No.3 報告されて
「勇者の様子はどうだ?
口伝之巫女サマタ殿。」
大きな窓がその部屋に外の光を放ち居心地いい空間を作っている。そして部屋には質素ではあるがそれでも最高の品だと分かる服を着た男は一目で高価な物だと分かる机を挟んで向こう側の女に聞いた。
「はい、カルテラス王様。
勇者様は体は健康そのものでした。
こちらの言葉に反応も理解もできているのは確かです。
ですが、勇者様は状態異常持ちである事が分かりましたが残念ながらどういう物かまでは分かりませんでした。
そのせいか言葉を発したり、自分から何かをすること、魔力の波動も感じられませんでした。
また、加護、スキル、称号どれもありませんでした。
正確に言うと私は視れませんでした。
そして予想通りレベルは0でした。」
勇者の容態を聞いた王冠をかぶった壮年の男、カルテラス・モッド・カトリシアはカトリシア王国の王である。
昨日勇者を召喚し勇者に声をかけたのだが無視。驚いているのだろうかともう一度声を掛けたのだが結果は同じ。それどころか身動き一つしないのを不安に思い、一緒に召喚をしていた口伝之巫女に勇者を任せていたのだ。
口伝之巫女と呼ばれた女は、ウォーラタ・サマタ。創世教の巫女であり、創造神ルクマスの声を何処でも聞くことができる特別な巫女でもある。
また、彼女は他の者の情報を見ることのできる【ステータス】が使える。
これはまだ習得条件が不明で生まれつき持っている者を除けば神しか使えない魔法、神之御技とまで言われているとても珍しい魔法なのである。本来なら自分の情報を見る魔法なのだが他の者や物にも使えることが分かり、色々な場所で重宝される便利な魔法の一つである。
余談だが生まれつき魔法やスキルなど特別な技術を持っている者は2人に1人はいるのでそう珍しくはない。親や先祖の持っていた
物を得たりする。しかし時には【ステータス】のように神にしか使えない物や全く新しい物まででてくる。何を持って生まれてくるかは神さえも予測ができないことなのだ。
彼女はこの魔法を使い相手の体の状態を知り、適当な回復薬を作る事を得意としているのだ。勇者の様子がおかしいのは病気や状態異常だと思ったカルテラス王は近くに居たそれらに詳しいウォーラタに任せたのである。
「レベルは想定内だがやはり状態異常か、
それも口伝之巫女サマタ殿も分からぬ物だと未知の物か?
【ステルス】持ちであれば【ステータス】では視れないだろうが・・・。
それに魔力の波動がない?
全く無いのか?
それらは召喚の儀と関係があるのか?
ルクマス様から何か御言葉があったか?」
此処でカルテラス王が魔力の波動が無い事に疑問を持ったのは訳がある。
魔力とは魔法を使う為のエネルギーである他に感情や心と深く関係していると言われており、感情の変化や心の動きと共に体からにじみ出てくる魔力の質と量が決まると言われている。訓練をすればある程度操る事が出来、一流の魔導師や魔力が高い者は相手の魔力の波動から心を読むことも出来るという。だがそれが全く無いということは心が無いと言うのと同義である。特別な訓練、諜報員のような者達が受ける訓練をやった者でも魔力の波動を普通の人が感じ取れない程度にはできるが目の前の魔力の高い巫女が感じ取れなかったというのはあり得ないことなのだ。
だが王は心の隅で納得もしていた。少女の何の感情もない人形のような目をした者が心を持っている筈が無いと思っていたからである。
余談であるが冷酷な人には
「魔力の波動が無い人」
と揶揄される。
「いいえ、王様。
何も分かっておりません。
ただ主が勇者様とその仲間となる者達を創造の間にお連れするようにと御言葉を賜わりました。」
「・・・そうか。
では勇者の仲間となる者達を呼ばせておこう。
口伝之巫女サマタ殿は勇者を任せた。」
「はい。
では主からの祝福を。」
ウォーラタが一礼をして部屋から出て行った。一人になったカルテラス王は小さく溜息をついた。
〜 〜 〜 〜
一人のメイドが部屋の前で深呼吸する。彼女の名はメラニ。カルテラス王からある四人を連れてくるよう命令されたメイドである。
目の前の部屋には勇者様のお供をする方がいらっしゃる。落ち着け、落ち着け私!粗相のないよう気をつけろ!静かにドアを開け皆様に王様からの言伝を伝えて握手して抱きしめてもらう!さぁ、やるぞ!ドアを叩くぞ!
コンコンッ
「失礼します!
王様から皆様を創造の間にお連れするようにと言われました!
入っても宜しいですか!」
メイドの運命(笑)やいかに!
【アルカナ】情報
口伝之巫女の読み方は くちつたいのみこ
です。
創世教はカトリシア王国の国教です。
口伝之巫女はウォーラタを含めて4人。




