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虚飾のアリス ‐不死の少年と白黒の吸血鬼‐  作者: 竜馬
第4章 とある兄妹の救済
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第4章:53 『契りを求める【声】』

「――きっと何か、あたし達にも力になれる事があるはずよ!」


「――――」


 ――果たして、このセリフを聞くのもこれで何度目だろうか。


 窓の縁に預けていた肘を離し、ゆっくりと振り返る。木製の椅子に腰掛け、ひざに手を置きながら身を乗り出す少女の真剣な眼差しと視線がぶつかった。

 長い茶髪を二つのツインテールにまとめ、碧い瞳でこちらを見据えてくる少女――イレナ・バレンシールだ。


 城から帰って来たあと、薬の副作用で丸一日寝込んでいた彼女だったが、その翌日には目覚めて動き回り、今ではすっかり全快した様子だ。

 そんなイレナの無言の眼差しを受け、青年――カルド・フレイズは、その短く刈り込まれたオレンジの頭髪に指を掻き入れると、小さな嘆息を一つ。


「ダメだ」


「ダメって……今日でもう五日目なのよ!? これだけ待っても来ないって事は、城から脱出できずに苦戦してるって事じゃないの!? だったら、あたし達が協力してあげなきゃじゃない! それが、仲間ってもんでしょ!?」


 提案を却下され、更に前のめりとなったイレナが一気にまくし立ててくる。

 今しがたイレナが言ったように、吸血鬼との約束である一週間という期日も、今日でその五日目を迎えてしまっていた。

 それだと言うのに、一向にシンゴ達が城から出てくる気配はない。イレナの語る通り、相当に苦戦しているのであろう事は想像に難くなかった。

 だとしても――、


「何度でも言うぞ。ダメなものはダメだ」


「――っ!」


 重ねられるカズの否定の言葉に、イレナの眦が吊り上がる。

 続けて開かれた口から放たれるのであろう罵詈雑言――しかしそんなカズの予想を裏切り、イレナは何も言葉を紡ぐ事無く口を閉ざしてしまった。

 訝しげに眉を寄せるカズの眼前で、眉尻を下げたイレナが視線を足元に落とす。


「……アリス、城に残るって言ってた」


「……ああ」


 先ほどまでの苛烈な勢いは鳴りを潜め、弱々しい口調で語られたイレナのとある少女に対する言及。それを受け、カズも同じようなトーンで応じつつ頷いた。

 思い出されるのは、無理に取り繕った笑みを浮かべ、見え見えの嘘を吐き出す、アリス・リーベとのやり取りの一幕だ。


「――でも、あれが本心じゃないって事くらい、あたしでも分かるわ」


 その芯の通った声に顔を上げれば、俯いていたイレナが前を向いていた。

 こちらに向けられたその瞳からは、今しがた垣間見せた弱気は微塵も感じられない。力強く、そして真っ直ぐにカズを見据えていた。


「アリスに何があったのかは分からない。でも、あの城に残るのが間違いだって事は分かる。だったら、答えは簡単よ。――何がなんでも、城から連れ出すのよ!」


「……おい、待て。まさかお前、城に行くつもりか?」


「あったりまえじゃない! 城の一つや二つ、あっという間に侵入して、三人ともこのあたしが力づくで連れ出して来てやるわ!」


「――――」


 固く拳を握り、鼻息荒く意気込むイレナ。そんな彼女の、よく言えば真っ直ぐ前向きで、悪く言えば無謀で考えなしの宣言を受け、カズは眩しそうに目を細めた。

 しかしそれも一瞬の事だ。膝に両肘を乗せ、そのまま深く項垂れるような恰好で、カズは鼻から静かに息を吐き出す。


「言っておくが、アイツらを城から連れ出す時は、『ゼロ・シフト』は一度として使っちゃなんねぇんだぞ?」


「……え? な、なんでよ!?」


「あのなぁ……オレが一体何の為にこの一種間をもぎ取ったと思ってやがる?」


 寝耳に水といった様子で目を丸くするイレナに、カズは頭痛を覚えて目元を揉みながら、何度目とも知れぬ深いため息を吐いた。


「確かに、お前の『ゼロ・シフト』なら、アイツら全員を城の外に連れ出す事は可能だろうよ。だがな、その後に控えてる『選別の境界』はどうするつもりだ?」


「あ……」


「いくら体力バカのお前でも、自分自身を含めて四人も飛ばした後に、連続でもう一度飛ぶってのは無理だ。ましてや、抱える人数はお前とオレ、そしてシンゴの妹の三人……お前自身、これが無茶な話だって事くらい分かるだろ?」


「う、うぅぅ……」


 カズの正論に反論が何一つ浮かんでこないらしく、イレナが悔しげな呻き声を漏らしながら、その肩を縮こまらせるようにして俯いていく。

 その様子に胸が痛み、カズは微かに眉を顰める。だがそれでも、肝心な場面以外でイレナに『ゼロ・シフト』を使用させる訳にはいかない。そうなってしまえば、最悪の結末が約束されてしまうのだから。


「――いいか? お前がいなけりゃ、シンゴの妹はここから出られねぇんだ。この一週間って時間は、お前をここに留まらせておく為の時間なんだよ」


「…………」


「頼むから、聞き分けてくれ。オレ達に出来るのは、待つ事だけなんだよ」


「……ちょっと、外の空気、吸ってくる」


 そう言い残すと、イレナは静かに部屋から退出して行った。

 その背中を見送り、カズは鬱屈とした深いため息をこぼすと、そこでハッとなり、次には自嘲気味の苦笑を漏らしていた。


「やべぇな……ここに来てから、ため息が癖になっちまってやがる……」


 呟き、ジッと自分の手の平に視線を落としてから、部屋の壁に立てかけてある大剣――フレイズ家に伝わる家宝である、錆に覆い尽くされた大剣に目を向ける。

 手を伸ばして柄を握り、自分の膝の上に持ってくる。ズシリと重い感触を腿の上に感じながら、カズはその錆び付いた刀身をそっと撫で付けた。


「オレに、もっと力がありゃ……」


 スッと目を細め、無意識にそう独り言ちる。気付けばカズは、錆び付いた刀身を力強く鷲掴むようにして握り締めていた。


「いつッ……!」


 次の瞬間、指先に鋭い痛みが走り、慌てて刀身から手を離す。

 見てみれば、中指の腹に薄っすらと一筋の赤い線が走っており、そこから静かに血が指の側面を滑り落ちていた。

 錆びているとは言え、仮にも刃物だ。今のような扱いをすれば、こうなるのは必然である。もっとも、こんな失敗は普段の自分なら絶対にしないだろうが。


「こりゃ、ご先祖様からの叱責かもしれねぇな……」


 疼くような指先の痛みに思わず苦笑が漏れてしまう。

 今しがた叱責と言いはしたが、こんな体たらくでは、ご先祖様のほとんどは呆れたように笑っているのではないだろうか。


「――いけねッ」


 そんな事を考えている内に、垂れた血が大事な家宝の刀身に落ちてしまった。

 慌てて袖で刀身を拭う。こう見えてカズは綺麗好きで、武器の手入れも欠かした事はない。この錆だけはどうしても落ちなかったが、それでもこれ以上汚してしまったら、それこそご先祖様に顔向けが――。


【――汝、欲するか】


「――あ?」


 不意に、頭の中に【声】が響いた。それは老若男女、全ての声質が混ざりあったかのような、およそ人が発声できる類の声ではなく――。


「だ、誰だ!? どこにいやがる――っ!?」


【汝、欲する者ならば、差し出せ】


「欲する? 差し出す? いったい、何の話を――」


 立ち上がり、この【声】の主を探して周囲を見回していたカズは、そこでハッと息を呑み、おそるおそる自分の手元――錆び付いた大剣に視線を落とした。

 喉が干上がり、心臓が嫌なリズムを奏でる。乾いて張り付いた唇を引き剥がし、震えて掠れる声を絞り出した。


「まさか……コイツ、か?」


【――呼べ、我が真名を。契れ、汝に無価値なる祝福を与えん】


「ま、待て……は? いや、マジで待ちやがれ……!」


【差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ。差し出せ】


「――ッ!?」


 頭の中で、何かを求める【声】が無数に反響する。

 ゾッと、言いようのない悪寒が背筋を駆け上がってきて、カズは堪らず大剣を放り出そうとした。――が、ここで問題が起きる。


「手が、離れねぇ……!?」


 まるで何かで固定されているかのように、柄を握る右手の指が全く開かない。

 咄嗟に自由な方の手で無理やり引き剥がそうとするも、五指はがっちりと柄を掴んだままびくともしなかった。


【契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ。契ろうぞ】


「ざ、けんじゃねぇ……! 誰が、契るかよ……ッ!」


 得体の知れないものへの恐怖と不安、そしてこの状況からくる焦りと混乱に顔を歪めながらも、カズは【声】の求めをきっぱりと拒絶する。

 そして、そのままの状態で自分の荷物の下へ駆け寄ると、その中から片手で苦労しながら調理用の刃物を取り出した。


「はぁっ……ふぅっ……ッ!」


 このままこの剣を握り続けているのはまずい。そう本能が鳴らす警鐘に従い、カズは柄を握り締める方の手首に刃物を添えた。

 このまま手首を切り落とす事への躊躇と、剣を握り続ける事への忌避感に板挟みにされ、カズの動きがそこで止まる。


 全身から嫌な汗が吹き出し、激しい頭痛とめまいに視界がぐらつく。

 だが、一刻の猶予もない。得体の知れない悍ましい何かが、剣を握る手を通してカルド・フレイズの中へ侵食の手を伸ばそうとしているのが感じられるのだ。


「シンゴ、なら……っ!」


 失った手首が元通りになるかは分からないが、シンゴの持つあの炎翼の力ならば、手首を切断しても取り返しがつくのではないだろうか。

 ふとその可能性に行き着いたカズは、逡巡を振り払うように深く息を吐き出し、手首を切断しようと刃物を握る手に力を込め――、


「――え? 何やってんですか、カズさん!?」


「――!?」


 手首を切断するその寸前、響き渡った少年の驚愕する声にカズは振り向いた。

 開かれた扉から、こちらを丸くした目で見つめる少年がいる。くすんだ金髪を持ち、質素な衣服に身を包むのは、この家の本来の住人――ゴン・サウンドだ。


「お、オレに近寄るんじゃ――」


 駆け寄って来ようとするゴンに、カズは咄嗟に「近寄るな」と叫ぼうとした。しかしその言葉が途中で途切れる。理由は簡単だ。


「手が……」


 あれだけ苦労しても離れなかった手が、気が付けば剣の柄から離れていた。

 呆然と自由になった手の平に視線を落としていると、左手に持っていた調理用の刃物が横から伸びてきた手に奪い取られた。

 そちらを見てみれば、そこには奪い取った刃物を背に隠すゴンがいて。


「何を血迷ったのかは分かりませんけど……顔色、凄く悪いですよ?」


「あ、ああ……」


 何やら諭すような口ぶりで話し始めたゴンだったが、カズの真っ青な顔を見て、そのセリフが途中でカズを気遣うものへと変わる。

 それに生返事を返しながら、カズは床に落ちた家宝の大剣に目を向けた。

 先ほどの【声】は、今はもう聞こえない。おそるおそる大剣の柄に触れ、そっと持ち上げてみるも、特に何も起こる事はなかった。


「さっきのアレは、いったい……」


「えっと……ほんとに大丈夫ですか?」


「お、ああ……スマン。大丈夫だ。別にトチ狂った訳じゃねぇ。さっきのは……そう、アレだ。この大剣に隠されてる力を試そうとしただけだ」


「大剣の……ですか?」


「ああ。この大剣は我が家の家宝でな。主の身に危険が及ぶと秘められた力が解放されるらしいんだよ。まぁ、どうやらオレはまだ主と認めらてねぇらしい」


 心配してくるゴンに、カズは大剣を掲げて肩を竦めて見せる。咄嗟の言い訳にしては、なかなかに上出来ではないだろうか。

 ちらりとゴンを窺ってみれば、腑に落ちないような表情ながらも、「はぁ……そうなんですか」と一応の納得は示してくれた。


「それより、オレに何か用があったんじゃねぇのか?」


「え? ああ、そうでした! 実は、調味料を切らしてたのをすっかり忘れてまして、今からおれ、ちょっと仕入れに出ようと思ってたんです!」


 強引な話題転換にゴンが乗ってくれて、カズは内心でほっとする。

 現在、カズはサウンド家に身を寄せていた。無論、タダで泊めてもらっている訳ではない。働かざる者食うべからず、である。


「なんで、ちょっと申し訳ないんですが、夕飯の料理当番を変わっていただけないかなーと……」


「おう、そういう事なら任せろ。料理はオレの十八番だからな」


「ありがとうございます! おれも家事に関しちゃそれなりに自信があるんですけど、カズさんには負けますね。特に、料理に関しては完敗ですよ」


 そう言って、頭に手をやったゴンが「たはは」と笑う。

 このゴン・サウンドという少年、聞いた話によればまだ十三歳らしい。だと言うのに、この齢でカズも驚くほどの家事スキルを修めており、はっきり言ってどこに嫁がせても恥ずかしくないレベルだった。


「まぁ、姉がアレなら、自然と家事は身に付くだろうな」


「本人のやる気は十分なんですけどね。ただ、技量がそのやる気に追いついていないと言うか、周回遅れと言いますか……」


 げんなりと肩を落とすゴンに、カズも同情するように深く頷いた。

 ゴンの姉であるリン・サウンドが、ゴンの制止を振り切って家事に手を出し、結果として仕事を増やされたゴンが悲鳴を上げる場面は何度も目撃している。

 はっきり言って、リン・サウンドの家事能力は絶望的だった。


「まぁ、こっちのもう一人の居候の方も、似たり寄ったりだがな」


「いえいえ、イレナさんは料理が壊滅的にダメなだけで、他の家事はばっちりじゃないですか。うちの姉と比べれば全然マシですよ。交換して欲しいくらいです」


「壊滅的だとか、交換して欲しいだとか、意外と身も蓋もねぇ事をさらりと言う奴だな、オイ」


 ゴンのその歯に衣着せぬ物言いに、カズは苦笑しながら肩を竦めた。そしてその後、「あー、それとな」と頭を掻き回しながら繋げ、


「今の話は本人の前ではやめてやってくれや。アレで結構アイツ、自分の料理の腕前を気にしてるみてぇだからよ」


 旅の道中、修道院で家事はこなしていた、と言うイレナに料理を任せた事があったのだが、結果、アリスを除く全員が猛烈な腹痛に襲われてダウンした。

 ちなみに、イレナの料理を食べてもけろりとしていたアリスは、その理由を尋ねられると、「まあ、慣れているからね……」とどこか遠い目をしていた。

 過去に何かあったらしいようだが、アリスのその光を失った目を見て、それ以上深く追求出来ずに詳細は不明のままである。


「はは、さすがにおれもそこまで常識知らずじゃないですよ」


「そうか。ならいいんだ」


 頬を掻きながら笑って言うゴンに、カズも頷きながら微笑み返した。

 と、そこでゴンが「あ」と思い出したように声を上げ、


「話し込んでる場合じゃなかった! おれ、調味料の仕入れに行かなきゃ!」


「ちなみに、何を切らしてんだ?」


「塩です。とは言っても、夕飯分はちゃんと残ってますので安心して下さい」


「そりゃよかった。塩のねぇ料理なんざ、食う方も作る方も味っ気ねぇしな」


「はは、同感です」


 互いによく料理を作る者同士、共通の話題で軽口を交わしつつ外へ出る。

 既に日は傾き始めており、集落一帯が燃えるような朱色に染まりつつあった。


「ゴン。晩飯、何か希望はあるか?」


「んー、そうですね。じゃあ、カズさんの得意料理でお願いします」


「オレの得意料理か……よし、分かった。期待してろ!」


「はい!」


 腕を組み、ニッと口の端を曲げて笑うカズに元気のいい返事をして、ゴンは不足している塩を仕入れるべく出かけて行った。


「――――」


 その背中を見送ったカズは、しばらくその場で黙ったまま立ち尽くす。やがて、家の中には戻らず、その足を裏庭の方へと向けた。

 地中から顔を出した大きな石を削って作られた椅子に腰を下ろし、カズは膝に両肘を乗せて深く息を吐き出す。

 そして顔を上げれば、朱色に染まる広大な田畑が見渡せた。そしてその先、遠方に堂々とそびえ立つ『冥現山』のふもとに、大きな城が見えた。


 ――きっと、こうしている今も、シンゴは一人で戦っているのだろう。


 おそらくアリスは、シンゴに協力はしていない。

 たとえそれが本音でなくとも、アリスは城に残留すると宣言した。ああ見えて、地味に頑固なところがあるのだから困りものである。


 そしてシンゴの性格からして、妹を巻き込むような真似はしないはずだ。

 そうなると他に、あの城にシンゴが頼れる存在は一人もいない。必然的に、シンゴは城から抜け出す方法をたった一人で模索しなければならない、そんな状況に追い込まれているはずで――。


「オレに、力がありゃ……ッ」


 きつく奥歯を噛み締め、握り込んだ拳を震わせる。

 今すぐに走り出し、城に乗り込んでシンゴに力を貸してやりたい。だが、肝心の貸し与える力がカズにはない。むしろ足を引っ張ってしまう結果になるだろう。

 それが分かっているからこそ、カズはここから動けないでいる。

 そんな無力な自分が情けなくて、心底腹立たしい。そして何より、仲間の為に何もしてやれない事が、心の底から歯痒かった。


「……もしも」


 呟き、部屋には置いてこずに持ってきていた大剣を持ち上げる。

 剣先から刀身、鍔から柄にかけて錆に覆われたフレイズ家の家宝。あの時に聞こえた【声】が、本当にこの剣のものなのだとしたら――、


「もしも、叶うのなら……オレの望んだモノが手に入るのなら、オレは――」


「――んなシケたツラしてっと、せっかくの二枚目が台無しだぜ?」


「――っ!?」


 不意に横から掛けられた声に息を詰め、カズは慌てて振り向いた。

 そこに立っていたのは、くすんだ金髪を風に揺らし、動きやすさ重視で女性らしさ皆無の質素な衣服に身を包む少女――。


「――リン」


「おうよ」


 名を呼ばれたリン・サウンドは、少年のように快活な笑みで応じるのだった。


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