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精霊師の末裔が選んだ忘却  作者: 猪口 零都
第二章

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第二十七話

「お前、俺に隠してることがあるだろう」


ガルドと二人になったタイミングで、話を切り出した。

いい歳して、理由もなく溢れ出る涙が止まらなかったこと自体が、おかしい。

その理由が、あの部屋の主で、マックスの沈黙で、そしてガルドの態度だというなら。

正確に答えを聞けそうなガルドを問い質すしかない。


「……すまん。ラシャからお前が看病のお詫びをしないと言われてな。お前の金を少しやった」

「そう言うことじゃない」


結局ラシャは俺と飯を食いに行きたくないのかというほど予定が合わず、そのままにしていたのは確かにある。

だからまぁ……、代わりに払った分には何も言わない。


「俺の部屋の隣のことだ。あれは誰の荷物だ?」


回りくどいことは言わずに、単刀直入に聞いた。

ガルドの体が、ピクリと震えた。


「あれはお前のだ」

「馬鹿言うな。どこをどう見ても女物だろう?」

「……お前の金で買った奴なんだから、嘘じゃないさ」


ガルドは無表情に言う。


「は? 俺の金で誰が買ったんだ? だいたい、埃被っているってことは、もうここにはいないんだろう? 片づければいいじゃないか」


俺がそこまで言うと、ガルドは真っ直ぐ俺を見てきた。


「その権利は誰にもない。……お前以外はな」


元々表情があまり変わらず、感情が読みにくい奴だ。

それでも、何を考えているのか本当にわからないということは、今までなかった。


「片づけたいならお前が片づけろ」


その言葉に、思わず視線を逸らした。


「……俺は、あの部屋には入りたくない」


そう言った俺にガルドは「そうか」と短く言うに留まった。

思うように話が進まず、苛立って頭を掻いた時。

フッと左手にある腕輪が目に入ってきた。


「そう言えば、お前、これは知ってるか?」


その腕輪が見えるようにガルドの前に出す。


「怪我をした後で、気がついたら嵌ってたんだが、こんなもの買った覚えがないし、そもそも俺の趣味じゃない」


それに ──ベッドの上で見つけた、あの、似たような模様が刻まれていた女物の腕輪。


「趣味じゃないなら外せばいい」

「……それは、そう、なんだが……」


最初はラシャのイタズラか何かだと思った。

だから何度か外そうと手にかけた。

けどその度に、言葉にできない思いが溢れて、今も外せずにいた。


「……なんだよ?」


ガルドの口元が、フッと緩んだことを、思わず問い質した。


「……お前は自分が手錠でもかけたかったかもしれんが、まんまとかけられたんだと思っただけだ」

「だから何の話だ? マックスといい、お前らの言ってる意味がわからなすぎる」


ガルドは一度目を閉じ、大きく息を吸い込んだ。


「どういう理屈かは俺もわからん。ただ『そういうこともある』と思ってるだけだ。……だがお前が本当に望むなら、道は示してやれる……かもしれない」

「もったいぶらずに今言えばいいだろう?」

「もったいぶってるわけじゃない。それを望んでいないだろうから、今なんだろう? だから口にしないだけだ」

「俺は望んでるじゃないか。なんで言わない?」


さすがに少しイラついてきた俺を、ガルドは口の端を上げながら見てきた。


「『他者の喧嘩は中立を保つこと』 ──お前が決めたここのルールだ。その延長さ」


そう言ってガルドは立ち去った。

ここのルールを適用するだと?

……部屋のこともあるし、そんな気はしてたが、まさか ──うちに入れたのか? 女を?

誰が? 俺がか?

なんのためにそんなこと ──


「っつぅ……」


そこまで考え至った時に、脳の奥を締めつけられるような激しい頭痛に襲われた。

目を閉じ、しばらくじっとしていたら治まったが……。

それまで考えていたことの続きを考える気にもなれず、別のことをしようと、俺も部屋を後にした。

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