上映して
『ハッ!!
死ね!
神の名の元で朽ち果てろ!
男はそう叫びながら背中から剣を刺し、私の心臓を貫いた。
私の胸から血に塗れた剣先が、剣に突き刺さっている私の心臓が、私の体から溢れている血が、肉が、脂肪が、骨が・・・。
呪われた魔神の生まれ変わりめ!
これが神の力だ!
それがまるで他人の事の様に感じる。
痛い筈なのに、致命傷の筈なのに、私は何も感じられない。
死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ネ、死ネ、死ネ、死ネ、シネ、シネ、シネ、シネ、シネ、シネシネシネシネシネシネ・・・
倒れた私に男は何度も、何度も、執拗に私に攻撃をする。
四肢は切り落とされ、内臓はくり抜かれ、原型さえ留めていない私は、それでも意識はまだある。
この化け物め!
こんな姿になってもまだ死なないのか!
お前さえ死ねば、神はこの世界に帰ってくるのだ!
死ね、魔神、死ね、蒼眼の悪魔、死ね、裏切りの罪人・・・
体から感覚が無くなっていく。
これが死なのか。
男はまだ私に罵詈雑言を吐いている。
私を救ったばかりに悪魔と呼ばれた者達も。
私と共に生きてきた者達も。
私を助けてくれた仲間も。
もうここにはいない。
私に関わったばかりに・・・。
・・・意識が・・途切れて・・・い・く。
・・・しに・く・・た。
・・・も・・と・・生き・た・・。』
そして体を操り男も女も一つの塊にして俺の中に入れる。
「ア゛ン゛ばわ゛る゛ぐな゛い゛の゛に゛〜。」
「なんでだよ!
なんで・・・なんでアンが殺されるんだよ!
みんなを助けてるのはアンじゃないか!」
妖精は号泣して犬は怒鳴っているな。
黒ローブも遠くで震えてるし、ありゃぁ泣いてるな。
「グズ、グズ。
クロシキ〜、アンが〜、アンが〜。」
「ムー。
|ム、ムームム《こんな、こんなことって》。」
「・・・せっかく・・・敵を・・・倒したのに・・・報われない。」
「アンが、助けた人から殺されるなんて。
どこまでこの神はアンを苦しめれば気がすむ訳ですか!?」
トレニア、アズラーム、クァルド、理者の順の評価だ。
何をしてるかだって?
簡単に言えば長編影アニメを作ったんだよ。
犬共に何度も俺の説明をしてやってるのに少しも理解しねーからどうにか出来ないか考えた訳だ。
考えた末に分かった。
こいつらは子供だ、という事に。
犬は馬鹿で理解出来てない。
妖精はまおー、まおーと繰り返し。
黒ローブはずっとこっちを睨み。
オーガは話を聞かない。
そして子供に何かを分かりやすく伝えるにはアレしかない。
お話だ。
胸がドキドキワクワクして続きが気になってしょうがないやつだ。
そしてここには俺がいる。
数多のマンガ・ラノベ・アニメ・ゲームを所持し、読破し、聴き、全クリしたスペシャリストであるこの俺が。
問題は犬達が俺の話を聞かないってことだったんだが、今の自分の体を思い浮かべて動けたら出来たのになと思った瞬間に理者から「出来ますよ?」と言われた。
聞いた時は唖然としたね。
存在しない部分は意識しても動かせない。
例えば尻尾の無いのに尻尾を振ろうと意識する、エラの無いのにエラ呼吸をしようと意識する、第三の手を伸ばそうと意識する。
どれも意識しても出来ないことだ。
同じように俺には人のような体は無い。
ならどう意識すれば動けるのか?
答えは作らなければならなかった。
形を意識してようやく姿ができるのだ。
つまり木のようなものである。
加工しなければただの木だ。
使えるように切って削って焼いて塗って色々手を加えてようやく使えるようになる。
人の動きを出来ないのはこれが原因だった。
手足を形成していないから動かせないのだ。
試しに腕の形を意識していると左腕のみの形になった。
腕の付け根から指先までちゃんとある。
・・・左腕だけ中に浮いてあるってホラーだな。
作ったあとは自由に動かせた。
拳を作ったり力こぶを作ったり指を伸ばしたり色々だ。
最後の奴は興味本位だったんだができた。
色は靄から変わらずの黒だがな。
そしてその場で作った即興の長編影アニメを立体で始めた。
妖精と同じくらいの大きさの人が群れをなして向かってくるのに気づいた犬が後ろに飛び退いた。
攻撃じゃなかったんが近くで見るより適度に離れていた方が見やすいだろう。
理者達も俺が何をするのか気になったのか小さい人を見ている。
さー、演出俺、監督俺、創作者俺の影アニメの始まり、始まり!
内容?
まー、なんだ、その色々省くが説明しよう。
主人公アンジェリーデは神に見初められた。
アンジェリーデは神の告白を断った。
神はアンジェリーデに宝石、不老不死の体、魔法の道具を与えアンジェリーデの気を惹こうとした。
ただし、宝石を作るのに山を幾つも、不老不死の体にするためにアンジェリーデの国の生きとし生きる物全てを魔法の道具を作るのに世界を守護する守護獣を代償に作った。
世界は荒れ果て、魔物という化け物を生み出してしまった。
アンジェリーデはそれでも神の告白を断わり神の怒りを買い、全ての元凶はアンジェリーデだと世界中に言い放ちアンジェリーデを醜い化け物の姿に変えた。
アンジェリーデは世界の敵として追われる事になった。
アンジェリーデは自分の境遇を悲しみせめてもの罪滅ぼしとして神から押し付けられた不老不死の体と魔法具を使い魔物を殲滅していったが人々の憎悪は募るばかり。
それでも絶望せず魔物を殲滅していった。
だが魔物の中で一際強い魔王に敗れ魔王から逃げ出した。
そして逃げた先に青い目の者達に会った。
青い目の者達は古き神の者達で現在の神を封印するためアンジェリーデの仲間となった。
そして魔王を倒し神を封印したが神は自分を狂信していた一人の男に持てる全ての力を与えアンジェリーデを殺せば自分は復活すると言い襲わせた。
その男はアンジェリーデの幼馴染であった。
アンジェリーデは幼馴染の男が好きで会えた事に歓喜したが男が自分を殺そうとしている事に気付き、説得しようとしたが男は聞く耳を持たずアンジェリーデを殺した。
という話だ。
アニメ、マンガ、ドラマ、映画など多くの話を知っている俺がこれでもかと詰め込んだお話だ。
設定、セリフ、演出・・・即興にしてはいい出来だぜ。
観客は感情移入して大騒ぎだ。
あ?
トムとオーガがいないって?
二人ともアンジェリーデの戦い方を気にいって二人で真似してるぞ。
半殺しにした相手と仲良くなれるとはトムも凄い奴なのだろうか?
ただの馬鹿か大物か?
そんなことより『アンジェリーデ物語』は良かった。
小さくとも立体で精巧な人形を作った甲斐があった。
声優?
俺が全部したに決まってるだろう?
声帯を作れば自由に声を変えられるのは大きかったな。
俺の体すげーのなんのって。
一つだけ難点なのは人の姿に成れない事だな。
人の姿に成ろうとしたら崩れちまうんだよ。
だから今の姿も黒い靄の塊だ。
一部を人型には出来るんだけどな。
そしてここからが大事。
アンジェリーデと青い目の者達さ。
アンジェリーデの神が醜い姿に変える前の姿は理者を、青い目の者達はトム達とほぼ同じにした。
俺?
俺はいねーよ。
パリン!
お?
龍の護り籠の効力が切れたか。
でも犬達は俺達を襲おうとしない。
アンジェリーデのキャラクターに自分達を重ねているからだろう。
あ、トムとオーガが組み合ってる。
オーガがアンジェリーデのやっていた技をトムにかけてるな。
トムはそれを敵キャラクターと同じ動きで流した。
そしてトムが敵の動きで反撃をする。
オーガはアンジェリーデの動きで躱す。
繰り返し。
にならずトムがオーガの拳を顔に喰らう。
トムの顔が潰れたトマトみたいになる。
再生してまた組み合う。
お前達はそれでいいのか脳筋共!
これじゃ話すに話せないじゃねーか!
「ドニー!」
『トム!』
「『暴れるな!!』」




