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びっしょりと、汗を掻いていた。
まだ夜明け前の暗い世界のなかで、荒い息を浅く繰り返す。
悪夢だと、思った。
夢の自分が同じことを考えていたことを思い出しても、苦笑も出来ない。
こわいと、初めて思った。
悠緋と言う、あの夢の中の少女を。夢の中の自分を、怖いと。
『ごめんなさいね』
どんな人が聞いたって、謝罪になんて聞こえないだろう声音で。
(あれは、宣戦布告だった・・・)
そして、なにより自分と同じ顔が、あんなに綺麗に笑うことが出来るなんて知らなかった。
(朝来さんに、似て……た)
どこか勝ち誇ったように響いた、あの声。
どこまでも自信に満ち溢れたあの、笑顔。
どんな窮地に立たされても笑えるように訓練された人たち。
あの笑顔も本当は虚勢であるのかもしれないけれど。
でも、威嚇されてる。圧倒されてる。
空が白みだして明るくなって。
鳴る前の目覚ましを止めて、起き出した。
息さえ潜めて。何時間とも分からない時間を過ごした。
完全に寝不足だったけれど、寝なおす気持ちには全くなれない。
顔を洗ってさっぱりしようと思ってベッドから出る。
洗面台にある鏡に映った自分の姿を見てどきりとする。
寝癖も付かない真っ直ぐな髪。
いつもは耳の横でふたつ結び。けれど起きたばかりの今、髪は背に流れて。
「ごめんなさいね」
声に出して言ってみる。からからに渇いた口。擦れて弱気の声。
(全然、違うっ)
違うことにホッとして、けれども完全に負けてるなって、感じる。
今までも考え方が違うって思うことは多かったけれど。
これほど強く、反感を覚えたことは無かった。
きっと、夢の中の婚約相手が雷くんじゃなかったらこんな風に思わなかった。
そんな私は身勝手な人間に違いなかった。
キッと睨む。鏡の中ので感情的な顔をした自分。にっこりと、笑って宣戦布告を言い渡した夢の女の子に比べて酷く醜いと感じた。
「負けないんだから!」
睨んだ顔が泣いているようにも見えた。
「雷くんが好きなのは鈴葉なんだから!」
言わずとも、彼女だって百も承知のことを言う。それは勝ち宣言と言うより負け惜しみに聞こえた。
朝ごはんを作る。簡単なもの。目玉焼き。ご飯は炊きたてがあるからお味噌汁も。具はたいしたものはない。お弁当も1つ作る。
「あ、おはよう、お姉ちゃん」
にっこり笑って寝ぼけておきてきたお姉ちゃんに挨拶する。
「ふぁあ、おはよー。珍しい、アンタが休みの日に起きてるなんて」
眠そうに瞼を擦りながら欠伸付き。
パジャマで降りてきた姉をみて思う。神名兄弟も似ていないけれど、自分達姉妹も似ているとは言い難かった。
「朝ごはん出来てるよ! お弁当も。一緒に朝ごはん食べよ」
簡単な料理でも、お姉ちゃんと食べると美味しい。
昨日雷くんと遊園地に行ったことを話す。今日の予定は無いって言ったらどうせ雷と遊ぶんだろ、と茶化したように言って柔らかく笑う。
どちらかと言うときつめの美人である姉の、この柔らかな笑顔に魅了されない人なんて居るのだろうか。妹の自分でさえドキドキさせる笑顔を見つめて勿体無いなぁと思う。
この笑顔を見せる人を私は家族以外に知らないから。
(でもこの笑顔が無くても、お姉ちゃんはみんなの憧れだけど……)
悠緋が兄に向ける陶酔にも似た愛情とは違うけれど。鈴葉にも自慢の姉が居る。
お姉ちゃんが出かけて、時計を見る。休日の今頃、まだごろごろ寝ていても不思議の無い時間。電話を掛けてみようかな、と取り出した携帯。
(……でも)
躊躇した。ただの夢の出来事で、とんでもないことを雷くんに口走ってしまいそうな気が、した、から。
髪の毛を綺麗にブラッシングして、何時ものツインテールにする。
癖のない直毛は濡らさなければ、綺麗には結べない。耳の直ぐ後ろで結ぶ、結び目から30㎝以上揺れる長い髪。切ってしまおうか、と不意に思う。でも……。
(雷くんが褒めてくれる、髪だから)
切ったら負けだ。お気に入りの長い髪を、そんな理由で切るのは癪だ。
普段は殆どしないお化粧をした、飛び切り可愛い服を着た。
それでも、悠緋が夜会に出向く時などに比べたら、地味な装い。
玄関で佇んでしまう。何処にも行くあては無かった。
誰かと一緒に居たいような、ひとりきりになりたいような気分だった。
ひとりぼっちで居たくなくて、けれども誰とも一緒に居たく無かった。
「いってきまーす」
誰が聞いているわけでもないのに、勤めて明るい声で言う。
それは家中に空々しく響いて誰にも届かずに消えた。
目的も無いのに街に出る。人々が待ち合わせに良く利用する噴水の縁を椅子にしてぼぉっとする。人ごみは嫌いだ。けれども、ゴミのように混みあっていると分かっているこの場所に、用事もなく出てくるとどうしてか少しだけ落ち着いた。
名前も知らない人々がが行き交うのをなんとはなしに見る。
(こんなに、たくさんの人が居るのに・・・)
『わたしはひとり』
誰も、私を知らない。私も、誰のことも知らない。
不意に泣きたいような気分になる。けれども、同時に笑いたいのかもしれないとも思う。
だから、なのかも知れない。
どうしたら良いのか分からずに、どうしたいのかも分からずに。
どうすることも出来なくて、顔の筋肉は強張ったままどんな表情も作れない。
(ああ、今……私、無表情だ・・・)
何も考えていないわけじゃない。心の中には嵐のようにたくさんの感情が渦巻いている。
たくさんの気持ちの中の、どれを一番に優先すれば良いのかが分からないからどうにも出来ない。
アーケードに遮られていても、なお熱い夏の陽射し。行き交う人々の熱気。
時折思い出したように吹き抜ける、生暖かい風。
熱いとぼんやりと思う。けれど悪寒がする。
喉が渇いて、でも気分が悪くて何も口にしたくない。
同じように噴水の縁に座っていた人は、待ち人がやって来て、一人また一人と減っていく。
あらたにやって来た人たちも、やがて居なくなっていく。
(なに、やってるんだろ・・・)
取り残されているような気分に、なる。
誰かを待っていて、待ちぼうけ。
そんな、気分に……。
「鈴ちゃん?」
ハッと顔を上げる。運命みたいな出会いだな、と頭のどこかで声がした。
その相手が雷くんじゃなかったことにほっとして、失望した。
「あ・・・ヒマリくん」
そこには別の高校に通うようになってから、殆ど交流がなくなってしまった幼馴染が居た。
中学のころまでは割りと親しくしていたのに、と寂しく思うこともあったけれど、こうして街で出会えば昔の呼び名ですんなりと呼び合える相手と言うのはやはり貴重なんだろう。
ほっとする、笑おうとして、上手く出来ない。
一緒に居る人が知り合いなのか?って、言っているのが聞こえてきた。
幼馴染なんだと、お座成りに説明してから向き直る。少々きょろきょろと辺りを見回して視線を戻すと、不躾なほどじろじろと見られる。
「な・・・何?」
ひまりくんの、綺麗な瞳で見つめられると居た堪れなくなってくる。
不意に伸びてきた白い指に頬を撫でられて、涙腺が壊れていたことを知った。
ヒマリくんと同じ制服を着た男の子たちは少し会話をすると、バイバイと言って離れてく。
こういう場面で「お前の彼女~?」とはやし立てないところがどこか同世代の男の子たちとは違う感じがした。
ヒマリくんのお友だちが行ってしまうと、きつい目で見られる。
ヒマリくんの美貌は一見の価値がある。笑った顔も無表情もとても美しいけれど。その中でも彼の怒った顔は一段と美しい。
これほどまでに美しい人を、私は他に知らない。ふと夢の中の「兄様」の顔が思い浮かぶ。
もしもあの人が実在するのなら、ヒマリくんよりも美しい人は、世界に一人だけは確実に存在するということだ。
「何、してるの?」
不機嫌そうな、声で問われたそれは、先ほど自問したことと同じで。
けれども今、その答えを持たない。
「え・・・っと、わかんないの」
要領を得ない私の返答に更に目を吊り上げて、ひとつため息をこぼす。
ストンと腰を下ろす動作の、なんと優雅なこと。
「え・・・?」
どうして隣に座るのか、全く分からずに戸惑う。彼は何をしているのだろう?
「あんまり泣くと、化粧が落ちるよ」
素っ気無い言い方。ヒマリくんはそれだけ言うと黙り込む。
沈黙が気まずいと言うようなことはない、普通はこんなに綺麗な男の子と居るだけで緊張するのかもしれないけれど、幼馴染の特権だ。
涙が引っ込むと冷静になる。心配してくれたのかな、と考える余裕が出来た頃、静かにヒマリくんが口を開いた。
「雷を待ってるの? まぁ、鈴ちゃんがそんなにおめかしして待つ相手って言ったらひとりだけだよね」
言い方は、違ったけれど。それはさっきの“何、してるの?”と言う問いと同じもので。
先ほどは答えを持たなかった問い。けれども、そう問われると答えはそこに、あった。
「……待ち合わせを、してるわけじゃないの」
(それでも、きっと。私は雷くんを待っているんだ……)
なんと言う甘ったれなんだろう。それに気付くと急に恥ずかしくなった。
喉が渇いても何も飲みたくなかったのに。立ち上がる気力も無かったのに。
「ね、喉渇いちゃったね。ジュースでも飲んで帰ろうか?」
立ち上がって私はそういって幼馴染の手を引いた。
「ごちそうさま、ありがと」
理由も分からないのに待ちぼうけに付き合ってくれた幼馴染に、お礼だよと言いながらジュースを奢ろうとすると、鈴ちゃんに奢られるなんてごめんだよと言いながら逆に奢って貰ってしまった。
幼馴染だから、家は近い。会話少なく帰路に着く。
「ねぇ、ヒマリくん。今日お友だち良かったの?」
遅すぎるけれど一応聞いてみる。
「ん? ああ、別に構わないよ。学校帰りにちょっと寄り道のつもりだっただけだし」
「学校かぁ・・・補習?」
「別に成績不良じゃないけどね。特別授業」
「昔から特別優秀だったヒマリくんが成績不良だなんて、思わないよ~」
一言口を開けば、最近ご無沙汰だったことも嘘みたいに会話は弾んだ。
「鈴ちゃん」
何の違和感もなく当然のように一緒に帰っていると、家の直ぐ傍で硬い声に呼び止められた。
「雷くん? どうしたの?」
「どうしたの? じゃないよ。何度も電話したんだけど? 一体どこへ行ってたの」
雷くんにしてはきつい言い方に驚いて一瞬言葉に詰る。
「え……。あ、携帯忘れてたから……」
本当は嘘だった。携帯はわざと置き去りにしてきた。
嘘を吐いているという罪悪感が、語尾を小さくする。
「ふぅん? それで? 向日葵と何処へ行ってたの?」
ひまわり・・・どこか他人行儀な呼び方に吃驚する。
「え? や、」
別に何処にも行ってないよと、偶然会ったんだよと言いかけた私の腕を引っ張ってヒマリくんが言う。
「何処だっていいでしょう? 幼馴染と出歩くのにいちいちお前の許可が要るわけ?」
黙ってさえ居れば、天使のようなと表現して差し支えないほど美しい顔で、優しげな微笑を作りながら柔らかな声音で謡うように言う。
「ヒマリくん?!」
吃驚して呼ぶと、雷くんに見せた天使のような笑顔を引っ込めて、冷たい視線を向けてくる。
腕を引かれたせいでヒマリくんの直ぐ傍に立っていた私を強引に雷くんは自分の方へ引き寄せた。
「鈴ちゃん、今から帰るところ?」
ヒマリくんのことを無視して雷くんは言う。
「あ、帰るところだけど」
そういうと雷くんはヒマリくんに送ってくれてありがとうと綺麗に笑んで見せた。
その笑顔に心臓が走り出す。
ヒマリくんの、芸術品のように美しい微笑も平気なのに。雷くんの笑顔には簡単におかしくなってしまう心臓に呆れる。
「ヒマリくん、今日はありがとうね。バイバイ」
先に行きそうになる雷くんを追いかけるために慌ててそう別れを告げると、ヒマリくんは「またね」と飛び切り綺麗に笑って言った。
雷くんに追いついて並ぶと、歩調を合わせてくれる。
横をみるけれど、何時もはそうすると目が合うのに。雷くんは前を向いて歩いていく。
(さっき、2人の様子変だったな・・・)
喧嘩でもしているのだろうか?
何となく声を掛けづらくて、黙っていると直ぐに家に着いた。元々家の直ぐ傍まで帰ってきていたのだから。
「お邪魔してもいいかな?」
「うん、もちろん」
少しだけ気まずい沈黙が終わったことにホッとして笑う。
家に帰って手洗いうがい。顔も洗って落ちかけのお化粧を落とす。お洋服も部屋着に着替えて一息ついてから置き去りにした携帯を手にとる。
着信履歴とメールを確認して、雷くんに心配掛けたんだなと今更ながらに反省した。
雷くんの為にコーヒーを、自分にはミルクココアを注ぐ。
夏だからと冷蔵庫で冷やしておいた飲み物に少しだけ迷ったけれど氷を2個ずつ入れた。
「お待たせ~」
難しい顔をして黙り込んでた雷くんに、努めて何気ない風に声を掛ける。
「ん、ありがとう」
ニコと笑ってカップを受け取る姿は何時もと全く変わらない。
「ねぇ鈴ちゃん。今日はどうしてあんなに可愛い格好をして向日葵と会ってたの?」
一口も口を付けずに。カップを受け渡して直ぐ傍に座って、ああ、とそこで初めて合点が行った。
「ヒマリくんとは偶然会っただけだよ? 別にヒマリくんと会うために可愛い格好したわけじゃないよ?」
そう言いながら雷くんの不機嫌の理由が分かって可愛いなって思う。
「昨日鈴ちゃん、なんだか元気が無かったみたいだったから……」
「ああ、うん。それで心配して今日電話くれたんだね。ありがとう」
(それなのに連絡が取れなくて、余計心配掛けちゃったな・・・。)
「今日はね、ええっと、昨日雷くんと待ち合わせたあの噴水の場所にね、行ってたの。」
要領を得ない説明。小さな子どもが母親にその日の出来事を話すような喋り方。
「別に誰かと約束があったわけじゃないの。ただ、朝起きて、綺麗なお洋服着て、お化粧したら家に居るのが勿体無くなって……。」
「どうして、オレに声掛けてくれなかったの?」
それは当然の疑問だ。今までだったら絶対に、こんなとき雷くんを呼んだ。
きっと悠緋と言う少女の影響だったって言うことが今なら分かる。
気を抜けない上流階級の社交の場で装う飛び切りの装いは、彼女にとっては戦闘服なのだ。
私にも昔から、気持ちが不安定になったときなんかに、綺麗なお洋服を着ると言う妙な癖があった。そのことを知った上での雷くんの言葉は、優しさ以上に重く響く。
「どうして・・・かなぁ」
言葉にするのは難しい。今朝電話を掛けようとして止めてしまった理由。
「嫌われたくなかったから」
考えて言葉を選ぶ。多分これが一番正しい。
「嫌いになるわけないだろう?」
間髪入れずに返って来た言葉に嬉しくなりながら、更に言う。
「ちょっとでも、嫌われたくなかったから」
雷くんは珍しく不愉快そうな表情を隠さずに作る。
「少しでも、嫌うわけがないだろう?」
それでも、声はこの上なく優しい。
「ねぇ雷くん、鈴葉ね、雷くんのこと、大好きよ」
もう、何度目になるのか分からない告白。
子どもの頃から繰り返された、それ。
「オレの方がずっと、鈴ちゃんが好きだよ」
子どもの頃から、繰り返されたそれ。おままごとの続きみたいな私たち。
いつも、女の子たちはヒマリくんを王子さまのようだと言っていた。
けれども、私にとっての王子さまは子どもの頃から雷くんだけだった。
だから、王子様に大切にされている私はいつだってお姫様気分。
「そういえば、ヒマリくんと喧嘩してるの?」
神崎向日葵―かんざきひまわり―ちょっと漫画の主人公みたいな名前の彼は私たちの幼馴染だった。本人は花の名前なんて女のようだと言って“ひまわり”と呼ばれること余り好きじゃないみたい。
ヒマリくん自身は向日葵と言う感じはしない。花は花でも百合とか薔薇とか、そっちの方がヒマリくんにはぴったりだ。
「そういう訳じゃないんだけど……もともとオレと向日葵はそんなに仲良くないんだよ」
それは嘘だった、私にも分かる嘘。
小さい頃からいつだって私たちは一緒に居たのだから。
「嘘、本当は仲良いのに」
クスクスと笑う。正反対とまでは言わないけれど。
昔から頭脳明晰で、スポーツだって万能で人当たりも良い雷くんと。人間離れした美貌と、ここら辺一体では知らない人はいない裕福な家のお坊ちゃんであるヒマリくんは。
昔からちょっとだけ人を寄せ付けない雰囲気を持っていた。
それは女の子たちをキャーキャーと喜ばせて。男の子たちをちょっとだけ敬遠させる。
私も生まれたときから一緒に居なかったら、彼等を遠巻きに見る一人に過ぎなかっただろう。
何時も他人には笑った顔を崩さない雷くんが、ヒマリくんの前では無防備になることを知っている。
そして2人は変なところで趣味が合うのだ。だから本当は少し、私はヒマリくんに対して嫉妬心みたいなものがある。
もしもヒマリくんが女の子だったなら……。
「……だから、オレに黙ってふたりで会ったりしないで。」
ボケっと考え事をして色々聞き逃していたらしい。
「うん、わかった」
何がだからなのかは分からなかったけれど。黙ってふたりで会わないで欲しいと思っていることが分かって居ればそれで良いのだろう。
聞いてませんでしたと言い出せなくて。私はそう答える。雷くんはふうわりと笑う。
いつもは、大人びている雷くんの子どもみたいな笑い方。
それを見ると、私だけ特別だって言う感じが凄くして、好き。
「約束だ」
もう幾つ目の約束かもわからない約束の言葉。
大好きな大好きな雷くんと約束がまたひとつ増えたことが嬉しくて笑う。
「ねぇ、今度ヒマリくんと夢月をさそって、昔みたいに4人で遊びに行きたいな」
雷くんはちょっと迷うように視線をさまよわせて、そうだね、と小さく言う。
朝はどうやっても拭えなかった不安が、段々と薄くなっていく。
けれどもそれは完全に消えてしまったわけじゃない。
強く縛りすぎた所為で頭が痛くなってきたのに。
ツインテールを解けないのがその証拠。
ふわぁ・・・
あくびをした私を見て雷くんは笑う。
「ごめん、寝不足で」
もたれ掛かって目を閉じる。雷くんは優しくおやすみと言って私が寝やすいように体をずらした。




