表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秋晴れ空と青タイツ

「俺さ、空の一部になりたいんだよな」

 秋晴れの空は澄んで、どこからか鳶の鳴き声が聞こえた気がした。龍二につられて俺も見上げる。

 意味深なことを言った龍二がキメ顔のまま沈黙モードに入ってしまったので、俺は手持無沙汰に辺りを見渡す。

 屋上には龍二と俺のふたりだけだ。

今日は文化祭の最終日。そんでもって放課後。クラスの出し物で青タイツ漫才を繰り広げた龍二と俺は反省会と称して屋上で、スベりまくった腹いせのメントスコーラ大会を開催していた。

「だからってお前、青タイツでキメ顔されてもな」

 俺はしゅわついたコーラの水溜まりを靴でがしがし広げながらツッコむ。スベりまくった後遺症で言葉に覇気がない。

 全身青タイツ人間こと龍二がぐっと伸びをしながら長いため息をついて言う。

「ブッダの教えではさ、解脱って宇宙との合一なの」

「急に哲学」

「要するに、悟りってのは自分が宇宙と一つになることらしい」

「はあ……それが?」

「ブッダはさ、この空と一つになりたかったんじゃないかな」

 龍二はまた見上げる。寂しそうな目をしていた。

 一拍遅れて、俺も見上げる。

 俺たちの町の上の上の、そのまた上に広がる青い空間。一番高い絵の具を垂らしたような色をしていた。風になびいた雲が泳ぐように何重にも線を描いていた。

「まあ確かに、分かるような……気もする」

 俺がつぶやくとほぼ同時に、午後四時のチャイムがリーンゴーンと鳴り響いた。

 階下からわいわいと女子やら男子やらの声が聞こえてくる。反省会もそろそろ一区切りらしい。

「お、購買いこうぜ」龍二が言う。

「今日は空いてねぇだろ多分。てかまだメントスとコーラ残ってるし。ほれ」

ポケットから取り出したメントスを龍二に軽く放る。

「お、サンキュ」

「んで? さっきの話のオチは?」

「ああ、んとね、そのね」

 言いよどむ龍二はタイツの首部分をびよびよ引っ張っている。俺はコーラをラッパ飲みしながら横目で返事を待つ。

「……いや、ブッダもスベって落ち込んだのかなって」

「そんなわけねぇだろ、ごほっ」

 むせながら二人でげらげら笑った。龍二はタイツをゴリラのように胸から真っ二つに引き裂いて、はるか階下の校門付近に向かって雄たけびを上げた。下にいた教師が何人か振り向いてこちらに歩いてきたので、俺たちは急いで帰り支度を始めた。

青い青い秋だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
青春! なんだか爽やかな気持ちになりました。 秋の季節だからこそ、ラストの一文がセンスフルで素敵です。 なんのこともない日々が積み重なって人生ができていく。 ふたりが大人になった時、この日の秋晴れの空…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ