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―07― ユメカ、宴をする!! 後

「え? なんでこんなところにゴールデンミノタウロスが?」


 配信をしていた華月リアンはふと、切羽詰まった声を出していた。

 ゴールデンミノタウロス。金色の鎧に身を纏った牛の頭を持つ巨人が目の前にいた。ただでさえ強いと言われるミノタウロスよりもさらに強いとされているモンスター。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


黄金の牛男ゴールデンミノタウロス

 レベル:556


△△△△△△△△△△△△△△△


 無意識に〈鑑定〉してゾッとする。

 レベルが五百超えなんて異次元の強さだ。


【ゴールデンミノタウロスはまずい!】

【早く、にげて!】

【もしかして、イレギュラーか!?】


 ふと、コメントが荒れ出す。

 イレギュラー。

 ダンジョンでは時々そう呼ばれる現象が起きる。本来、階層によって出現するモンスターは決まっているのだが、時々その階層には出現しないような強力なモンスターが現れることがあるのだ。


「グラァアアアアアアアアアアッッ!!」


 ゴールデンミノタウロスは手に拳でリアンに襲いかかろうとした。

 一方、リアンは全力でその場から逃げようとする。例え、格上のモンスターだとしても、全力で逃げれば振り切れるはず。


「うそ……?」


 けど、リアンは立ち止まった。


「「グゥルル……!!」」


 というのも目の前に喉を鳴らした複数のミノタウロスがいたのだ。

 これだけのミノタウロスが出現するのもイレギュラーであった。

 前方にはミノタウロス、背後にはゴールデンミノタウロス。完全に逃げ道を失ってしまった。


「ゴラァアアアアアアッッ!!」


 叫びながらゴールデンミノタウロスは拳を振り下ろした。

 リアンは愛用している剣で受け止めようとする。


「くっ……」


 パリン、と剣が粉々に砕けた。リアンの使っていた剣はそれなりに強いとされる剣だったのに。それがいとも簡単に砕けたのだ。


「ガハァッ!?」


 そのままリアンはゴールデンミノタウロスの拳を受けてしまった。

 攻撃を受けたリアンはそのまま壁にめり込むように激突する。


【このままだとリアンちゃんが死んじゃうよ!】

【誰か、早く助けてあげて!】

【頼む! この配信を見ている探索者! 助けてくれ!】

【おい、近くにいる探索者はいないのか!?】


 リアンの無事を祈るコメントがたくさん流れる。


「う、うぐ……」


 リアンは立ち上がろうとするも力が全く入らなかった。

 どうやらもう戦えないことが伝わったようで、ゴールデンミノタウロスは勝ち誇った顔でニタリと笑みを浮かべた。


 どうやら私はもうダメみたい。

 と、リアンは確信していた。

 探索者として活動している以上、いつかこういう日が来るかもと覚悟してきたつもりだ。それでも、死ぬ間際になると、まだ死にたくないという後悔がつのった。


「ごめんね、お母さん」


 誰かに聞こえるかどうかの声量でそう口にした。

 真っ先に、今でも家で自分のことを待っているであろう母親のことを思い浮かべたのだ。

 ヒュッ、と風の音が鳴った。

 見ると、今にもゴールデンミノタウロスが拳を叩きつけようとしていた――。


 ドカンッ、と大きな音が鳴った。

 それは、ゴールデンミノタウロスが発した音でなかった。というのも、ゴールデンミノタウロスはなんらのか攻撃を受けたのか大きく仰け反っている。


「あ~っ、リアンひゃんひゃー! ひょんにゃところにぃいたんだぁ!!」


 それは、うれしいことがあったかのような弾んだ口調だった。


「あひゃひゃっ!! あっ、まずは、ヒクッ……ひぃこひょうかいひなきゃ! おはにゅめ! ひょうもみんにゃに笑顔ににゃる魔法をかけひゃうぞ、虹天ユメカでひゅ!」


 アイドルのような口上だった。ところどころ滑舌が悪かった。あと、口がポーション臭かった。


「…………」


 リアンは絶句していた。思考しようとしても、脳が拒否していた。


「ガゥッ!!」


 ふと、彼女の背後にいたゴールデンミノタウロスが襲いかかろうとしていた。

 とっさにリアンは「後ろ!」と叫ぶ。


「うるせぇ! わたしとリアンちゃんの時間を邪魔するなぁ!!」


 ドカーン、とユメカはパンチを繰り出す!

 すると、ゴールデンミノタウロスは壁にめり込む勢いで吹き飛んでいった。


「……は?」


 思わずリアンは呆けた声を出していた。

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