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『邂逅』

『Ogre Hunter』シリーズは

時代も舞台も異なる

3つの章で構成される長編物語の総称です


第1章となる『~鬼哭の絶ち人~』は

主人公である高校生達が

歴史の裏で暗躍して来た

ある『仕事』を遂行する中で

様々な『葛藤』や『怒り』『悲しみ』

『友情・愛情』と『ライバル心』

或いは『裏切り』といった

感情のぶつかり合いの中で

成長していく過程を描いていきます


第1話『邂逅』は

ライバルとなる主人公達の

出逢いの場面です


ここから

遠大な物語は始まります…






第1話【邂逅】


〜1984年4月〜













「お腹…空いた…」




少女は


空腹に耐えながら


暗い部屋の中で


帰る筈の無い母親を


ひたすら待ち続けていた




その時間は余りにも長く…




どれくらいの日にちが経過しているのか


今が


朝なのか夜なのかを判断する感覚すら


麻痺しているに違いなかった




自分の足元に転がる


肉塊の正体が何であるかも


今の少女には


どうでも良かった




ただ


母親に帰って来て欲しい…




その強い念だけが


少女をこの場所に留め続けていた




「食べ…なきゃ」




そう…


食べなければならない




この場所で


母親を待ち続ける為に…










皆天市ミナソラシ




数年前に


3つの市町村が合併し


新しい市として生まれ変わったばかりの街である




市の中心に位置する


私鉄の『矢吹町駅』が


都心部まで急行で数十分という立地条件から


新興住宅が相次いで建ち並び


近年


急速にベッドタウン化してきている




合併に伴い


再開発事業の一環として


矢吹町駅北側への


大型ショッピングモール建設の計画が決まり


低層住居地域を中心とした住民達の


半ば強引とも言える立ち退きが完了したばかりだが


その影には


建設工事の施工が決まった建築業者と


一部市議会議員との金銭的癒着等の


黒い噂が絶えない







物語は


そんな皆天市の片隅から始まる…














皆天市の


北西部に位置する古い住宅地に


『黒羽神社』は建っている




神社内に生える


樹齢の高い


数本の桜の木が散らす花びらが


境内と周辺の路面の所々を


薄桃色に染めていた




この神社で暮らす少年


天野アマノ 霜月ソウゲツ』は


いつも通り夜明け前に目覚めて


次第に明るさを増していく外の景色を


ぼんやりと眺めていた




人付き合いが苦手で


喧騒を嫌う彼は


街が動き出す前の


この静かな時間が好きだった




毎朝


最初に聞こえて来る音は


まだ二十代前半でありながら


この神社の宮司を務める『三島 茜』が


朝食の支度をする音




トントンと包丁がまな板を叩き


食器がカチャカチャと触れ合う音が聞こえ始めると


同じ高校に通うクラスメートであり


同居人でもある『大月オオツキ カザシ』を


起こしてやらなければいけない時間だ




「おい、翳、起きろ」




気持ち良さそうに寝ている翳の肩を揺すると


寝ぼけ眼で体を起こし


「あ…おはようございます、霜月さん…」


と挨拶をする




霜月と翳は同い年であり


交友期間も長い為


親友と呼べる間柄なのだが


翳は霜月を『さん』付けで呼び


敬語で話す




翳にとっては


それが誰に対しても共通の『癖』みたいな物だが


表向きの


学生の顔とは別の部分での彼等の関係が


所謂


主従関係に近いという点で


その物言いは


ある意味自然な物かも知れなかった




翳が欠伸をしながら


猫の様に伸びをするのを後目に


霜月は再び窓の外に視線を移す




遠くの車の走行音や


近くの商店のシャッターが開く音が聞こえ始めた




静寂の時間はここ迄の様だ




霜月は


耳障りな雑音を遮断するかの様に


障子の窓を


ピシャリと閉めた…














同じ朝…




黒羽神社から1キロ程離れた皆天市北部の


新興住宅地の一角に所在する『白石家』は


いつもと変わらない朝を迎えていた




「愛弓ぃ、劍君に朝ご飯出来たって言って来てぇ」




キッチンに居る母親の声に


愛弓アユミ』と呼ばれたセーラー服の少女は


「はーい」


と快活に応えて


パタパタと2階への階段を駆け上がった




廊下の奥のドアを


トントンとノックすると


程なくしてノブが回り


ガチャリとドアが開く




「まぁ、まだ着替えてないの?」




自分より上背の有る少年がまだ


Tシャツにスエットパンツ姿なのを見て


愛弓は呆れ顔で言い


少年は


「あぁ…ゴメン…」


と長めの頭髪を指でポリポリと掻きながら


バツが悪そうな表情を浮かべた




愛弓と同い年であるこの少年の名は


東条トウジョウ ケン




半年程前から


訳有ってこの『白石家』に同居している




「毎朝一番お寝坊さんなんて、居候としての自覚に欠けるわよ

朝ご飯抜くと貧血で倒れちゃうんだからぁ」




愛弓の言葉に


病気知らずの劍は思わず苦笑する




『白石家』は


世帯主である『白石 年夫』と妻の『景子』


そして一人娘で高校2年の『愛弓』の3人家族に


同居人である『劍』と


シベリアンハスキーの愛犬『ジョルジュアンヌ』が暮らす


白壁2階建ての一軒家である




世帯主たる年夫は


4年前


愛弓が中学に上がるタイミングに合わせて


それまで長く親しんだ賃貸アパートを出


この場所に念願であった自分の城を持つ事が出来た




愛弓が幼い頃は


仕事が上手くいかずに苦労した時期も有りはしたが


努力の甲斐有って持ち直す事が出来


今では


妻と娘にも人並み以上の暮らしをさせてやれる様になった




愛弓は


親の欲目を抜きにしても


心根の優しい真っ直ぐな性格の娘に育ってくれている




その愛弓が好き合う事になった


劍なる若者を同居させる事に


父親としては多少の迷いは有ったものの


今の所


無口だが気骨の有る


実直な青年の様だ




年夫は


飲み終えたコーヒーカップをソーサーに置き


左手に持った新聞に目を移した




(また出たのか…)




紙面には


市内で発生している


連続猟奇殺人事件の記事が


大きく取り上げられていた…














劍と愛弓は


一緒に家を出て


いつもの三叉路迄来て立ち止まった




「じゃあね

劍君の学校遠いんだから、急がないと、本当に遅刻しちゃうよ」




同じ市内の


別々の高校に通う2人は


殆ど毎朝この三叉路で別れて


それぞれの学校に徒歩で向かっていた




新興住宅地として


いくつかの不動産業者がこの皆天市に目を付け


土地を買い漁り始めたのはこの十年程の事である




それ迄の皆天市は


各地域からの適度な距離と地価の手頃さも手伝って


公立・私立を問わず


様々な高校や大学が


競う様にキャンパスを造営してきた歴史が有る為


言わば学園都市の様な側面を持つ




劍が通うのは公立の『聖ヶヒジリガオカ高校』で


愛弓は私立『柊葉シュウヨウ女学院』である




「気を付けて行ってらっしゃい」


「あぁ、愛弓も気を付けて

じゃあな」




劍は片手を上げると踵を返し


走り去って行った




愛弓はその後ろ姿を


微笑みながら見送った







霜月は


珍しく1人で学校に向かっていた




いつもなら


同居人である翳と一緒に向かうのだが


今朝は途中で翳が忘れ物に気付いて引き返した為


1人で先に向かう事にしたのだった




民家の塀で仕切られた


視界の悪い四つ角に差し掛かった時


突然左側の路地から飛び出して来た学生服の少年と


霜月はぶつかりそうになり


とっさに斜めに半身を引いてかわし


相手の少年も


素早く身を翻した為接触する事は避けられた




その相手の少年は


足早に学校へ向かう途中の


劍だった…











「…っと、悪ぃっ…」




急いでいた自分に非が有ると感じた劍は


擦れ違い様に霜月に詫びを言い


霜月は


「いや…」


とだけ答えた




ボーイソプラノで


ともすれば少女のそれと聞き違いしそうな声と


その声に反して似つかわしくない大人びた物言いに


劍は相手の顔を再度見直した




(あぁ…コイツ…)




毎朝よく擦れ違う少年だった




(今日は珍しく1人なんだな)




いつもはもう1人


同じ制服を着た少年がくっ付いている




2人とも背丈が160センチそこそこな為


始めは中学生だと思っていたが


2人が着ている制服が


同じ市内に有る『南天ミナソラ高校』の物だという事に


後で気付いた




今ぶつかりそうになった少年は


いつも不機嫌そうな顔付きで


きっと


『とっつきにくいタイプ』なのだろうな…と


劍は思っていた




(印象通りだな…)




先刻の


愛想のカケラも無いリアクションは


『生意気なチビ』のイメージ通りだった




いつも一緒に居るもう一人のチビは


いつもニコニコしていて愛想だけは良さそうだけど…







一方霜月は


足早に去って行く劍の後ろ姿を


一度だけ振り返ってから


再び歩き始めた




(…?…)




振り返った自分の行動に


霜月は違和感を覚えた




彼はそもそも他人に…


もっと言えば


人間そのものに興味が無い




だから一緒に暮らす翳以外には


友人と呼べる相手は皆無だった




そんな自分が


たまたまぶつかりそうになっただけの他人に


まるで


関心を持ったかの様な行動をとったのが


不自然だと感じたのだ




『らしくない』のである




勿論


毎朝の様に擦れ違う劍の事は


霜月も認識していた




学ランの袖を肘の辺りまで捲り上げ


潰れ気味の学生鞄を


肩口に指先で引っ掛けて持ち


片方の手は常にズボンのポケットの中…




いかにも『硬派な不良少年』をアピールしている様で


霜月は


あまり良い印象を持っていなかった




まぁ


今の雰囲気では


意味も無く人に絡んで威張り散らしたり


無駄な虚勢を張る様なタイプでは無さそうだが…




(反射神経は良さそうだな)




先刻の身のこなしには


猫の様なしなやかさを感じた




また


霜月はそれが判る少年だった




そして


そんな事を改めて考えている自分に


再度


違和感を覚えた…














劍が通う


公立聖ヶ丘高校は


一限目の授業が終わり


休み時間になった2年3組の教室内は


いくつかのグループが同じ話題で盛り上がっていた




「ねぇ、また出たんだって、変死体」


「うん、ニュースで見た!今度は足が無いって」


「私…駅までの近道だからあの辺よく通るのよね…」


「ちょっとぉ、それヤバいって」




女生徒達の会話が


窓際の席に座る劍の耳に届いていた




矢吹町駅の北側に位置する


大型商業施設の建設予定地内で


この2週間以内に


立て続けに変死事件が発生していた




これらの事件には


発生現場が


立ち退きが完了した旧居住区の中心付近である事と


いずれも


死体の一部が欠損しているという奇妙な共通点が有った




1人目の被害者である中年男性は


左腕から肩口にかけてが無く


2人目の男子中学生は


右足首から下腹部にかけてが無くなっていた




そして一昨日未明


胃袋から下腹部にかけてが千切れた3人目の死体が


最初の現場から


百メートルと離れていない地点で発見されたのだ




現場は今や


完全に無人のゴーストタウンで


市内北部と


駅との間を行き来する人が時折通行するが


いずれの事件も


死亡推定時刻が夕刻以降である為


目撃者は愚か


悲鳴を聞いた者も居なかった




警察では


人の手による猟奇殺人と


何らかの猛獣等による事件の両面から捜査を進めているが


今のところ


何も手掛かりは掴めていない状態だった




劍は


この話題で盛り上がっている


女生徒達の方を横目で気にしてから


目の前の席に横向きに座るクラスメートの


イヌイ 純由スミヨシ』の方に目線を戻した




「…で、何か分かったか?」




劍の問いに


純由は顔の前で手をヒラヒラさせながら


「それがよぉ、さっぱりなんだ

3人のガイ者にゃ繋がりが全っ然見当たらねぇ」


と答えた










「あの近くで、未だに一軒だけ頑張ってる『源五郎』って飲み屋が有んだけどさ」




純由は


長い前髪で左半分が隠れた顔を


劍に向けて言葉を続けた




「1人目のガイ者はそこで飲んだ帰りに殺られたらしいんだけどよ

店のオヤジ曰わく、ショッピングモール建設や、立ち退きに反対してる連中の妨害工作だって断言してたぜ

『俺も気持ちは同じだ』…ってよ」




純由の話を


劍は腕組みをしたまま聞いていた




強制的に立ち退きさせられた住人の数は


相当な数に上るだろうし


立ち退きの対象ではないが


駅を挟んだ反対側の南口商店街にとっても


大型ショッピングモールの建設は死活問題に違いなく


未だに各方面からの抗議活動が続いていると聞く




建設予定地内での連続変死事件となれば


確かに大幅なイメージダウンだし


計画中止にも繋がりかねない




しかしな…と


劍は思う




「…だとして、体の一部を持ち去る理由がどこに有る?」




劍は率直な疑問を口に出した




「…だよなぁ」




純由は左目に懸かる前髪を


大きく揺らす様に頷いてから


「現場近くで警察の無線を盗聴したんだけど…死体の傷口からは動物の唾液とか、体毛だとかは検出されてないみたいなんだ」


と言葉を続けた




「…コイツは始めから、猛獣なんかの仕業じゃない」




断定的に言う劍に純由は


「『本部』や『支部』からは

まだ何も言って来ないのかい?」


と訊く




「無差別な手口だと依頼人が出にくい

本部も判断に迷ってんだろう」




休み時間の


終わりを告げるチャイムが鳴るのと同時に


次の授業の教科担任が入室し


ファイルをパンパンと叩きながら


「席に着いてぇ!」


と叫ぶ




劍は純由に


「『舞姫マキ』に繋ぎを取ってくれ」


と言い


純由は


「手掛かり無けりゃこっちから見つけようってか?…了解だ」


と答えて席を立った…













昼休みに入った私立南天高校の屋上には


春の日差しの下で昼食を摂ろうとする生徒達が


既に数十名


弁当を持参して出て来ていた




その端の


最も人気の少ない場所に


ひとり空を眺めながら


菓子パンをかじる霜月が居た







「霜月さんっ

やっぱりここに居た」




声の主は


翳だった




そう言えば


昨夜の聞き込みの報告を


まだ聞いてなかったな…と


霜月が思うのと同時に


翳が話の口火を切った




「昨日遅かったし、今朝もバタバタでちゃんと話せてなかったですから…」


「尻尾は掴めたのか?」


「それが…一晩中歩き回ったんですけど…殺された3人はまるで赤の他人です

依頼人は出ませんよ、多分」




やはりな…と霜月は思う




報道で知り得る限り


事件の被害者達は


『その場所』の近くを


『たまたま通った』だけ


という印象を受ける




「『組織』の連中に先を越されたくない

今夜は俺も出るか…」




霜月の独り言の様な呟きに


「あ、そーだ

組織って言えば…」

と翳が反応する




「組織かどうかは判らないけど、僕ら以外にも居ますよ

この事件探ってる人」


「…?」


「『源五郎』っていう居酒屋のマスターが、僕の何十分か前にも同じ事訊きに来た人が居たって」


「誰だ?」


「ミニコミ誌の取材のバイトって言ってたらしいんですけど…

前髪で顔が半分隠れた、頭の悪そうな学生だって言ってました」


「組織か」


「さぁ…

騒ぎが大きくなってますからね

本当に取材かも知れません」




霜月は無言のまま


再び目線を空に移した




都心部の方向の空が


灰色に見えるのは気分が良くないな…


と思う




「あー、霜月さんまた同じパン食べてる」




霜月の右手に


見慣れた


チョコのかかった


ビスケット生地の菓子パンが握られているのに気付いて


翳が言った




「栄養偏るの良くないですよ

ただでさえ霜月さんの身体は…」


「要らない心配だ」




霜月は


淡々とした口調で


それでもキッパリと


翳の言葉を遮った




「今日は俺も出る

それで駄目なら茜の『力』が必要だ

放課後、裏門な」




言い切ると


霜月は翳にクルリと背を向けた




翳は


その背中に向かって


「はい、はい…」



笑顔のまま呟いた…













純由は


終業時間になると人目を避ける様に校外へ出て


付近の知人宅に預けてある紫色の50ccバイクに跨り


自宅ではなく東の方向へ走り出した




公立である聖ヶ丘高校は


バイク等による通学は禁止されている




その為純由は


この知人宅のガレージに


『バイオレット・サイクロン』と名付けた愛車を


隠し置いて登下校していた







『私立柊葉女学院』の近くに着くと


路上にバイクを停め


上着の内ポケットから


タバコのケース大の機械を取り出し


アンテナを伸ばしてスイッチを入れる




純由自身が造った


オリジナルの電波発信機である




この距離なら


相手が校舎内のどの場所に居ても電波は届く筈だ




(まだ校内に居る時間だよな…)




今日が部活動が行われる曜日である事を


頭の中で再確認しながら


純由はバイクを降りた…







声楽部に所属する『藍沢アイザワ 舞姫マキ』は


合唱のレッスン中に


自分の鞄の中から発している


微かな『音』を聞き逃さなかった




この極めて高い周波数の『音』は


通常の人の可聴域を超えている為


余程特殊な耳を持っていない限り


すぐ間近の人間にも聞こえる事はない




そういう訓練を


幼い頃から受けていた舞姫だからこそ聞こえる音だった




一度シグナルを受けると


数分おきに断続的に音が鳴る仕組みになっている




練習の合間に


鞄の中から音波発信機を取り出し


スイッチを押す




音波が止み


代わりにシグナルの発信元へ


受信完了のシグナルが発信される




(『仕事』かなぁ…もーちょっと待っててね、純由君)




心の中で呟きながら舞姫は


窓から見下ろせる校門の方に目を遣った…











「どうしたの、舞姫?教室に忘れ物?」




背後から声をかけられ


慌てて舞姫は発信機を鞄の中に隠した




「ううん、忘れたかと思ったらちゃんと入ってたよ」




舞姫は振り返り


同じ声楽部員でありクラスメートでもある


白石 愛弓の顔を見上げて笑顔で答えた




女子高生としては平均的な身長の愛弓に対して


舞姫は10センチ程身長が低い為


向かい合うとどうしても


舞姫が見上げる格好になるのである




「そう、良かったわね」




ニコリと微笑む愛弓を見て


舞姫はいつもながらに


(綺麗だな…)


と思う




造形的にとりわけ美形だとかという意味ではなく


愛弓という少女の表情や発する言葉が


その心根の美しさを体現している…


と舞姫は感じる




つまり


『清らか』なのだ




勿論ルックスだって


飾り気のないショートヘアーや


両頬の雀斑までもがチャームポイントに見える位だから


同性の舞姫から見ても


愛弓のルックスは平均以上だと思うが


何より愛弓の魅力は


内面の清らかさが


まるでオーラの様に滲み出ている所だと


舞姫は思う







一方愛弓の方も


自分より小さな同級生である


舞姫という友人の事が大好きだった




明るく元気で


色白の小さな顔に


瞑らでありながら


内面の小悪魔な一面を垣間見せる


少し上がり気味の瞳…




まるでアニメや漫画の中から飛び出した


美少女キャラクターの様に見える




長めの髪を両横で結んだ独特の髪型も


コケティッシュな彼女に


良く似合っていると愛弓は思う




自分に無い小悪魔的魅力を持つ舞姫は


愛弓にとって


一緒に居るだけで


自分を元気にしてくれる様な存在だった







「あ…止んだ…」




愛弓が目線で周囲を見回しながら呟く




「何が?」


「ううん、さっきまで変な耳鳴りがしてたの

学校に居ると時々聞こえるんだけど…気のせいかな」




(愛弓には…聞こえるの…?)




舞姫は


努めて自然に見える様に


キョトンとした表情を作りながら


意識は鞄の中の


音波発信機を気にしていた…














純由の持つ発信機が


舞姫からの2度目のシグナルを受信し


通常可聴域の音でそれを知らせた




『間もなく学校を出る』の合図だ




純由はタイミングを見計らい


学園の外壁に沿ってゆっくりと歩き始めると


間も無く


校門から


舞姫が愛弓と並んで出て来るのが確認できた




(ありゃぁ…劍の彼女と一緒かよ)




道を訊ねるふりか何かで


舞姫に接触しようと考えていたが


別の方法を取った方が良さそうだ







舞姫の方は


前方から近付く純由の姿にすぐに気付いたが


愛弓の手前


他人の体裁を取るべきと考えて


素知らぬポーズを決め込む事にした




やがて愛弓が純由に気付いて


「あ…純由君…?」


と声をかける




愛弓は純由とは


劍の友人として以前から面識が有った




「やぁ、愛弓ちゃん

今帰りかい?」


「今日は劍君一緒じゃないのね」


「あぁ…この近くのダチに用が有ってさ

これから駅前の矢吹町公園で何人かで集まるんだよ」


「そう…

お友達多いから大変ね」


「まぁね…

悪い遊びすっけど、劍は誘ってねぇから安心してや」




純由は冗談っぽく言いながら


チラリと舞姫を見ると


舞姫は


愛弓が気付かない位に微かな動きで頷く




「んじゃ、忙しいから行くわ」




純由が


愛弓達の前を通り過ぎようとすると


「あ…純由君」


と愛弓が呼び止める




純由が振り返ると


「いつも劍君と仲良くしてくれて、ありがとうございます」


と言って


愛弓はペコリと頭を下げた




「あ…いやぁ…付き合わせてんのオレの方だしな」




純由は


照れくさそうに笑いながら


片手を挙げて背中を向けた







(…ホンット…いい娘だよな)




劍と愛弓が


ただの同居人ではなく


互いに好き合う仲である事は


2人のいきさつを直に見てきた純由が


一番よく知っていた




また


劍の忌まわしく凄絶な過去と


その過去により


人としての感情を失ったかの様な


屈折した少年期を劍が過ごして来た事




そして愛弓との出逢いにより


劍が人間らしさを取り戻した経緯も


純由は誰よりも知っていた




それ故に


先刻の愛弓の言葉には


未だに自ずから人との関わりを求めようとしない劍への


変わらぬ深い愛情を感じるのだった




(本当に…いい彼女だぜ、劍…)




愛弓と舞姫が角を曲がるのを確認してから


純由は道を引き返し


再び『パープル・サイクロン』に跨り


駅へ向かった…














霜月と翳は


学校を出ると制服姿のまま


事件現場付近に向かっていた




3人目の被害者が倒れていた現場だけは


事件から2日しか経っていない為


まだ立ち入り禁止になっていた




「この辺り全部こんな風景ですよ」




無人のゴーストタウンを見つめる霜月に


翳が言った




駅北側のこの一帯は


細い路地が入り組んだ中に


古い平屋住宅を中心とした家屋が建ち並び


比較的賑やかな南口に対して


ただでさえ『駅裏』と呼ばれていた様な地域だった




立ち退きにより


人々の暮らしすら失ったそこは


既に『街』とは呼べない空間に見えた




住人の退去が早かった建物から


順次取り壊しに着手するのだろう




所々


フェンスやテント生地で囲まれた一角や


僅かな廃材を残して


既に空き地と化した場所も幾つか見える




計画通りにいけば


来春には


ここに巨大なマーケット・タウンが出来上がる筈だが


今はその姿を想像する事すら難しい




風が吹いて


霜月の


散切りにしたおかっぱの様な


長い髪を揺らす




翳が案内する形で


死体が発見された現場を


事件の発生順に見て廻る事にした




「どうですか?

何か感じる物有りますか?」




翳の問いに


霜月は何も答えなかった




実際の街並みや距離感を知る事で


そこに


何かしらの因果関係が見えればと期待したが


残念ながら


犯人の『正体』や『位置』を連想させる様な物が


何一つ得られない事に


霜月は少なからず苛立ちを覚えていた




「俺達が囮になるしかない」




霜月の言葉に翳は


(やっぱりなぁ…)


と心の中で苦笑した




『犯人』が無差別な通り魔ならば


文字通り自らが『餌』になって


向こうから襲って来るのを待つ…




霜月らしい考え方だった




「僕が襲われたら、ちゃんと助けて下さいねぇ」




翳の冗談に


霜月は何も答えず


無表情のまま背中を向けた…














純由と舞姫は


示し合わせた通り矢吹町公園で落ち合い


公園の一角で立ち話を始めていた




「それで…?劍君は今度の事件は『仕事』絡みだって言ってるわけ?」


「あぁ…何の確証も無ぇらしいけどな」




夕暮れ時が近付き


気温が少し下がった様だった




風が吹き抜け


桜の花びらが公園内を舞う




「…っつう訳でよ、犯人探し手伝ってくれよ」


「えーっ、これからぁ?」


「当たり前だろ

もたもたしてっと4人目が喰われちまう」




言いながら純由は


(…そうだよな、喰われたんだよな…)


と自問していた




猛獣でも


人でもない何かが


その場所に居合わせた人間の体の一部を


無差別に喰った…




その想像は


決して気持ちの良い物ではなかった




「な、もう少しで暗くなっからよ

得意のアンテナ張って『コネクト』してみてくれよ」


「いやよ、今夜観たいドラマ有るんだもん」


「俺だってガンダムの再放送我慢してんだぜ!」


「純由君てばお子ちゃまなんだから…

…うんっ!?

な…何これ…?」




突然舞姫の表情が一変した




「どうした?」


「何て…大きくて邪悪な『気』…」


「感じるのか!?…犯人か?」




舞姫は


全身に走る悪寒に思わず


自分の体を抱きすくめる様に両腕を掴んだ




「どこだ!?」


「待って…近いわ

…あっち!」




舞姫は


吐き気すら伴う悪寒に耐えながら


線路の向こう…


駅の北側を指差した




「チィッ…まだ明るいってのに現れやがったのか

舞姫ぃ!見失わねえ様にしっかりトレースしとけ」




純由の言葉に


返事をしようとした瞬間


舞姫の体から突如悪寒が消えた




「駄目っ…捕まえる前にどっか行っちゃったぁ」


「何だってぇ!?」




とりあえず2人は


駅前を走り抜け


踏切から駅の反対側へ向かう事にした




夕方のラッシュ時間に入って


上下線とも断続的に列車が通過し


遮断機の前には


人垣と車の列が出来ていた




その警報音に混じって


遠くから


別の音が近づいて来た




「チィッ…間に合わなかった…」




開かずの踏切に苛立つ純由の耳に


急速に近付く


パトカーのサイレンの音が聞こえた…














霜月は


数台のパトカーのサイレンが


自分達の居る場所から


数区画離れた場所で止まったのを知って


心の中で舌打ちした




(読みが甘かった!)




自らを囮とする為


これ迄の事件現場から


僅かに外れた北側の一角を巡回していたが


サイレンの音は真逆の南側


つまり


より駅に近い場所で停止していた




(やはり茜を連れてくるべきだったか…)




自分と翳には


茜の様に


『連中』を『感知』する力は無い…




それを知りながら


自分達だけで


確証くらいは掴める筈だと考えて先走りしたのは


霜月の


『若さ』の為せる業かも知れなかった




そして自分の判断を


迂闊だと認めたくないのもまた


若さ故であろう




霜月は


サイレンが消えた方向に向かって自然に足を早め


翳は無言のままその後を追った







純由と舞姫が


漸く線路の反対側へ着くと


既にその路地には


3台の警察車両が赤燈を回したまま停車し


騒ぎを聞きつけて集まった十数名の野次馬を


警官達が周囲にテーピングを施しながら


大声を張り上げて下がらせようとしていた




その人混みの中に


見慣れた制服姿が立っている事に


純由はすぐに気付いた




「劍…!来てたのか!?」




劍は純由と舞姫を一瞥すると


「やられた、4人目だ」


と短く言った後


「今度は頭だ

喰うペースが上がってきてる」


と言葉を繋いだ




「一瞬…感じたのよ

凄く強くて邪悪な『気』…」




舞姫が劍の横顔を見ながら言った




正に


被害者を喰おうと『実体化』した瞬間だったのだろう…


そう思いながら


劍は自分の視界の先に


無意識に焦点を合わせた




人混みと


それらを押し下げる警官と


更に現場を挟んだ反対側の人混みの向こう…




その相手も


偶然同じタイミングでこちらに気付いた様に見えた




偶然…?


いや…




その視線の先には


同じくこちらを見る


霜月が居た…








霜月の方も


死体の第一発見者らしき学生が


警官に職務質問されているのを目の端に捉えた後


明確な自覚の無いまま


反対側の人垣の先に視線を移したに過ぎなかった




そこに


今朝ぶつかりそうになった


『目つきの悪い不良』が居て


恐らく自分と同じタイミングで


こちらに気付いたらしい事に


不思議な感覚を覚えていた




2人の距離は


優に十数メートルは在ろうし


互いに対局する


人垣に阻まれた後方に位置しながら


その存在に気付き


しかも


『相手も同時に気付いたであろう』と


知覚出来た事が奇異だと感じた




それは劍も同様で


その漠然とした違和感に


数秒間視線を止める事になり


2人はあたかも


大きな隔たりを挟んで


暫し見つめ合う格好になった




劍は霜月の横に


跳ねた癖毛が特徴の


『愛想の良いもう1人のチビ』が居る事に気付いて


学校の帰り道に


たまたま近くを通りかかったのか…


という程度の理解に思考が流れてしまったが


霜月は


全く別の方向に考えを巡らせていた




劍の横に居る2人の内


同じ学ランを着た男の髪型を認めて


翳の報告の中の


『前髪で顔が半分隠れた学生』というフレーズを


思い出していたのだった




そして


今朝のあの男の身のこなし…




「どうしました?霜月さん」




翳に声をかけられ


霜月は視線を翳に戻した




「いや…

それより、これは間違いなく俺達の仕事だ

今夜、茜と打ち合わせをする」


「ええ、その方が良さそうですね」


「それに…」


「はい?」


「既に組織が動いてる」




そう言うと


霜月は人垣に背を向けて歩き出し


翳は後に従った




霜月が


何を根拠に『組織』の事を口にしたのか


翳には当然知る由も無かったが


自分の中で確信を得た結論については特に


霜月は余分な事を喋りたがらない性格である事を


翳は良く理解していた




だから


何も訊かず


(霜月さんがそう言うんだから、きっとそうなんだろうな)


と納得をする




また


そんな翳だからこそ


人間嫌いの霜月が唯一


一緒に居て不快感を感じない存在で居られるのだった…








「劍、どうした?」




純由もやはり


劍が急に黙り込んだ為


翳が霜月にしたのと同じ様に声をかけた




「ん…いや…」




劍は曖昧に濁しながら


「とにかく…5人目が出るのは時間の問題だ

舞姫の力が必要になる

頼めるな?」


と舞姫に顔を向けて言うと


舞姫は真剣な表情で頷いた




もう一度反対側の人垣を見たが


既に『生意気なチビ』達の姿は見えなくなっていた




「1人喰われた以上、今日はもう現れる事は無いだろう

明日は『仕事』の装備で集合する

そろそろ『本部』も何か言って来るかも知れな…」


「さすが、東條君ね

御明察よ」




劍の言葉が終わらない内に


背後から声がした




「光流…!?」




振り返ったその場所には


桐生キリュウ 光流ミツル』が立っていた




「君達の事だから、きっともう動いてるだろうと思って来てみたら、案の定…」




光流は


我得たりと言いた気な笑みを浮かべ


長い横髪を右手で掻き上げながら言った




年齢は二十代半ば


長い黒髪を後ろで1つに束ね


季節を問わず


均整のとれたボディラインにフィットした服を好んで着る




ノンフレームの眼鏡も


彼女の端正な顔立ちに良く似合い


知的な印象を与える




劍は


その大人びたファッションや


如何にも『年上』である事をアピールする様な


仕草だとか口調だとかが


あまり好きではなかった




どこか見下されている様に感じてしまうのだ




それは


光流の美貌に対する


若き青年故の気後れであったり


若さそのものから発する反発心も有るだろうが…




(似てるんだよな…)




自信有り気に上からの目線で接して来る女性に


本能的に苦手意識を持ってしまう一番の要因は


少年期の劍に『仕事』を仕込んだある人物と


どこか共通点が有るからに他ならない




(まぁ、確かに美人なんだろうけどさ)




劍は自分の中で光流を評価する時に


いつもそうして締め括るのだった




「本部からのオファーよ

今夜集まれて?」




光流は


折り畳んだ紙片を胸ポケットから


二本の指に挟んで取り出し


ヒラヒラと振って見せた




(やっぱ、偉そうなんだよな)




劍は返事をする代わりに


もう一度事件現場の方に目を遣った




(まぁ、確かに美人なんだろうけどさ)




野次馬と警官の数は


数分の内に倍に増えていた…











夜7時…




黒羽神社の境内は


周囲の街灯の明かりも届かず


住宅街の中に在りながら


そこだけまるで異空間の様に


静寂の闇に包まれていた




本殿横の


住居用の建物の一室にのみ明かりが灯っていて


それだけが


広い敷地内で唯一


人の存在を認識させている




その一室…


所謂『居間』に当たるその部屋では


3人の人物と1匹の黒猫が


夕食の時間を迎えていた




内2人は霜月と翳


もう1人は宮司の茜で


茜の膝の上で焼き魚のおこぼれを待っているのが


神社に長く住みついている


黒猫の『サンシロー』である




「では…『組織』も動いているというのですね?」




茜は


膝の上のサンシローに


焼き魚の解し身を食べさせながら言った




「多分間違いない

それらしい連中が今日の現場に居た」


「えー!?そうなんですか?」




霜月の言葉に


翳は素っ頓狂な声をあげたが


霜月は意に介さない様子で言葉を続けた




「被害者達に共通点は無い

犯人は無差別に人を襲う…しかも物理干渉が可能なタイプ…という事しか、俺達には分かっていないがな」


「いずれにしても、霜月様の言う通り『組織』が動いているなら…」


言いかけた茜の膝の上から


サンシローがゆるりと下りるのを目で追いながら


「…犯人は、人や獣の類ではないのでしょうね」


と茜は言葉を繋いだ




霜月と翳にとっては


保護者代わりでもある茜は


まだ二十代前半だと見えるが


2人とも


彼女の正確な年齢や


生い立ち等については何も知らない




行きがかり上ここで一緒に生活する様になり


もう5年になるが


茜は他の誰のに対しても同じく


自分より年下の霜月達の事も


『様』付けで呼ぶ




その丁寧過ぎる言葉遣いと


漆黒の長い髪と


和服以外の衣類を一切着けない習慣が


宮司である彼女を


より浮き世離れしたイメージにならしめていた




「『組織』のチームには先を越されたくない

明日は一緒に出てくれ」


「そうですね…

依頼人の有無はともかく、きっと『組織』からは報酬が出るのでしょう

あなた方2人の学費だって、馬鹿になりませんものね…」




茜の言葉に


翳は苦笑いを浮かべながら


「はぁい、頑張って稼ぎまぁす」


と答えた…














皆天市の地下には


無数の人工の『河』が流れている




第一次宅地化計画の際に


天然の河川が少なく


水捌けの悪いこの地域の改善策として


大掛かりな


地下下水道の施工が行われた為であった




黒羽神社の晩餐と同じ時刻


普段は誰も足を踏み入れない筈のこの地下水脈の一角に


吊り下げられた懐中電灯の明かりの下に集う


数名の人影が有った




劍と純由と舞姫の3人と


光流であった




「何度も言う様だけど、この集合場所、どうにかならない?」




光流は


ハンカチで口元を押さえながら言った




市内各地からの


汚水や排水が流れ込んで来る場所である為


当然の事ながら混ざり合った異臭が


常に充満している




「全員の家からの中間地点で、一番人目につかない絶好の場所なんだよ」




この場所を


最初に見付け出した本人でもある純由が


口を尖らせて言った




「それは分かるけど…」




光流はそれでも不服そうに眉をしかめた




「本部報酬が決まったのか?

依頼人は出ない案件の筈だが?」




構わずに劍が本題を切り出す




彼等の行う『仕事』は


通常


それを依頼しようとする誰かからの『報酬』が伴う




どうしても依頼人が出ない場合には


特例で


『組織』の本部が指示を出し


報酬を支払う場合が有る




ここまでの調べでは


被害者達に何ら共通点が見当たらず


次の被害者となる事を懸念する様な依頼人は


現れないと考えるのが普通だった




「いいえ、依頼人は居るわ」


「えっ?マジかよ」




純由が思わず聞き返した




「誰なんだ?」


「あなた達が関知する事ではないけれど…依頼人は、あそこにマーケットを建てようとしてる建築会社と皆天市その物…の、両方よ」


「成る程な…」




劍は即座に合点した




あの場所でこれ以上の猟奇事件が続けば


捜査の為の工場遅延は勿論


建設計画その物が危うくなる可能性も有る




既に工事に着工している建築業者と


この計画に便乗して


私腹を肥やそうとする政治家達にとっては


これ以上のスキャンダルは死活問題になるだろう




「本当は4人目が出る前にやって欲しかったんだけど…

昨日の今日じゃ仕方ないわね」




光流は


独り言の様に言った…








光流は


3人を一瞥して話を続けた




「今日までの事件は、いずれも無人の住宅街で発生していて、範囲は半径200メートルって所ね

発生地点に法則性は見受けられず…キャッ」




不意に


足下を鼠が走り抜けたのに


光流は驚いたらしかったが


「コホン」と一つ咳払いをして真顔に戻り


「それ故に…藍沢さん、あなたの『能力』が必要になるわけ…

分かるわね?」


と続けた




舞姫は


無言のままコクンと頷く




舞姫の『能力』…




この日の夕方


離れた場所に現れた『犯人』の『気』を感じ取った


あの力の事である




それ意外にも


彼女の特異な能力には


重要な役割が有るのだが…




「報酬は着手金として30

頭数で割って明日それぞれの口座に振り込まれるわ

ミッション完遂で更に成功報酬30

期限は『より速やかに』、くれぐれも5人目の被害者が出る前に片付ける事…

やってくれるわね?」




腕組みをした劍は返事をせず


斜に構えて光流を見たまま


(鼠が怖いんだ…)



まるで別の事を考えいた




「もっとも…君達に『NO』の返事は許されないんだけど」




そんな事…


分かっているから


3人とも返事をしないのだ




そういう


分かり切った事をわざわざ口にするのが


『出来る大人の女』の証とでも言うのだろうか




(可愛気が無いんだよ

鼠が怖いくせに)




劍は思いながら


一方で


明日にも対峙するかも知れない


今回の『敵』の正体に


考えを巡らせていた…











翌朝


劍はいつもの様に愛弓と家を出て


三叉路で別れた後


昨日


霜月とぶつかりそうになった四つ角にさしかかった時に


少しだけ事件現場での遭遇の場面を思い出した




2人のチビとは普段


その角を曲がった後の


直線の路地の途中ですれ違うのだが…


この日は2人には会わなかった




(もう行っちまった後か?)




劍は何となく気になった程度だったが


実際には


霜月と翳の2人は


劍とすれ違うこの路地の通行を


敢えて『避けた』のだった







そして放課後


霜月と翳の2人は


私立柊葉女学院に向かった




正門が見える位置で張り込みを行い


長い茶髪を


両横でツインテールに結んだ背の低い少女…


舞姫が出て来るのを待った




「あれだ」




霜月が


出て来た舞姫を指して言った




「あんな可愛い子なんですか?

全然同業って雰囲気しませんね」


と言う翳に霜月は


(お前もだ)


と心の中で合いの手を入れた




「あ、友達と帰るみたいです」




翳の言葉に


再び舞姫の方に目を向けた霜月は


思わず


「あの女…!」


と声を発してしまった




舞姫が


遅れて出て来た愛弓と合流する場面だった




「…?

知り合い…ですか?」




霜月の様子に驚いて翳が訊く




翳には


霜月から


一瞬


怒気を含んだ『負のオーラ』が発した様に感じられたのだ




知り合い…?


少なくとも向こうは霜月を知らないから


知り合いでは…ない




だが霜月は


その栗色の短い髪の少女を


ずっと以前から知っていた




「い…いや…」




霜月は取り繕う様に否定した




今は


あのツインテールの少女を


相手に気付かれない様に尾行し


行き先を確認する事が先決だ




(この学校だったのか…)




最後にあの家から出て来る少女を見たのは


まだ中学生の時だった




(まさか…仲間なんて事ないだろうな)




それは


霜月にとっては不愉快な想像でしかなったが


どうやら杞憂だったらしい




何本目かの交差点で


2人は互いに「明日ね」と声を掛けながら


無邪気に手を振り合って別れた




その限りなく自然な様は


少なくとも短い髪の少女は


『仕事』に絡んでいない事を物語っていると思えた…








舞姫は


校門を出た直後辺りから


極めて微弱な


『気配』を感じていた




その気配は


愛弓と別れた後も続いていたが


その正体が


人である事を認識出来る程明確なレベルではなかった為に


一度だけ後方を振り返った後


それっきりその気配が薄れた時点で


気にする事をやめてしまった




舞姫の様な能力の持ち主…


言わば『感応力』の強い人間にとっては


それが日常的な感覚であった事と


そうでなくとも


舞姫には幼い頃から


特殊な訓練を積んできた経緯が有り


通常の『人』による尾行等の類であれば


後方を目視する事無く


その人数や距離を知る事が出来るのである




そういう点では


この時感じた物は


気配と呼ぶには余りにも希薄過ぎた




舞姫は


自身の能力の高さ故に


その気配を『人』だとは認識しなかったのである







舞姫の後方からは


霜月と翳が追尾していた




霜月の直感により


昨日の現場に居た3人は


『組織』の人間であろうと推測出来た




だとすれば


その規模と情報量を考えれば


自分達以上の情報を有して動いているに違い無い




そう判断した彼等は


顔が判明しているメンバーの中で


一番追跡が容易そうに見える舞姫をターゲットに定めて


その動きを追い


『漁夫の利』を浚えれば…と考えたのだった




個人で動いている彼等にとっては


一番合理的な方法に思えるが


『キュートな女の子』という


見た目の印象のみから


舞姫を尾行対象に選んだ事が


最大の失敗と言えた




霜月と翳は


尾行を開始して間も無く


その失敗に気付く事になる




霜月達も決して油断していた訳ではない




武術の心得が有る彼等は


追跡や尾行の専門家ではなかったが


気配を消す事と


絶対に気付かれない間合いを取る努力は


少なくとも怠っていなかった




にも関わらず


友達と別れた後の少女の歩調が


不定期にそのリズムを変え始めたのだ




あたかも


追跡者の有無を確認するかの様に…




(この距離で気配が分かるのか…?)


(いや、気配は完全に消している筈だ…!)




よりによって


最悪の相手を選んでしまったかも知れない…




その不安は


少女がこちらを振り返った時に


確信に変わった




だがそれは同時に


彼女がただの女子高生ではなく


間違い無く『組織』のメンバーである事を裏付けていた




いずれにしても


霜月と翳の2人は


舞姫が一度帰宅した後


再び外出し


劍と純由等と合流するまでの間の追跡に


極度の緊張を強いられる事になったのだった…








霜月と翳にとって


私服に着替え


家を出て来て以後の舞姫の行動は


不可解以外の何物でもなかった




まず家を出て来た時の服装が


フリルの付いたブラウスの上に


ピンクのカーディガンを羽織り


花柄のミニスカートにリボンの付いたハイソックスを履き


肩からは


2人が見た事も無いキャラクターを型取った


大きなポシェットをぶら下げていたのである




どう見ても


これから遊びに行く格好にしか見えない




そのまま軽い足取りで駅の方へ向かい


南口の商店街に着くと


ブラブラとウインドショッピングを始め


ついには


駅前のデザートショップでアイスクリームを買い


ベンチに座ってペロペロと食べ始めたのだ




「本当に…これから動くんですかね…?」




さすがに翳が訊くが


霜月にも答え様が無かった




「まだ分からん…油断するな」




実のところは


彼女の余りの脳天気な振る舞いに


霜月も不安を覚え始めていたのだ




しかし


こちらが完全に消したつもりの気配を


察知できる程の相手だ




今の行動だって


こちらの目を誤魔化す為の


カモフラージュかも知れない




ここでどちらかが気を抜けば


たちどころにあの少女はこちらの存在に気付き


姿を眩ませてしまう可能性も有る




それでは


極度の緊張感の中


精神力をすり減らしながら


ここまで気付かれずに追跡を続けて来た苦労が


全て無駄になる…







そんな彼等の葛藤とは裏腹に


当の舞姫の中には


とっくに警戒心は無く


ウインドショッピングもアイスクリームも


集合までに時間が有ったから


ただ『寄り道』したに過ぎなかった




間違い無く彼女は


これから仲間と合流し


その身を危険に晒す事になりかねない


極めて困難な『仕事』を開始する直前なのである




ただ


舞姫という少女は


超が付く程のマイペースであり


その行動原理を


一般的な常識で判断する事が難しい…


所謂『天然少女』なだけであった







「油断するな…」




霜月は


自分に言い聞かせる様に


同じ言葉を繰り返した




舞姫という少女の


本質を知らない事が


彼等の不幸だった…














同じ頃…




劍は


下校後


白石家二階の自室に帰り


制服を脱ぎ捨て


『仕事着』への着替えを始めていた




赤のTシャツに


ボタンダウンのブルージーンズと


黒のロングブーツを履き


レザーのライダージャケットを羽織る前に


鍵の掛かった机の引き出しの中から


ホルスターの付いた革ベルトを取り出し


Tシャツの上から装着する




左の脇腹に


ベルトに下がったナイフが当たり


その重みが


ベルトを通じて肩にかかる




ホルスターからナイフを抜き取り


その刀身の鈍い輝きと


そこに刻まれた古代文字を見つめた後


クルリと指先で回して


逆手に持ち替えてから


再びホルスターに収める




劍が『仕事』の前に


必ず行う儀式みたいな物だった




ジャケットに袖を通して


壁に掛かった時計を見ると


間も無く


愛弓が帰る頃合だった




顔を合わす前に


出なければ…




「どこか出掛けるの?」と訊かれて


どんな理由を言うにしろ


愛弓に


『嘘』を言わなければならないのが


嫌だから…




劍は窓を開けてベランダに出ると


フワリと


まるで宙を舞う様に柵を乗り越えて


そのまま二階の高さから


庭と道路の境の壁をも越えて


地上に着地した




周囲に人目が無いのをもう一度確認してから


愛弓が帰って来るのと反対の方向に歩き出し


純由達との集合場所である


矢吹町駅へ向かった







ツインテールの少女が


駅至近で2人の仲間と接触するのを確認した時に


霜月は心の中で


(よしっ…)


と呟いた




果たして3人は


駅の北側へ回り


事件現場であるゴーストタウンへ足を踏み入れた為


その時点で翳は離脱し


付近で待つ茜の元へ走った




事態は急速に


霜月達の想定通りに動き始めていると思えた




この後あの3人は


自分達の目標を見付ける事に


恐らく神経を集中させる為


追跡はより容易になる




(上手く見付けろよ)




霜月は


ほくそ笑む様な気持ちになりながら


その表情は


変わらず無表情のままだった…











劍と純由は


舞姫を前に歩かせ


後ろから追従する形で


夕暮れが迫る無人の住宅街を徘徊した




光流の分析通り


計4回の事件の発生地点には


法則性が見当たらない




であれば


舞姫の『感応力』だけを頼りに


『その辺』に『現れるかも知れない』相手を


こちらから見付け出すしかない




『組織』の一員である彼等も


霜月等が期待する様な特別な情報は


何も持っていなかったのである




事件が起きて間も無い第3及び第4現場付近は


立ち入り禁止になっていて近付く事が出来ない為


それ以外のエリアを地道に歩き


彼等は探索を続けた







「もー疲れたぁ!

お腹空いたよぉ…」




8時近い時間になって


さすがに舞姫が音を上げ始めた




「これだけ探してキャッチ出来ねえってなぁ…もう別の場所に移動しちまったんじゃねえのか?」




純由も舞姫に同調する様に言ったが


劍はそれを否定した




「4つの事件は、周期も時間もバラバラだが、全部この町の中で起きてる

つまり、この場所の『記憶』に縛られてる奴って事だ

…この辺りに居るに違いない」




劍の断定的な言葉は


純由と舞姫を充分に納得させる物だった




そうしながら3人は


その日初めて入る区画に足を踏み入れた




そこは


約2週間前に


初めて事件が発生した第1現場へ続く路地だった




4件の事件は同一の地点では発生していない為


再度同じ場所に現れる可能性は低いと考えて


敢えてこの場所を後回しにしていたのだ




ところが…




「…待って!感じる」




舞姫が急に立ち止まった




「居るのか!?」


「昨日の奴か!?」




舞姫は


自分の額から5センチ程離した位置に指を立て


視線を前方に固定しながら


ゆっくりと上半身を半回転させた




その真剣な表情からは


普段の『天然少女』の面影は


完全に消えていた…










舞姫の上半身の回転が


取り壊された家屋跡の


廃材が積まれた空き地の方を向いた所で止まった




「うん…間違いない

昨日の『子』だわ

…怒ってる…泣いてるの?」




舞姫は


既に相手との『シンクロ』を始めていた




「捕まえられるか?」


「まだ気付かれてない…多分、大丈夫」




舞姫は


右手の人差し指と中指を立て


体の前で素速く




斜めに


指で空を斬る様に動かし始めた




その動きは


陰陽道に於ける『早九字』に似ていた




「さぁ…いい子ね…

こっちへおいで…」




舞姫の息遣いが


鼻腔からの腹式呼吸に変わり


その眼差しに


緊張が宿る




舞姫の


『コネクター』としての『仕事』が


ついに始まろうとしていた…








『コネクター』…




死者の『霊魂』とリンクして


その思惟や


記憶を共有する能力を有する者をそう呼ぶ




一般的に知られる恐山の『いたこ』や


霊媒師による『口寄せ』等と


同じ種類の能力者である




舞姫は


劍と純由とのチームの中で


その『コネクター』の役割を担っていた




生まれついての霊感体質だった彼女だが


初めからこの『仕事』の宿命を負っていた訳ではない




彼女は


『甲賀流忍術・蜻蛉派』の


正統後継者という隠れた一面を有する


言わば


現代に生きる『くノ一』なのである




その特異な家系故に


幼い頃から武術や体術は勿論


様々な苛烈を極める鍛錬を受けながら育って来た




そして


その精神修行の中で


生まれつきの感応力に更に磨きがかかり


その潜在能力を


急速に開花させていったのだった




『コネクター』の役目は


ターゲットとなる『霊魂』をサーチし


見つけ出したらリンクして『同化』する




一般的な霊媒師の類と違う所は


その『霊魂』の


生前及び死後の記憶をトレースし


言葉ではなく


ビジョンを直接『転送』する事により


他のメンバーにトレースした記憶その物を


正確に伝える能力をも持っている事である




俗に言う『テレパシー』と呼ばれる超能力と混同しそうだが


『コネクター』のそれは


死者の『霊魂』と


生きた人間の持つ『霊魂』を


自分自身を媒介し


『共鳴』させる事によってイメージを伝えているに過ぎず


通常時に他人の意識を覗き見たり


言葉を使わずに思っている事を伝えたりが出来る訳ではない




そうして全員が


その『霊魂』の記憶を共有した後


『コネクター』の最後の『仕事』となる


『実体化』が行われる







「『同化』できるか?」




舞姫の背後から劍が訊く




「…うんっ、捕まえた

何だか『凄い子』よぉ…

『同化』、いくわ

フォローよろしく!」




舞姫の肢体から


霞の様な


オーラが立ちのぼり始めた…












突如


舞姫の体が硬直し


纏うオーラの動きが激しくなった




前傾姿勢に体が折れたかと思うと


次の瞬間には


跳ね上がる様に弓なりに反り返り


目は見開かれ


歯のぶつかり合う音が聞こえる程に


口を激しく開閉し始めた




『同化』が始まったのだ




「…か………いた……」




舞姫が


言葉を発し始めたが


その声は


チューニングの合わないラジオの様に不明瞭で


しかも別人の様に嗄れている




「…お腹…空いた……マ…マ…」




辛うじて聞き取れる言葉だけを繋げると


確かにそう聞こえた




「子供?」




劍は思わず呟く




あまつさえ無差別に人を殺害し


その体の一部を


もぎ取るか咬みちぎるかといった残忍な手口から


劍は漠然と


猟奇的な殺人狂をイメージしていた




少なくとも…


子供だとは考えもしなかった




「早…帰っ…来て…おじさん…方が大事…の?…ママ…マ…お腹空い…よ…」




母親に見捨てられた


子供である事は間違いなさそうだった




(…嫌な『仕事』になる…)




劍は


心の中で唾棄したかった




死因は


餓死…か?




「親に捨てられたガキってか

ケッタクソ悪い話だぜ!」




純由も


同じ思いの様だった




「舞姫、記憶を『転送』しろ」




本当は


見たくない…




そう思いながら


劍は舞姫に指示を出した…








彼等の『仕事』を成立させる上で


『霊魂』の記憶を共有し


生前から


霊体となり現在に至るまで


その者が何を行ってきたか


そしてその行為にはどんな理由が有るかを知り


その上で


『やり直し』が利くか否かを判断する事は


避けて通る事の出来ない必須事項のひとつだった




『霊魂』と同化し


目から涙


口元からは大量の涎を流しながら


舞姫は


劍の『転送』指示を明確に理解し


劍と純由の魂との


『共鳴』に移行しようとした




ところが…




「あれ!?何でぇ!?」




突如舞姫の表情と声が元に戻り


本人自身が困惑の声を上げた




「どうした!?」


「分かんなーい

急に抜けちゃったのよ…

どうしてよぉ?」




口元の涎を拭いながら


舞姫は戸惑いを隠せない




『霊魂』側の意志で現れて消えたならともかく


舞姫レベルの術者が完全に『同化』している状態で


『霊魂』の方から離れて行く等


その行程上有り得ない事なのだ




「何が…起きたんだ?」




劍にとっても


初めて対面する現象だった




その時…




「…お腹…空いた…マ…マ…」




彼等の頭上から


先刻まで舞姫が発していたのと同じ声が聞こえ


3人は一斉に上を見上げた




廃材の積まれた空き地の横


劍達の立ち位置のすぐ目の前に


まだ壊されていない


三階建て程度の店舗ビルが有る




その屋上に


3人の人影が立っていた




声の主は


一番手前の


オーラを纏った


白い着物を着た女性に違いなかった




「コネクター!?」




純由と舞姫が同時に声を上げた




そしてその背後に立つ2人を見て


劍が声を上げた




「あいつら…!?」




見慣れた制服姿ではなく


2人ともラフな私服を着ていたが


毎朝擦れ違う『2人のチビ』に違いなかった







霜月は


正に劍を見下ろす格好で


「この獲物は俺達が頂く

『組織』の犬は下がれ」


と言い放った




「『はぐれハンター』か…!!」




劍の言葉に


純由と舞姫が思わず劍を見る




「『ハンター』ですって…?」


「同業…なのか?」




『組織』と『はぐれ』


2つの異なるチームが


運命的な遭遇を果たした瞬間だった…







第1話




二話へ続く…









詳しくは述べません


第2話へ続きます


霜月と劍

激突です





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