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舞い込んだ依頼、後悔しない選択を。

「…おっ、このリンゴみたいなの旨そうだな。…シャーリーに買って帰ってやるか。」

 Cランク昇格を果たした帰り道王都の中でも庶民的な区画を散策していた俺は露店に並べられている青リンゴのような果物に目をつけた。名前は書いてないけど…いいか。


「おばちゃんこれを…三つください。」

 露店のおばちゃんに購入の意思を伝える。


「あいよ!…お兄ちゃん、冒険者かい?。…まぁ、見るからに細いけど頑張りな。一個サービスしといてやるから。」

 おばちゃんは俺の全身を見た後少し哀れむよう台詞と共に果物を渡してくれた。サービスの一個がプラスされて四つになっている。


「おばちゃん、見た目で判断すると痛い目にあうぞ。俺は…まぁ、見たまんまだけど俺より小さいのに馬鹿力の女のシャーリーとかいるからな。」


「そんな事分かってるよ!。私が何年この街で商売やってると思ってるんだい?。だから強そうな人にはそんな事言わないさ!。」


「酷っ⁉︎。こう見えても俺は…Cランクなんだぜ?。」

 俺は服のポケットから今日手に入れたばっかりのギルドカードを出す。


「おっ!…へぇー、見かけに寄らないねぇ。でもこの王都ならCランクじゃまだまだ威張れないよ。もう一つおまけしてあげるからもっと頑張りな。お兄ちゃんまだ若いんだから!。」

 俺のカードを見たおばちゃんは一瞬見直したような表情を見せたけど次には激励の言葉と共にリンゴみたいなやつが渡されていた。


「ありがとう。俺が有名になったらここの店の宣伝をしていてあげるよ。」

 俺は三つ分の金を払い最後にそう言って店を離れる。後ろから期待してるからねというおばちゃんの声がした。なんか良いなこういうの。王都に来てからは基本的にアリアさんの家に商会が来ていて自分で買い物に行く必要がなかったけどこれからもくる事にしよう。俺は袋に入ったリンゴみたいな奴を抱えながらそう思った。






「クラヒト、明日から私とシャーリーと共に依頼を受けてほしい。」

 サクスベルク邸に帰った俺は待ち構えていたアリアさんに連行されて廊下を歩いていた。どうやら誰かを応接室で待たせているらしい。


「…アリアさんと一緒って…。どんな依頼?。」

 これは本当に見当がつかない。アリアさんはAランクだしこの王都には俺以外にももっと強い冒険者が沢山居るはずだ。


「それは依頼主から直接聞いてくれ。」

 応接室に到着した。扉を開けて中に入ると見たことのない女の人がシャーリーと喋っている。確実に会ったことないはずないだけど…誰かに似ている?。


「お待たせしました、クラリス様。こちらがクラヒトで御座います。」

 アリアさんがとても丁寧な口調でその女の人に俺のことを紹介する。それだけでこの人が偉い人だとわかる。…うーん、誰に似てるんだ?喉元まで出かかっているんだけど。


「…なんか弱そう。本当に姉上のお気に入りなの?。」

 おっと、いきなりの挨拶ですね。その女の人は俺のことを胡乱げな表情で見つめて言った。姉上…そして…あの髪の色…ん?…まさか…、確か双子って言ってたな。


「…えーと、ひょっとしてローゼリア様の…」


「あぁ、ハートラルク王国第三王女クラリス様だ。」

 予想的中だよ。なんかローゼリア様に似てると思ったんだ。でもローゼリア様と比べると…不健康そうだな。


「アリア、これは本当に使えるの?。私に必要なのは使える駒なんだよ?。今回は超少数精鋭で望まないといけないんだから。」

 クラリス様はソファーをズルズルと体を預けていく。とてもじゃないが偉い人には見えない。


「クラヒトには実績があります。今回の件には適しているかと。」


「…ふーん、…分かった。座りなよ。話をしよう。」

 もう一度俺に視線を向けたクラリス様が着席を促す。


「今回アリア達に依頼したいのはある場所の攻略。…先日ダンジョンが発生した。」

 ダンジョン!。この世界にはあるのか。


「問題はそのダンジョンには魔族がいる可能性があるってこと。魔族が潜んでいる可能性がある場所を放ってはおけない。だから一気にダンジョンを踏破してもらう。幸い階層は浅いから。」


「…魔族がいるならそれこそ腕利きを沢山投入すれば良いんじゃ…」

 話を聞いていて思ったことを口にする。戦闘になる可能性があるならそれこそ嵐鬼とかを連れて行けば良い。


「それは出来ない。罠の可能性もあるし、王都が手薄になるのは避けないといけない。少数なら私のスキルで守れるから連れて行きたい駒は索敵能力持ちと近接型、そして、一人で複数の役目をこなせる万能型アタッカー。あんたにはその役目が舞い込んでいる。」


「それにあんたは魔族撃退の経験がある。それに何物にも変え難いものだと姉上が言っていた。」


「…で?…どうする?受ける?受けない?。」

 クラリス様が俺を見つめながら尋ねる。俺のことを品定めしているような視線を感じながら俺は考えていた。


「…俺は……」

 …正直言おう。かなり怖い。魔族と戦った経験って言ってるけど二回ともボロボロになったわけだし出来れば避けたい。だけど…俺が断ってもアリアさんとシャーリーは行くことになるだろう。その時は俺は後悔しないだろうか?。もし、俺が一緒だったらと。俺にはスキルがある。人を癒せるし、高速で逃げることも、俺自身が盾になることも出来る。魔族に有効な武器も作れる。確かに魔族相手に俺は有効なのかもしれないな。なら…


「俺は受ける。…どこまで力になれるか分からないけど…、魔族が人を傷つける存在なのは確かだから。俺の力でその脅威からみんなを守れるなら…やるだけやってみる…みます。」


「…よく言った!。あんたの覚悟受け取ったわ!。覚悟は力になる。絶対に成功させましょう。」

 それまでソファーに沈んでいたクラリス様ががばっと起き上がり俺の手を握ってきた。話し方もさっきまでと全然違う。


「さっきまではごめんね。クラヒトが信用できるかを知りたかったの。あんな怠惰で横暴な態度の女の話をしっかりと聞いてくれた。そして恐怖を感じながらも受けてくれた。私はクラヒトを信用する。姉上の言葉は正しかった。」


「さぁ、ダンジョンにいきましょう。」


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