遠い思い出のキミ
初恋は実らないってよく言うけれど、初恋以上に純粋で強烈な想いってないのかもしれない。
何年経過しても、どうしても忘れる事の出来ない人。
私にも、そんな人がいる。
彼との出会いは、まだ桜の花が満開の頃だった。
それから約二年間私達は友人として過ごし、彼は何人かの女のコと付き合ったけど、私は誰ともそうはならなかった。
だって私は、最初から彼の事が好きだったから。彼以外の人なんて考えられなかったから。
けれど私達の関係はずっと友人のまま。
それは彼が私を恋愛対象として見ていなかった事、私もこのままの関係でいいと思っていた事、何より完璧な友人を演じきる自信があった事が原因だと思う。
その完璧さが、私達を離れさせた。
彼は夢を叶える為旅立ち、私は地元に残った。
彼が夢を叶えたのか、今何処で何をしているのか……それを知る術はないけれど、きっと彼は遠い何処かで誰かと幸福せになっている。
彼が誰かのものになっているとか、私を忘れているかもと考えても哀しくないけれど、皆が言う“前を向いて新しい恋を”にはどうしても頷けない。心が、動かない。
これが彼だったら……と思ってしまう。気付かない間に比べてしまう。
ふとした瞬間、彼の名前を呟いてしまう。
もう、名前以外の全てが霧の中の様に曖昧なのに……。
自分では終わった事にしたつもりなのに。
それでも彼は、名前だけでも私の胸をこんなにも熱くさせるから、私はきっとこの高鳴りが消える日まで忘れる事が出来ないだろう。
けれど私は
そんな自分を
幸福せだと思う。
不意打ちに思い出すのは、それだけ好きだったからだと思うのです。