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36話 この勲章が目に入らぬか

「そこまで!!!」


 モンスターをワンパンで倒したその瞬間。父が立ち上がり会場を制止させました。


「せ、聖王様!!違うのです!!息子はただ間違えてボールを落してしまっただけで」


 理事長が苦しい言い訳を言いますが


「それがそもそもおかしいはずだよ?試合中はアイテムを所持することは禁止のはずだよね。事前に厳しいボディチェックをすると説明を受けていた。

 何故彼は所持しているんだい?」


 と、笑顔ではありますが、目はまったく笑っていません。

 この微妙な表情をうまく使い分けるのが凄いと思います。

 笑顔がみんな引きつってしまう私とは天と地の程の差があります。


「それに我々を馬鹿にしないでいただきたい。SSクラスの生徒だけにバフが事前にかかっていたのがわからないとでも?」


 今度は剣王国の国王。


「マントの中にマジック装備で固めているのもまるわかりですよ。

 ……少しわかる教師がいれば、事前にマントに処置を施すはずですが

 学園の質はここまで下がっていたとは。嘆かわしい」


 と、魔術王国の国王。


 大方、理事長のマンセー要因だけ残していたがために、教師の質も低下してしまったのでしょう。理事長が「ち、違うのです」と何かつぶやいていますが、ここから挽回はまぁ無理でしょう。母親の狼狽ぶりに慌てたのでしょうか、今まで腰を抜かしていたマークがすくっと立ち上がり


「ち、ちちちちちがうのですっ!!!!聞いて下さい!!」


 と、父たちに叫んだ。


「ほう?どう違うと?」


 と、剣王国の国王が問えば、


「この女です!!!この女が全部悪いのです!!!」


 と、マークは私を指さすのでした。






■□■




(――ああ。やってしまった)


 マークがセレスを指さしたのを見てセディスは、マーク親子のその後の未来を大体悟った。

 シャティルは温和ではあるが子どもに害をなすものは容赦ない。

 案の上、セレスを指さした途端。シャティルの周りの空気が凍る。


「ほう、その少女が何をしたと?」


「卑劣にも、我々に試合前にバフをかけ、私の荷物にモンスターボールを潜ませていたのです!!

 そして目の前で倒してみせたのも、陛下たちに取り入るための演技なのです!!

 すべてはこの女の策略です!!」


「その少女がそんなことをして何の利益になるんだい?」


 シャティルが言えば、マークが話が通じると思ったのか胸を張り


「この女は下賤な平民!貴族の私に嫉妬していろいろ嫌がらせをしてくるのです!!」


「ほう、その理屈はおかしいな。

 彼女が君に嫉妬するわけがないじゃないか」


「ですが現に!!」


「セディス!!!!」


 呼ばれて、セディスは、セレスの隣に姿を現した。

 わざとらしく聖王国の派手な宮廷魔術師の姿で。


「なっ!?その勲章は聖王国のスペシャルナイト!???」


 マークがぱちくりと目をあけて、


「さて、僕の可愛い娘が、君に嫉妬だって?」


「……ま、まさか……」


 マークが口をパクパクさせながら、セレスを指させば


「そのまさかです。このお方は聖王国のセレスティア・ラル・シャンデール様です」


 と、セディスは答える。

 すでにこの模擬戦が終われば、セレス達は聖王国の教育機関に移ることになっていた。

 もう彼らはここで勉強するレベルではないのだ。さらに高度な技術や知識を学ぶ段階に入っているのである。

 と、いうかたぶんセレスが教える立場になる。もう教えられるレベルではない。今更隠す事もないだろう。



「さて、僕の可愛い娘に罪を着せようとしたその罪は……君はどうやって償ってくれるのかな?」


 と笑うシャティルの目はまったく笑っていなかった。



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