―14― ユメカ、煽る! 前
管の形をした〈ビッグ・トレント〉を口で咥えて、息を吸いながら先端にライターで火をつける。
それからゆっくり深呼吸して、肺の中に煙をいれる。すると、甘みとほろ苦さが混ざったハーブのような風味が舌に広がった。
「ぷはぁああああ、やっぱポーションうますぎるんだけどぉおおおおおッッ!!」
思わず絶叫しちゃう級のおいしさだね!
【おいしそうに吸っていて草】
【かつてこれほどまでにポーションをおいしそうに味わうものがいただろうか】
【どうみてもこれは○麻ですね】
「あぁ~、おいしすぎるんだけど……っ!! ドゥフフ、ポーション吸っているときがいちばん生きているって感じがするー!!」
【笑い方が相変わらずきもい】
【〈ビッグ・トレント〉ってどんな味なの?】
【味の感想聞きたい】
【ねぇ、今どんな気持ち?】
味の感想をまとめるコメントが多いな。
食レポするのも配信者としての義務だよね。そうだな……。
「わたしは今、自由の大地にいる。荒野に立っていて、これから幼馴染みとバイクでドライブに行くんだ。『見ろよ、このバイク。星条旗が塗っているんだぜ、いかしているだろゥ!!』 デュフッ、デュハハッ! これからわたしは自由を求めて旅をするんだぁあああ!!」
味の感想をできる限りかっこつけて言う。
【は?】
【なにを言ってんだ、こいつ?】
【うーん、これだからポーション脳は】
【ポエムは求めていない定期】
「あれー? 思っていた反応と違うんだけどー?」
せっかく期待に応えて味の感想を言ったのに。
「それじゃー、二本目いくぞー!」
【は?】
【ん……二本目だと?】
【ポーション乱用かぁ?】
なぜかみんな微妙なコメントをするんだど、なんでだ? まぁ、どうでもいっか。
よっしゃー、二本目だーっ!
「うぉおおおおおおお! やっぱうめぇええええええっ!! よーしっ、ユメカ今、最高に気分がいいから、リスナーからリクエストを募集するぞー! ユメカにやってほしいことコメントに書き込んでくれー! どんなリクエストでも応えるぜ!」
そう言うと、コメントでやってほしいことが大量に書き込まれる。
【ダンジョンの深層に行ってみて】
【強いモンスターと戦ってほしい】
【ダンジョンの深層にGO!】
【無双してきて】
【水着になって】
【下の階層にいって】
んー、みんなの反応を見るに、わたしにダンジョンの下層へと進んでほしいらしい。ダンチューバーなるものみんなの期待に応えないとね!
「よし、今からダンジョンに下層にいきまーす!」
さっそく乾燥中の〈ビッグ・トレント〉や調合に必要な道具などを〈アイテムボックス〉に収納する。
その上で隠れ家から出ては下へと進む。
【ここの転移陣を使うと、いっきに124層までくだれるよ】
ふと、通路を進むと、床に光る魔法陣のような模様があった。コメントによるとこの転移陣を踏むといっきに124層にいけるみたいだ。
「んー、どうひぃよっかなー?」
すでにポーションは五本目だ。ちょっとだけ滑舌がわるくなってしまった。
【おい、やめとけ】
【124層は流石に洒落にならない】
【おい、誰だよ。煽ったやつ】
んー、コメント見る限り124層は相当危険なようだ。
「よし、いくぞー! ユメカは行くなと言われると行きたくなるタイプでぇーす!!」
【あ……】
【んー、この……】
【もうどうなっても知らねー】
コメントが不穏だけど、どうでもいっか。
124層に着いたけど、そこはとても大きな広場になっていた。
「グゴォッ!!」
ふと、モンスターの雄叫びが聞こえる。
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〈鎧ノ大熊〉
レベル:453
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無意識のうちに〈鑑定〉する。
レベル453ということはゴールデンミノタウロスほどではないが、十分強いモンスターだ。そのバグベアが一体だけではなく、目の前に10体以上いたのだった。