No.1 召喚されて
読んでくれてありがとう。
カトリシア王国。それはサテラ大陸の四大大国の中で一番小さな国。だがそれは四大大国だけでの話。他の国と比べると大きさ、国力、人口など国の格の違いが一目で分かる程の違いがある国。人族が半数を占め他に獣族、精霊族、死族など多種族が暮らしている。また創造神ルクマスが顕現できる場所が多く存在し王都の中央にある創造神の神殿もその一つである。その王都で一つの話題がいたるところで囁かれている。
「今日があの日だ。」
「ついに来たか。」
「これで長年にわたった因縁に別れを告げられるわい。」
「会えるといいなー。」
「どんなお方なのでしょうか?」
今日はカトリシア王国だけでなくこの世界【アルカナ】を変えうることが行われる。人はそれを歴史の変わり目だと後世に伝えていくであろう出来事。
それは勇者召喚の儀式。
〜 〜 〜 〜 〜
うす暗く乾いた部屋。床に人ひとりを囲むぐらいの大きさの正方形が白く淡い光を放っていた。だが部屋全体を照らすには弱過ぎるようで周りはぼんやりとしか見えない。その光に照らされているのは六人の者。四人の人影は壁際に並んで立っている。光源が弱過ぎてはっきりと見えないのだ。白い正方形を挟んで向こう側に男女の一組と分かる二人が何かを唱えている。
『・・・我らは求めん。
この世界の罪を断ち浄化し救う者を。
創造神ルクマスの加護を受けし者を。
我らの願いを叶えし者を。
災いを全て退かせる者を。』
『主の祝福を受け力を得し者よ。
この世界を救う力とこの世界を護る力を与 えられし者よ。
我らの声に応えその姿を現せ。』
男女の声に反応しているようで正方形の光は最初の時と比べ強い光を放っていた。その光は部屋の中を照らし壁や天井、正方形の周りに文字が書かれていることを教えている。その文字も正方形と同じように光を発している。肌寒かった部屋の中は暖炉の前にいるかのように感じる程の熱を感じる。二人の男女はさらに何かを言っていた。壁際の四人の顔も分かるぐらいの明るさになった。四人は息を殺してその光景をじっと見ていた。
期待を胸に膨らませいるが不安も感じる者。
興奮して顔を赤くする者。
毒を飲んでいるような苦い顔をしている者。
冷静に事の成り行きを見守ろうとする者。
男女の声が止まった。そして正方形は直視できない程輝いて消えた。部屋の中の光を失い真暗になった。まるで光と音が突然消えてしまったかのように。女が何かを言うと部屋に光の球が現れた。
「勇者様・・・。」
壁際にいた者の方から思わず出てきた言葉。正方形の上に一つの存在がいた。それは白く暖かそう長袖の服と長ズボンを着ていた。サテラ大陸では珍しい色の黒く艶のある腰まである長髪。大きく髪と同じ黒い瞳とぷっくりとした唇に卵のような白くツルツルな頬で幼さを感じさせるが笑えばほとんどの者が魅入られるだろう顔、だが今は全ての感情が抜け落ちたような無表情。この部屋の誰よりも小さい体。可憐な少女という言葉が当てはまる者がいた。一部の者が喜んで自分の物にしようとするぐらい可愛らしく幼気な白と黒しか色がない少女であった。
「おぉ、勇者よ。
我らは其方を呼んだ者である。
其方の名を聞きたい。」
「・・・」
男の呼び掛けに白黒の少女反応をしなかった。男は少女が今の状況を理解できずにただ呆然としているのだろうかと思い再度少女に呼びかける。
「勇者よ、其方の名を聞きたい。
答えてくれないか?」
「・・・」
何も語らない少女を見つめていた男は少女の様子がおかしいと気付いた。何の反応も無いのだ。呼び出されてから口を開かない。瞬きもしない。呼吸をする音まで聞こえてこない。いや、これらは驚きのあまり固まってしまっただけかもしれないが目がおかしいのである。こちらを見てはいるが自分達が見えていないかのように思えるのだ。何の感情も読めない瞳はまるで、虫か人形のようだ。そのせいか良くできた人形を目の前にしているかのようで気味が悪い。男は少女に恐怖にも似た感情を抱きながらも女に少女を頼み壁際の四人を連れて部屋を出ていった。四人は少女に笑ってみたり睨んだりと様々な反応をして女に会釈して出ていった。
二人だけになった部屋で女は少女に近づいて少女に声をかけた。
「勇者様、今から勇者様の状態を視ますので少し失礼します。」
【ステータス】
女は少女の反応を見ずに言葉を発した。さっきのやり取りで少女が反応を返さないだろうと思ってからの行動である。すると女の額から青い光が出て少女の額に当たる。青い光は少女を包みこみ、少しして少女の頭上に集まり正方形となって白い文字が浮き出てきた。
ーーーーーーーーーー
XXXXXXXXXX
人族
0
18歳
男
スキル
なし
称号
なし
加護
なし
状態異常
虚心
口封じ
ーーーーーーーーーー
「こ、これは、状態異常を二つも所持!?
それに名前が表示されていない?
年齢と性別は・・・信じ難いです。
スキル、称号、加護は無しですか。
・・・基本能力値が気になりますね。
状態異常の影響を知りたいですし。
やはり主に視てもらわねばなりませんか。」
そう女が言い目を閉じた。まるで何かを祈る様な仕草をした後、少し経ち目を開け少年を見た。
(とりあえず主に報告は出来ました。
後は勇者様がどうなっているか、ですか?
言葉を理解しているのでしょうか?
翻訳魔法が効いていれば理解出来る筈です。ではなぜ王の言葉に反応を返さないのでしょう。
返す事ができない?
状態異常を所持している事を考えればおかしくは無いのですが・・・。
虚心に口封じですか。
後で同じ様な状態があるかどうか調べる必要がありますね。
それにしても男の子ですか。
・・・全く見えませんね。
年齢も外見と合いませんし。
【ステータス】を誤魔化す事は出来ますが・・・。
それができるスキルは分かりませんがアイテムを持っていない様です。
はぁ、スキルだとすれば私では見れませんね。
スキルになりきれていないものも考えられますし。
勇者様が特別なのか、それともそういう世界から来たということでしょうか?
これも後で調べてみますか。)
「勇者様、《私の言葉が分かる場合は右手を挙げて下さい》。」
そう女が言うと少年は右手を挙げた。
(手を挙げたという事は言葉を理解出来ているという事。
やはり状態異常で話す事が出来ない?
なら何らかの動作をする筈。
全く動かないのは・・・これも状態異常?
推測を重ねても前例が分からない以上意味がないですね。)
「《手を降ろして下さい》。では自己紹介をします。
私はサマタ・ウォーラタです。
幾つか質問をしていきます。」
少年は手を降ろす。
(王様の言葉に反応しなかった。
私の言葉には反応した。
違いはなんでしょうか。
・・・性別ですか?
これも状態異常の影響でしょうか?
とりあえず病気や怪我などが無いか確かめますか。)
「では一つ目・・・」
〜 〜 〜 〜 〜
「勇者様、今日はここでお休み下さい。
食事も後程持って来させます。
では主からの祝福を。」
ウォーラタは少年を部屋のベッドに座らせて部屋から出て行った。その部屋は一人が横たわれるベッドが一つ、開かない窓が一つ、こぢんまりした机が一つ、その上に光る何かが一つある小さな部屋だった。天井、床、壁全て石であり一見温かみを感じない部屋だが魔法が常時使われており中は風が通らず、一定の温度に保たれ、また窓から見える景色は王都を見る事ができとても綺麗である。部屋にある家具全てが魔法の品であり、そこらの宿屋の一部屋より数ランク上である。他国の貴族を迎え入れても文句の無い程である。
コンコン。
「し、失礼いたします。
勇者様、お食事をお持ちしました。」
数分後、吃りながら一人の少女が入ってきた。少女は白いパンと赤いスープ、薄い紫の飲み物と黄色の丸い物を持ってきた。
「おぉ!
か、可愛い!」
少女は少年の姿を見て思わず思った事を声に出してしまう。やってはいけない事だがここには注意する者がいない。
「あ、すいません。」
自分の不注意を謝る少女。少年は何も返さずただ正面の壁を見ている。
「・・・メイド長の言う通り反応が何にもないですね。
フゥ〜、よかった。
え〜と、隣に座りますよ。」
文句が出ないのを良い事に口調を崩した少女は少年の隣に座り持ってきた物を自分の膝の上に乗せた。
「勇者様、私、アネットって言います。
ご飯を持ってきたので食べましょう。
《こちらを向いて下さい》。」
少年はアネットの方を向いた。アネットは笑顔で白いパンを千切る。
「ふわふわの白パンです。
はい、あ〜ん。」
千切ったパンを少年に差し出す。だが少年はじっと見ているだけ。
「・・・?
あ、《口を開けて食べて》くれませんか?
毒じゃないですよ?
白パンは初めてなんですか?
勇者様の世界にはないんですか?」
アネットは少年の開いた口にパンを入れる。少年は口を閉じモゴモゴとさせる。小さな口を上下に動か喉仏の無い綺麗な喉を動かす。その様子はまるで小動物に餌付けをしているようだった。
「うわぁ〜!!」
アネットは少年のその可愛い仕草に堪らず抱き付いて頭を撫でたり頬擦りしたりとする。小動物の扱いとそう変わらない。膝の上の液体をこぼさないのだから器用なものである。
「今度はラトゥンスープですよ。
ふ〜、ふ〜・・・。
熱いから気をつけて。
はい、あ〜ん。」
アネットは目を輝かせて赤いスープを掬い息を吹きかけ冷まして少年に差し出す。少年はそれを口に含む。まるで幼鳥の餌やりである。
「今度はですね、・・・。」
アネットは少年に次々と食べさせていく。アネットは始終笑顔で少年は無表情で食事という名の餌付けをやっていった。
〜 〜 〜 〜 〜
「それでは、さよなら勇者様!」
アネットは満面の笑みで部屋から出て行った。どうやら先程の餌付けに満足しているようだ。少年はアネットの出て行ったドアを少し向いて、また正面の壁に向き直った。
外の景色がすっかり暗くなった頃、少年の腹部から何かが生えてきた。全長10センチの小さな人型の何か。よく見れば少年によく似た姿だった。少年を縮小したように。ただ髪も肌も目の色でさえも服と同じ白。まるで精巧な蝋人形である。それは少年から完全に抜け出した後、床に飛び降り溶けて消えていった。足、胴そして顔も床に溶けていく。その時それは高い幼い少女の様な声を出した。
『プログラム名・周囲探索・発動』
話につき1つの設定を簡単説明をします。
【アルカナ】情報
サテラ大陸1
円のような形の大陸。創造神ルクマスが造ったとされる。中央にカトリシア王国がある。




