プロローグ
――――熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い
あまりの苦しさと熱で、自分の体が言うことを聞かない。
体中が脂汗でびっしょりになって、気持ち悪い。
そんなどうでもいいことに意識を割かなければ、気がどうにかなってしまいそうだった。
体がガタガタと震える。どうやら自分は痙攣しているらしい。
口から、血と吐瀉物の混ざった泡がとめどなく溢れ出る。
呼吸は浅く、ひゅうひゅうと音が鳴るが、聞いている耳は遠く――。
視界がぐらぐらと回る。
上下左右、自分がどこにいるのかが曖昧になってきた。
――――寒い、苦しい、熱い
先程までは燃えるような熱を発していた傷口だが、今はもうすでに痛みも、焼け付くような熱も感じられない。
――――寒い、嫌だ、寒い
少しずつ、視界が砂嵐に浸食されていく。
耳は、既に死んでいる。
何も――感じなくなった。
ここは、どこだろうか。
己という存在が希薄になっていき、もはや自己を認識することすら難しい。
――――寒い、寒い、怖い、寒い
腹に空いた穴から、全てが抜け落ちていくのが分かる。
刻一刻と失われる命。刻一刻と希薄になる自己。
薄れゆく意識の中、誰かの顔が頭をよぎるが、それが誰なのかもう分からない。
――――寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
理解した。
これが――『死』なのだと。
キサラギ・シンゴは――死んだ。
「キミを死なせはしない……絶対に!」