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隣の道の男

作者: にわかあめ

 いつからだろう。ふと気が付くと、道の上にいたんだ。そして、その道の上を来る日も来る日も歩いていてたんだ。


 この道はなんと言うかちょっと変だ。まず、先がほとんど見えない。横は見えるんだけれど。目の前は黒いもやがかかっている様で、この道がどこに続いているのか見通すことはできないんだ。だから、うっすら見えるシルエットから、道のゆく先を想像していかないといけない。想像は当たることもあるけれど、外れることも少なくはないから、歩くのには少し不便だ。それに先が見えないっていうのはちょっと怖い。


 もっと変なところは、その場で立ち止まれないところだ。この間、ちょっと休憩したくなって、その場にしゃがんでみようとした。でも座れなかった。何か得体のしれない物に体を押される感覚がするんだ。そして胸が苦しくなって、「前に進まないと。」って気持ちにさせられる。まるで「数秒の遅れも許さない。」って感じだ。だから寝る時も歩きながら寝ている。


 このシステムのめちゃめちゃ不便なところは、分かれ道に出くわした時だ。この道の分かれ道はとても厄介。立ち止まって考える暇すらないのに、無限に分岐があるんだ。どの道が歩きやすいかなんて吟味している余裕は微塵もない。そのうえ、「そんなところに道があったのかよ」って思うような、隠されてる道もあったりする。これに関して言えば、本当に理不尽極まりない。まあ、隣の道を歩いている人達が、「もうそろそろ分かれ道が来るぞ。」とか「この道が歩きやすい。」とか教えてくれるから、そこは親切なんだけど。


そうそう、この道は横の見通しがやけにいいんだ。前会った人によると、「見通しが見違えるくらい良くなった。」らしいんだけど、とにかく見通しが良い。だから、他の道とか、そこを歩いている人が見える。周りの道を見ていると、「道の形も種類もばらばらだな。」と思う。ボロボロで、「よくそんな道を歩けるな。」って思う道もあれば、「歩きやすそう。その道を歩きたい。」って思わされる道もある。そうやって道を見ていると、自分の道が歩きやすい方なのか、歩きにくい方なのかわからくなってくるんだ。そうなると、すごく不安になる。


道を歩いている人も様々だ。道が遠い人と話す機会はあまりないけど、道が近づいたときはその道の人と喋ることもある。さっき言ったように道について教えてくれる人もいるし、一緒に雑談して笑いあうような仲になった人もいる。もちろん、馬が合わない人もいるけどね。


 道が近くなった人たちに、いろいろ質問したこともある。「なんで私たちはこの道を歩いているんですか」ってね。そしたら「んなこと俺に聞くな。ただ歩いてればそれでいいんだよ。」っていう人もいたし、「僕はね……」って日が暮れるまで夢を語ってくれ人もいたよ。バラバラだなとは思う。でもね、みんなに共通して言えたことは、どんなことを言っていても不安そうだったってことかな。


 「君の道を歩きたいな。」って言っちゃったこともあって、そしたらすごく怒られた。「じゃあお前がこの道を歩いてみろ。」ってね。その道の辛さは、その人にしかわからないらしい。


 だから聞かせてほしい。


「君の道はどんな道?」「なんで道を歩いてるんだと思う?」



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