなんでいいか?」


 柄にもない事を熱く語ってしまい、シンゴは若干気恥ずかしさを感じながら、ぶっきらぼうに話を打ち切る。そして、チラリとユピアを窺い見てみると、シンゴの話の内容を噛みしめるように目を閉じていた。


 やがてその長いまつ毛を震わせながら目を開けると、視線を前方に歩いているイレナに向ける。そのイレナを見つめるユピアの表情はフードに隠れて全ては分からないが、シンゴには妹を優しく見守る姉のような、どこか温かさを感じられる表情に感じられた。


 そんなユピアの横顔をシンゴが見惚れるように眺めていると、こちらを振り向いたユピアと視線がぶつかった。

 ユピアは優しく微笑むと、


「ありがとうございます。シンゴさんは、イレナの事をしっかり見てくれているのですね――」


「……そんな事ねえよ。ただ、あいつの場合はインパクトが強くて、記憶に残りやすいんだよ。――あと単純で分かりやすい」


「ふふっ、確かにあの子はそんなところがありますしね……。それに、シンゴさんが言った通り、いつも笑顔で明るい――まるで太陽みたいな子。……だけど、あの子も悩みや不安が全くないという事はないはずなんです……」


 ユピアはそう言うと、再びイレナに視線を向ける。しかし、イレナを見つめるユピアの表情は、先ほどに比べて少し――悲しそうだった。

 そして、その視線を隣のシンゴに戻すと、ユピアはどこか頼るような目をして、


「お願いします、シンゴさん。あの子の――イレナの弱い部分を見つけてあげてください」


「弱い部分って言われても……」


 ユピアのお願いに、シンゴも前を歩くイレナの後ろ姿に視線を向ける。シンゴとユピアと同じ色をしたツインテールをひょこひょこ揺らして堂々と歩くその姿からは、『弱さ』といったマイナスな印象は一切見つけられない。

 そんなシンゴの心中を察してか、隣のユピアが同調するような言葉を発する。


「確かに、あの子は『弱さ』とは無縁です。――ですが、そんなはずはないのです。あの子は孤児達の中では上から二番目。あの子達のお姉さんです。そして、そんな彼女を私は幼いころから知っています。……でも、あの子が泣いてるところを、一度も見た事がないんです……」


 そう言って視線を落とすユピアを見ながら、シンゴはポツリと呟くように口を開く。


「どうして……俺なんだ? その役目、ユピアじゃ駄目なのか?」


 シンゴは、イレナと出会ってまだ一週間も経っていないのだ。付き合いで言えばユピアの方が断然長く、より彼女の事を知っているはずなのだ。いや、そもそもユピアにしてもそうだ。シンゴとの付き合いはイレナよりも短い。そんな得体の知れない男に託していい事ではないと思う。


 ユピアはシンゴの問いかけに、悲しそうに視線を落とす。


「……私では駄目なのです。私では、あの子の深い部分に踏み込む事が出来ない。……本当は私がやりたい。でも、私では駄目なのです。私では……」


「…………なら……尚の事どうして俺なんだ?」


 シンゴの問いかけに、ユピアは「それは……」と数秒考える素振りを見せるが、やがて納得いく答えを見つけたのか、一つ頷くとシンゴと目を合わせる。


「女の勘――ですかね……」


「は、はあ?」


 理由としては、この上なく説得力の欠ける回答である。シンゴの反応も当然だろう。しかし、ユピアはその表情をいたずらっぽくさせると、


「あら、女の勘は結構当たりますよ? 特に私は、ここぞという時の勘が百発百中なのです! ――ですから、私はもう、この勘に頼るしかないのです。――お願いです、シンゴさん。あの子の異常性はもう見ていられません。このままでは、絶対にどこかで反動がきます。そうなってしまう前に……どうか、あの子を本心から泣かせてあげてください。お願いします……」


「…………やれるだけやってみる」


 シンゴがこの世界ですべきことに、イレナを泣かせる事が加わった――。



――――――――――――――――――――



 シンゴ達が目指している王城は、この都市の北側に位置する。

 本来、何も知らないままのシンゴ達が王城に向かおうとすれば、倍以上の時間を要していただろう。しかし、複雑に入り組んだ迷路のような路地裏を通る事により、かなりの時間短縮をする事ができた。だが、このショートカットは路地裏を遊び場とし、そのほとんどを網羅しているイレナがいてこその芸当であって、本来なら道に迷い、余計に時間を食ってしまうというのが普通だ。


「――すっげえな……」


「大きいね……」


「壮観の一言だな……」


 王城を初めて目にするシンゴ、アリス、カズの三人が、闇夜にうっすらと浮かび上がる王城の巨大なシルエットに、各々似たような反応を見せる。

 現在、迷路を抜けたシンゴ達は、王城を遠目に見る事ができる少し離れた場所にいる。というのも、こんな時間に王城に近付くのは当然ながら怪しまれるに決まっており、さらに王女を連れてとなれば、見つかれば少なくない悶着が起こるのは必然と言えよう。


 しかし幸いと言っていいのか分からないが、ユピアは脱走の常習犯らしく、いくつもの抜け道を知っているらしい。そして今回は、その内の一つを使って城内部に帰るとの事。

 シンゴ達のいる場所は、その抜け道に一番近い所であるという。そしてそれは、ここで王女様とはお別れだという事を示唆していた。


「みなさん、本日は私の身勝手な行動に巻き込んでしまい、大変申し訳ありません。おかげで、こうして無事に城に戻ってくる事ができました。――この恩は、そう遠くないうちにお返ししたいと思います」


 前に進み出て振り返ったユピアが、頭を下げながらそのような事を言ってきた。


「とんでもございません! ユピア様の無事が何よりのご恩! カルド・フレイズ、その賛辞のお言葉だけで感激の極みです!!」


「……カズ。お前その性格いちいち変わるのやめろよ。なんかキモいわ……」


「「同感」」


「お、お前ら……!」


 シンゴが半眼を向けながら発したカズへの正直な言葉という名の暴力に、アリスとイレナもシンゴと同じような表情で同意する。

 そんな様子を、ユピアは口に手を当ててクスクス笑う。改めて見てみると、笑い方も上品だ。


「――ま、カズはトチ狂った事言ってるけど、俺は期待してるぜ? 王族から貰う見返りなんて、考えただけで涎が止まらん!」


「シンゴ……」


「あんたも大概よね……」


 アリスとイレナから諦めたようなため息が聞こえてくるが、シンゴは意識して黙殺する。

 するとユピアが、「そうですね……」とシンゴの言葉を受け、なにやら検討しはじめた様子。

 やがて、満足したように頷くと、「なら、こういうのはどうでしょう――」と言って可愛らしく首を傾げる。


「みなさんを、王城にお招きする事に致しましょう! ええ、我ながら名案です!!」


「マジっすか!?」


「わあ……それはボクも楽しみだな。――でも、ボク達みたいなのを招いたりして大丈夫なのかい?」


「もちろんです。これでも一応、次期国王候補という事になっておりますので、王位に興味なくても使えるのなら使っていきますよ? 私」


「……それっていわゆる、職権乱用なんじゃ……」


 うふふ――と笑う、意外と腹黒い王女様に、イレナを除いた面々が渋い顔をする。


「――さあ、そろそろ私は行かなければなりません。名残惜しいですが、そう遠くないうちに会えるのを励みに、私も色々がんばりたいと思います」


「ああ、招待……楽しみにしてるぜ」


 シンゴの微笑を湛えた返答を受けたユピアは、シンゴにしか分からない程度に思わしげな視線を向けてくる。おそらく、先ほどのイレナの件だろう。

 シンゴはユピアの視線に頷くでもなく、苦笑を返すに留めておく。


 ユピアはそんなシンゴの反応に対し、僅かに目を閉じると、次にイレナに視線を向ける。


「――イレナ。修道院の人達にも改めてお礼を言っておいて? ……そして、シンゴさん達はいい人よ。あなたなら“友達”になれるはず――頑張ってね」


「――? もうあたしは友達だと思ってるけど?」


 しかしユピアは、そんなイレナの返答に優しく微笑を返すだけだ。――やがてユピアは、後ろ髪を引かれるように最後までシンゴ達の方をチラチラ見ながら、王都の闇の中へと消えていった。


 ユピアの消えていった闇の奥をしばらく無言で見ていると、やがてイレナが「よし!」と言って腰に手を当て、無邪気な笑顔を覗かせると、


「あたし達も帰りますか!」


 と言うと、シンゴ達の返事も待たずにさっさと歩きだす。

 「はやくー!」と言うイレナの後を、慌ててカズとアリスが追う。その後にシンゴも続きながら、再び迷路に入っていくイレナの背中に視線を注ぐのだった――。


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