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プロローグ
テレビで見たお母さんは輝いていた。空を飛び、光を自在に操り魔物を倒す姿は美しく、格好良かった。女の子からサインをねだられ、笑顔で応じる姿は魔法少女のお手本だった。
小学生の時、私のために、ルカちゃんが戦ってくれた。高校生になった今では何と言われたか思い出せないけれど、男の子に悪口を言われたのは覚えている。
そこで、隣にいたルカちゃんが飛び掛かって殴りに行った。全身の体重を乗せた見事な右フック。プロボクサー顔負けの一撃が、その子の顎を捉えた。重い音が響き、仰向けに倒れた男の子。振り返ったルカちゃんは、満点の笑顔とブイサインを私に向けた。
「困ったらアタシを呼びなよ。友達なんだからさ」
その時の彼女は今の彼女と同じくらい純粋に輝いて、この世で最もヒーローと呼ぶにふさわしい人だった。
私はやっぱり、ヒーローにはなれないのかな。
苦く重い気持ちだけが、十四歳になるまで少しずつ蓄積されて行った。