―11― ユメカ、色々と学ぶ 後
「おはゆめ! 今日もみんなに笑顔の魔法をかけちゃうぞ。虹天ユメカです!」
翌日、わたしは池袋ダンジョンにきて小型ドローンを浮かせて配信を始めた。
【なんだその挨拶】
【なにそれ……?】
「えへへっ、ユメカだけの挨拶を考えてみました! こういうのって、なんだかアイドルみたいで憧れていたんですよね」
【まだアイドル設定諦めてなかったんだ】
【ポーション中毒者がアイドルは無理がある】
【今日はポーション密造の配信か? おら楽しみだぞ】
あぁああああああ、なんでこんなことになったぁああああ!!
ポーション中毒者だって言われてもちっとも嬉しくないし、それよりかわいいってチヤホヤされたいのに!
と、昨日までのわたしなら頭を抱えていたに違いない。
だが、今日のユメカは違う。
クックックッ……、とっておきの秘策を用意してきたのだ。
この秘策があれば、ポーション中毒者の汚名を今すぐ返上できる。
「コホン、企画の前に皆さんにお伝えしたいことがあります」
【おっ、なんだろ?】
【わくわく】
視聴者の注意を引きつけてから、わたしは大々的に発表した。
「ユメカは今後いっさいポーションを飲まないことをここに宣言します!」
そう、これこそがとっておきの秘策だった。
題して、禁酒でも禁煙でもなく禁ポー作戦!
これならユメカからポーション中毒のイメージを払拭できるに違いない。
【あっ……】
【無理そう】
【これは無理なやつですね】
【もって五日かな】
【いや、三日ももたないだろ】
「おおおぉぉい、お前らちょっと応援しろぉおおおおお!!」
わたしは天を仰いで叫んでいた。
【突然の大声で草】
【アイドルにあるまじき取り乱し方で笑ったwww】
【ついに本性を現わしたね】
やばっ、つい視聴者に叫んでしまった。
いけないいけない。ユメカはみんなのアイドル。もっとお淑やかでいないと。このままではせっかく築いたイメージが崩れてしまう。
「いっけなーい。ユメカ、つい取り乱しちゃいましたー。てへっ」
といって、自分の頭をコツンと叩く。
どうだ? わたしのかわいいアピールは。
【かわいい】
【かわいい】
【あざとかわいい】
【あざといアピール助かる】
よしっ、反応は上々。
視聴者はわたしのかわいさにメロメロになっている。今だったら、なにを言っても応援してくれるはず。
「みんなありがとう♡ ユメカがかわいいアイドル配信者になるためにも、ポーション断ち応援してくださいね」
【いや、応援は無理】
【それとこれは話が別】
【アイドル配信者は諦めて】
【ポーション断ち、一日もたたないことに俺はこの魂を賭けてもいい……!】
うるさぁあああああい!!
お前らがなんと言おうとユメカはポーション断ちするんじゃああああああ!