まずはお兄様から
お兄さまの日課の剣術の稽古が終わるやいなや私はお兄さまに歩み寄ってこう言い放った。
「王子顔すぎるはお兄さま…嘆かわしい」
「ははっ存在否定の次は容貌の批判か。どこまで否定さえたらいいのかな。だけどね、妹よ。自身も僕とうり二つの容姿をしていることに気が付いているのだろうか?僕を否定することは自信を否定するも同じだよ」
前世の記憶(妬み)を思い出してからというもの私はまずお兄様(王子)から、そのすぐ恋に落ちてしまう軽い思考を育てさせないように調教の日々を送るのであった。
「なにか大きな間違いをされているわ。お兄様と私では雲泥の差があるの」
「何の違いがあるっていうんだい?」
「だってお兄さまは王子王子しいのだけど、私はお姫様っぽいでしょう」
「……意味が分からないよ」
「だから、私のような金髪碧眼のお姫様は幸せルートが待っているの」
「…」
「お兄さまのような王子顔はほだされやすくて恋と錯覚しやすい安い王子顔なのよ」
「解せないよ、妹よ」
お兄様との容姿について会話なんて重要ではないのだ。今日の本題にうつらなくてわ!
「そんなことはともかく、今日はお兄さまに見せたいものがあるの」
お兄様が嫌そうに顔をしかめたがそんなの気にしてはいられない。
大義のためには兄でさえも踏み台にしていかなければならないのだ!!
それに結局のところお兄様は私に弱い。私の言うことにもいやいやながらも付き合ってくれるのだ。
「今日はいったいなんだっていうんだい?」
「とっても楽しい覗きみツアーにお兄様を招待したいの」
私がにっこりとほほ笑んで手を差し伸べるがお兄さまは胡乱気な視線を送ってくる。
「…覗きみツアーなんとどう考えたって悪いことにおもうのだけど」
「そんなことはございません!お兄さまの新たな知識、女性観念を考え直すきっかけになるでしょう」
「どう考えたっておかしいだろう!」
そんなこんなもありながらもお兄様はついてきてくださったのです。
「どうしてこんな子になってしまったんだ」と小さくつぶやきながらため息を掃かれていましたが無視です。
「まずはここです。女子のたまり場・お茶会です」
私たちは王城の中庭で行われている淑女たちのお茶会を植え込みから隠れて覗き見の最中です。
さぁ、お兄様楽しんでくださいな。
次回は1月8日更新です