―08― ユメカ、最高にラリる!!!??? 前
もうポーションをどれだけ飲んだか覚えていない。
ただ、ここにくるまでの間にポーションを飲み続けていたことは確かだった。
「あれー? リアンちゃんいないにゃー?」
ポーション飲み過ぎたせいでさっきからうまくしゃべれない。
「えーっと、んにゃ! あっちから物音がしたじぇえ。きっと、リアンちゃんだにゃー!」
物音がしたので、全力で音がしたほうへ向かう。
すると、牛の頭をした大男たちがいた。たくさんいる牛頭の中に一匹だけ金色に光っているやつがいる。どれも知らないモンスターだ。自分が知らないってことはポーションの素材にならないモンスターに違いない。
そんなモンスターに価値はなし。
「死ねぇ!!」
そんなわけで、全力でモンスターを殴った。
すると、金色の牛頭のモンスターは盛大にその場に倒れる。
あれ? なんかいつもより力が出るような……? わたしってこんなに力持ちだっけ? なんでだろ? まぁ、細かいことはどうでもいいか。
「あ~っ、リアンちゃん、ひょんにゃところにぃいたんだぁ!!」
牛野郎を殴ると、なんとリアンちゃんがいたのだ! やったー、会いたかったよぉ!!
そうだ、リアンちゃん会うのは初めてだからまずは自己紹介しないとね。
「あひゃひゃっ!! あっ、まずは、ヒクッ……ひぃこひょうかいひなきゃ! おはにゅめ! ひょうももみんにゃに笑顔ににゃる魔法をかけひゃうぞ、虹天ユメカでひゅ!」
以前、ダンチューバー用に考えた挨拶を披露する。
あぁ、リアンちゃんに会えたのうれしいなぁ。このまま抱きつきたいなぁ。抱きついて、ペロペロしたいなぁ。お願いしたら、許してくれないかなぁ。
「ガゥッ!!」
ふと、後ろから呻き声が聞こえた。
見ると、金色の牛野郎が殴りかかろうとしていた。
せっかくリアンちゃんと会話を楽しんでいたのに。許せん!
「うるせぇ! わたしとリアンちゃんの時間を邪魔するな!!」
そう言って、殴ると金色の牛野郎は後方へと吹き飛ぶ。
あっ、拳から血が出てる。強く殴り過ぎちゃったかな?
「見て、リアンひゃん! みぎふぇから血がでひゃった! あひゃっ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! おもひぃろ! おもひろいんでしゅけど!」
ドゴッ!
あれ? 世界が上下逆さまになっているんだけど?
「ぐへっ」
なんか体が地面に落下した! なんでぇ? あれー? なんでぇ?
「大丈夫!?」
リアンちゃんが心配そうに立ち上がる。キャー、憧れのリアンちゃんがわたしのことを見ている。なんか恥ずかしい!
「ふへへっ、このへいどだいりょうひですよ。このポーションがあればね! あひゃひゃひゃーっ、ポーションうめぇえええええええ!!」
ポーションを飲んでいると、それを邪魔しようと思ったのか、牛頭のモンスターが突撃してくる。
「ぐへっ」
無視してポーションを飲んでいたら殴られちゃった。おかげで、わたしの体はダンジョンの壁に激突する。
パリン、とガラスが割れる音がした。
あぁ!? わたしのポーションが!?
牛野郎が殴ったせいで、ポーションを入れていたガラス瓶が割れてしまったのだ。おかげで、中身がこぼれる。
「うっ……うぐぅううう!! うわぁああああっ、どうかいかないで! うわぁあああああああ!! ママァアアアアアアアア!! うわぁああああああ! こぼしちゃったぁあああああ! ユメカのポーションこぼしちゃった!!」
貴重なポーションなのに……。おかげで涙がとまらない。
「許せねぇ……許せねぇよなぁ、こんな仕打ち。まぁ、ポーションはもう一本あるから平気にゃんにゃんにゃけど」
ぷはぁああああ、やっぱポーションうますぎぃいいいい。
「でも、お前らは全員皆殺し確定だぞ☆」
ばきゅーん。と、牛野郎たちに指で銃撃するフリをする。ふふっ、完璧に決まったな。
「「グォオオオオオッッ!!」」
威嚇のつもりなのか牛頭のモンスターたちが一斉に咆哮する。うるさいなぁ。
「あひゃひゃひゃっ!! おっしゃー、全員同時にかかってこいやー!!」
なんでかわからないけど、負ける気がしないや! なんでだろ?
ボカッ! ボカボカッ! と、次々と牛野郎たちを拳で倒していく。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃッッッ!! 楽しすぎぃ!! 楽しすぎるよ! 圧倒的上の立場から一方的に虐殺するのって楽しすぎかぁーッ!!」
あひゃひゃ、虐殺がこんなに楽しいなんて知らなかったにゃん。
「いひひっ!! お前もお前もお前もお前も、全員ユメカのために死んでね♡」
次々と牛野郎たちを倒しつつ、最後には手でハートマークを作って決めポーズ。うひゃー、楽しすぎる!
「あとはおまえだけひゃ!」
残り一体となった金色の牛野郎に指差しながらそう言う。牛野郎のつけている金色の鎧が眩しいぜ。
「早く逃げて! あいつはまだ本気を出していない! いくらあなたでも、他のやつみたいに簡単には倒せない!」
ふと、リアンちゃんがわたしに話しかけてくる。まだ怪我から回復してないようで、歩き方がおぼつかない。
「あ、リアンちゃん、ユメカ、おねにゃいがあるんでひゅが、いってもふぃーふぇすか?」
「今、あなたのお願いを聞いている暇はないの……!」
「リアンちゃん、おねがーい。ユメカのおねがいきいてー!」
必殺、その場でジタバタ暴れる。
やだー! やだー! ユメカのお願いきいてくれないとやーなの!
「……なに? 早く言って」
リアンちゃんがお願いを聞いてくれるだってさ。優しいなぁ。
早速言っちゃおうっと!
「ふぃあんふぁんのふぉとふっとほーえんふぃふぇまひた!!」
「なに言っているかわかんない!」
リアンちゃんが叫んでいた。あれー? おかしいなぁ。ちゃんと勇気を振り絞って言ったんだけどなー。
え? なんて言ったかって? リアンちゃんのことずっと応援してました! って言ったんだよ!
「あっ、まずいあいつが!?」
ふと、リアンちゃんがわたしの後ろを指差した。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
振り向くと、金色の牛野郎が耳をつんざくような雄叫びをあげていた。
すると体中が光り出し、一回り体が大きくなった。その上、なにもなかった空間から黄金に輝く斧を取り出しては手に持つ。
「逃げて! 本気になったゴールデンミノタウロスはさっきより何十倍も強くなる。いくらあなたでも敵わない!!」
ふえー、なんかすごそう。よくわかんないけど。
「でも、ユメカなんだかおねむかも……」
ふぁーとあくびをしつつまぶたをこする。眠いこと自覚したら余計眠くなってきたような……。
「おきてぇえええ! なんで!? なんで、このタイミングで寝ようと思った!? いいから起きろぉおおお!!」
リアンちゃんが焦った様子でわたしの肩を掴んで前後に揺らす。
待って、そんなに揺らすと気分が悪くなってきた。
「うぇええええええ」
「ぎゃぁあああああ!! なんで突然吐いたし!?」
リアンちゃんが絶叫していた。あまりにも大きい声だったので、耳の中がキーンとする。