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―10― ユメカ、また謝罪配信する! 後

 華月リアンちゃんがどうしてここに?  急いで来たようで、彼女は肩で息をしていた。


「えっと……勢いで出てきちゃったけど、まず、ユメカちゃん、昨日はありがとう!!」


 突然彼女は頭をさげた。

 なんで、彼女がわたしに頭をさげるんだろう。


「その、昨日はちゃんとお礼が言えなかったから、それでユメカちゃんにお礼が言いたくてずっと探していたの。本当は今の配信が終わってから言おうと思ってたけど、いてもたってもいられなくて……、配信の邪魔してごめんなさい」

「えっと、なんでリアンちゃんがお礼を言うの? その、わたしこそたくさん迷惑かけて謝らなきゃいけない立場なのに」

「え?」


 と、リアンちゃんはわたしの言葉が意外だったようで困惑していた。


「だって、ユメカちゃんが助けてくれなかったらわたしは今頃死んでいたんだよ。ユメカちゃんはわたしにとって命の恩人。だから、どれだけユメカちゃんに感謝してもしたりないと思う」

「そ、そうなんだ……」


 頷くも心の底で納得できなかった。確かに、動画でわたしはモンスターを倒していたけど、戦っていたモンスターがただ弱かっただけな気がする。


「でも、リアンちゃんにたくさん迷惑かけたから、ユメカのこと嫌いになったよね……?」

「そんなことないよ!」


 食い気味でリアンちゃんは否定した。


「その、確かに昨日のユメカちゃんはめちゃくちゃだったし、驚かされっぱなしだったけど、でも、わたしは好きだよ。ラリっているユメカちゃん」


 そう言って、彼女は満面の笑顔を浮かべる。

 その表情にクラっときてしまった。

 惚れちゃいそうだ。女のわたしでこれだから、わたしが男だったら、完全に惚れていたと思う。

 でも、きっとお世辞で言っているだけなんだ。ラリっているわたしを好きな人なんているわけがない。


「あ、ありがとう……。けど、ダンチューバーはもう辞めようと思う。ポーション中毒者がダンチューバーを始めようと思ったのがそもそもおこがましかったんだよね」

「ダメ! ユメカちゃんはダンチューバーを続けるべきだよ!! だって、これだけの視聴者がユメカちゃんのことを応援しているんだよ! なのに、辞めるなんてもったいないよ!!」

「え……?」


 わたしは顔をあげる。

 どうせ批判コメントばかりだと思って、さっきからコメントを見ることができなかった。


【リアンちゃんのことを助けてくれてありがとう!】

【昨日の配信、めちゃくちゃおもしろかった】

【もっとポーション飲んでラリってる配信が見たい!】

【ポーション中毒者のユメカちゃんを応援したい!】

【もともとファンだったけど、昨日のユメカちゃんをもっと好きになりました】

【昨日の配信めちゃくちゃ笑いました。もっと見たいです】

【ポーション飲んでもっと暴れて欲しい】

【せっかくファンになったのにやめるなんて言わないで!】

【ポーション中毒者がなってもいいと思う!】


「うそ……」


 コメントのどれを見てもわたしのことを応援する内容ばかりだった。それに、応援するコメントと共に投げ銭を送る視聴者もたくさんいた。


「ユメカちゃん、ダンチューバーって、強いモンスターと戦えるだけじゃなれないの。ううん、むしろ弱くたっていい。むしろ、重要なのはおもしろい配信ができて、誰よりも輝くことができることがダンチューバーに求められる資質なの。昨日、ユメカちゃんは世界で一番輝いていたんだよ。それもとびっきり眩しい一番星だった。だから、ダンチューバーを辞めるなんてもったいないよ。わたしはユメカちゃんがもっと輝く姿が見たいな」


 どうしよう……。さっきから涙がとまらないや。

 憧れのリアンちゃんがわたしにこんなことを言ってくれるなんて、なんだか胸が熱くなる。

 もうわたしの中でダンチューバーをやめるという選択肢はなくなっていた。


「リアンちゃんありがとう。こんなユメカだけど、みんな応援してくれますか?」


【応援する!】

【がんばれぇえええ!!】

【続けてくれてよかった】

【応援する!】

【一生ついていきます!】

【ファイトー!】


 たくさんの視聴者が応援するってコメントをうってくれる。

 えへへっ、ユメカとっても幸せものだな。


「ユメカちゃんがダンチューバーをやめるっていうから慌てて飛び出してきたんだよ。でも、続けてくれるみたいでよかった。そうだ、せっかくだし、これからダンチューバーとして、どんなふうになりたいかここで抱負を語ってみるのはどうかな」


 リアンちゃんの提案にわたしは頷く。

 確かに、わたしがこれからどんなダンチューバーになろうとしているのか、みんな気にしているはずだ。

 とはいえ、わたしの目標はずっと前から決まっているんだけどね。


「わたしの夢は、華月リアンちゃんみたいにキラキラ輝くアイドル配信者になることです! だから、みんなユメカのこと応援してね」


【あ……うん】

【もう無理では】

【どうみてもお笑い枠では】

【お笑い配信者の間違いかな】

【アイドルとはいったい?(哲学)】

【え? ここってお笑い配信じゃないんですか?】

【アイドル配信者? ポーション中毒者の言い間違いかな?】

【ユメカはもっともアイドルからかけ離れてる存在だよ】


 あれぇええええ? おかしいなー。

 さっきまでみんな応援してくれる流れだったよね? なんで急に反応が渋くなったのかな?


「えっと、リアンちゃん、わたしもがんばればリアンちゃんみたいになれますよね?」


 きっとリアンちゃんなら肯定してくれるよね? そう思って、わたしは彼女に尋ねた。


「う、うん……が、がんばれば、なれるのかな……いや、でも……。ユメカちゃん、ファイト! 可能性は無限大だよ」

「え? リアンちゃん、なんで目を合わせてくれないの?」


【リアンちゃん困っていて草】

【ユメカは現実を見ろ】

【お笑い配信者の才能ならあるよ!】

【ポーション中毒者の対義語がアイドル配信者なんだよなー】

【ユメカをかわいい女の子だと思っている視聴者はもう1人もいないぞ】


 やめろぉおおおお!! わたしをそれ以上、ポーション中毒者って言うなぁあああああ!!

 お前らがなんと言おうとわたしはアイドル配信者になるんだよぉぉおおおお!!

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