表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊師の末裔が選んだ忘却  作者: 猪口 零都
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/29

第二十九話

「レオン! 怪我をしたって聞いたけど、大丈夫なの?」


一人で街を歩いていると、知った顔に声をかけられた。


「ああ、怪我は良くなったよ」

「心配したのよ」

「それは嬉しいね」


特段思い入れがあるわけじゃないが、娼館の女は「使える」

だからつかず離れずの距離を保っていた女だ。


「快気祝いをしてあげましょうか?」


妖艶に笑う女は、いかにも男慣れしている。


「それは俺にメリットがあるのか?」

「あら、いつもあなたも喜んでるでしょう?」

「そういうことにしておこう」


時として必要な情報をくれる女だからこそ、こうして不用意に触ってくるのを、いつもなら許していた。

……が、どうも小さな違和感がある。

これはなんだ? 嫌悪? それとも、触れられること自体が、もう違うのか ──


「ああ、でもあの女が出しゃばってくるかしら?」


不意に聞こえた単語に、心より先に体が反応した。

……ガルドはあえて言わない選択をしている。

マックスや他の連中も、ガルドに従っているということは、中立を保つと思っているということ。

ラシャ、も、知っている可能性が高いが、昨日の様子じゃ、アイツも言うつもりはないんだろう。

……なら、他の人間から聞き出すしかない。


「そんなに出しゃばっていたかな?」


さり気なさを装い口にした言葉に、


「出しゃばってたじゃない! あの女が街に来たせいで、あなた変わったわ! 私にだって全然会いに来なくなったでしょう!?」


思った以上に、感情の篭った反応をした。

街に「来たせい」ならば、元々はこの街の住人じゃなかったのか?


「まぁいろいろ忙しかったから」

「あの女とのデートで忙しかったんでしょ!? 知ってるのよ、女を庇って大怪我をした、って ──みんなそう言ってるわ! あなたわざわざ疫病神を連れてきたんじゃないの!?」

「……庇って怪我をした?」


思わず聞き返してしまった。


「なによ、違うとでも言うの?」

「あ、いや……。そういう噂になっているのかと思ってさ」


口では適当に誤魔化していたが、心臓が、うるさい。

あの怪我は積荷の崩落が原因じゃないのか?

……あの部屋の主を庇って怪我をしたから、思い出そうとすると頭痛がするのか……?

でもじゃあ、何故彼女は今いない?

俺に対する罪悪感から、姿を消した……のか……?


「だいたい、あんな使えなそうな子の何がいいのよ! あんなのただ見た目がいいだけじゃない! 人よりちょっと綺麗だったからって、騙されたのよ。そこら辺の男と同じで、あなたまでそんなに単純だとは思いもしなかったわ!」

「なるほど、ものすごく綺麗な女ってわけか」

「はぁ!? 何を聞いてるのよ! ちょっと綺麗なだけって言って、」

「気づいてないのかもしれないが、お前は同性を褒めるような人間じゃない。にも関わらずそんなこと言うってことは、認めざるを得ないような容姿、ってことだろう?」


俺の言葉に、女は一拍の間の後、顔を真っ赤にした。


「何よっ! 私が心配してやったのにっ!! あんたはもう出禁よっ!!!」


そう叫んで去って行った。

……どうやら図星を指してしまったようだ。

情報先一つの犠牲で、わかったのは、街の外から来た人間ということ。

俺はその女を庇って大怪我したということ。

そして恐らく ──同性から見ても目を見張るほどの綺麗な女なんだろう、ということだ。


「収穫があったのかなかったのか、微妙なところだな……」


街の人間であるなら、いくらでも探しようはあった。

だが、外から来たのだとすれば、今もここにいる可能性は低い。


「参ったな……」


仕事の片手間に探そうかと思ったが、思っている以上に、これは難航しそうだ。

もしかしたら ──

こっちを優先させなければ、何も掴めないかもしれない。


ガルドの選択。

マックスたちの態度。

ラシャの沈黙。

そして ──

俺の中で疼く、顔も知らない女への、名前をつけようのない思い。


今後、自分はどうするのか。

どう、したいのか。

仕事を優先するのか。

それとも ──

その答えを俺は、少しずつ、でも確かに探し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ