―13― ユメカ、〈ビッグ・トレント〉を調合する! 前
「やっと目的地についたー!」
無事、10層についたわたしは手を広げて喜ぶ。
【なにを狩るの?】
「んー、特に決めてないけど、ひとまず見つけたモンスターから狩ろうと思います!」
コメントに答えてると、早速モンスターが現れる。
前方で狼のようなモンスターがうなり声を上げていた。
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〈狼〉
レベル:10
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んー、コボルトかー。
コボルトってポーションの素材にならないんだよねー。テンションあがらないなー。
はっ、いけないいけない。
わたしは今後一切ポーションを飲まないんだった。
ポーションの素材になるとかもうどうでもいい!
「これからコボルトを倒そうと思います!」
それから短剣を手に突っ込む。
「ガウッ!」
と、コボルトが口を開けて突っ込んできた。
「うわっ」
驚いたわたしは短剣でどうにか攻撃を防ぐもそのまま尻餅をついてしまう。
「いったー!」
お尻を床にぶつけてけっこう痛い。うぅ……もしかして10層にくるのは無謀だったのかも。
【ポーションは?】
【ポーション飲め】
【ポーション飲めばこんなモンスター一瞬で倒せるだろ】
コメントがポーション飲めの大合唱だ。どんだけわたしにポーション飲ませたいのよ。
「もう、ユメカはポーション断ちするって言ったじゃないですか」
こうなったら、コボルトを倒してポーション飲まなくてもユメカは戦えるんだってことを証明しよう。
と、気合いをいれていた最中、スタスタ、と床をこすれる音がした。
見ると、そこには一体のモンスターが通り過ぎるところだった。
あのモンスターは――
「トレントだぁ!!」
【笑顔で草】
【めっちゃガン見してるwwwwww】
【脳みそをポーションに支配された女】
はっ、いけない。つい、喜んじゃった。
「ち、違うんですよ! その、トレントから採れる薬草で作ったポーションって大変便利な効果があるから喜んじゃっただけで、け、決してポーションが好きだから喜んだわけじゃないんだからね!」
【言い訳になってないぞwwww】
【言ってることめちゃくちゃで草】
【ツンデレかなwwwww】
でも、このままトレントを逃すのはもったいないなー。
「よし、今からトレントを狩りまーす!」
【ん? トレントを狩るだと?】
【え? ポーション飲むの禁止してなかった?】
「トレント狩るだけで、ポーションを飲むとはユメカは一言も言っていませーん。はい、ざんねんでしたー!」
【は?】
【うーん、このクソガキ】
【なに言ってんだ、こいつ】
【くそっ、殴りてぇ】
うるさいうるさいうるさいっ! だって、目の前にトレントがいたら狩りたくなるじゃん! そういう性なんだから、仕方がないでしょ!
「おらぁあああああっっ! トレント待てやごらぁああああああ!!」
逃げようとするトレントを叫びながら追いかける。もう、コボルトとか視界にすら入ってなかった。
「捕まえた! うひょひょひょーっ、トレントの香りサイコー! おらぁ、お前はもうユメカのもんじゃーい! 抵抗するなー、諦めろーっ!」
トレントから生えてる草を捕まえながら、短剣でザクザク突き刺していく。
【コボルトのときとテンション違くて草】
【すでにラリってるだろこいつ】
【ユメタンウッキウッキでワイもうれしい】
【笑い方がキモいwwww】
それから格闘するも数分後、ついにわたしはやったのだ。
「トレント討ち取ったりー!!」
【おめでとう】
【おめでとう】
【おめでとう】
【おめでとう】
「みんなありがとーう!!」
おめでとうというコメントと共に投げ銭もたくさん入っている!
「では、このトレントの素材でポーションを調合する配信を始めます!」
【ん?】
【あっ……】
【ポー禁するんじゃなかった?】
「はっ、そうだった。ユメカポー禁中だった!? ポー禁中にポーション調合しちゃダメだよね!」
【もう、ポー禁のこと忘れてるwwww】
【仕方がない。彼女の血はポーションでできているから】
ヤバい……っ、このままだとわたしバカみたいじゃん! どうにか、ここから逆転する方法はないかな!?
【SSSランクのポーション売れば、めっちゃお金になりそう】
はっ!? これだぁ!
コメントの一つを見てわたしはひらめいたのだ。
「そうだ! 調合したポーションは全部売ってしまおう!! お金のために調合するんであって、自分では飲まないからね! これなら、問題ないよね?」
【問題ないのかな……?】
【あっ、この流れは】
【果たして売るまで我慢できるのだろうか】
【我慢できないに1ペソ】
「みんなしてわたしのことバカにして! 例え、ポーションを作っても、ユメカはぜーったいぜったい飲まないんから!!」
わたしが、ポーション断ちできるってことをみんな見せつけてやる!!