No.4 驚いて
『怖っ!
なにこれ!?
悪夢か!?
うわっすっげ!』
彼の目の前に現れたのは、全長5mを越すだろう巨大な人。それもただの人ではない。足が体に対して短いのだ。1mあるかないかだ。長くてでっぶりと太い胴体の上に妙に愛嬌のある丸顔がちょこんとのっている。そして腕。自分の身長よりも長く蛇のように全てが筋肉で出来ているように見える。何かの動物の皮で作られたチョッキを直に羽織っている。それでも覆いきれず緑のザラザラとした胸や腹が見えている。下にはチョッキと同じ毛皮の短いズボンを履いている。此方は丁度良い大きさだ。その異様な姿を見て驚くなと言う方が無理な注文である。そしてその姿は知っていたのと違うが、
『トロールか?』
トロール。多くのゲームで接してきた魔物の名前。姿は大きな人に似ていて力が強いが頭は良くないという設定の多かったがこいつもそうなのだろうか?
彼がそう悩んでいる?間に彼を見ていたトロールが目を輝かしながら詰め寄り、甲高い声で。
「魔王様、復活なされたのですネ!
皆も気付いて此方に向かって来ているようですネ。
私が一番乗りですネ!」
『俺は景品か?
・・・まぁいい。
俺は魔王じゃないし此処は何処でお前は誰だ?』
「魔王様は魔王様ですネ。
此処は魔王様亡き後に造られた魔王城ですネ。
前回のような見つかりやすい所ではありませんし、防御力も格段に上がっていますネ。
私はトロール種の魔人ですネ。」
『律儀に質問に答えてくれるのは、いいが話を聞いてないのか?
・・・一回死んでる設定なのか。
死なない俺が死んだ夢。
どんな皮肉だよ。
そういや魔人?
普通のトロールってどんな姿なんだよ。
後、名前教えろよ。』
「魔王様、亡くなったのは一回ではなく百回以上ですネ。
普通のトロール種は多くの種類がいますのでどれを言えばいいか分かりませんネ。
唯一つ言える事は魔人だと頭が良いですネ。
言葉を使ったり何かを考えたりするトロール種はあまりいませんネ。
名前はありませんネ。」
『・・・え、俺弱っ!
何、勇者とか勇者とか勇者御一行とかにボッコボッコにされてんの!?
うわっショックー。
駄目駄目な夢設定だな、現実と夢の差が激しいー。
そういや夢って願望を表すとか何とか聞いたことがあるような。
・・・俺Mだったのか。
衝撃の事実だな!
・・・今度この設定の奴作ろうかな、面白そうだし。
そしてトロールの設定について。
あー、そうだよな。
トロールだもんな。
あのトロールだもんな。』
彼が呆れているように言う。だがこの話を聞いて一つの話が浮かんできた。
封印されていた最弱な魔王になった夢。
普通は勇者だろ、勇者になって魔物狩りだろ。そういえば俺どんな格好してんだ?こいつに聞けば答えてくれるだろう、律儀な奴みたいだから。
『おい、トロールの魔人。
俺は今どんな姿だ?』




