Cランク昇格、先達の助言。
魔族を撃退してから一ヶ月が過ぎた。その間俺はマメに依頼をこなし今日遂にCランクへの昇格を果たした。アリアさんとの話で当初目指すべきと定めたランクに到達したのだ。
「…クラヒト様、Cランクへの昇格おめでとうございます。こちらが新しいカードになります。」
受付の女の人から緑色になったギルドカードを渡される。因みにこの前の腹黒受付嬢じゃない。初めて王都に来たときに担当してもらった人だ。腹黒受付嬢はギルドから居なくなっていた。……なんでだろうか?(すっとぼけ)。
「おぉ、なんか渋いな。」
初めて聞いた時はなんで一人前の色を緑なんかにしたんだろうと思ったが持ってみてわかる。…かっこ良い。
「おぉ、お前はこの前の厄介事男じゃないか。お前のせいでうちのギルドは大変だったんだぞ。ギルドの職員が1人何故か減ったせいで俺まで事務仕事をしなければならなくなった。」
ギルドの奥からこのギルドのマスターが出て来た。相変わらず赤い髪が厳ついな。
「いや、それは俺のせいじゃないですよね。明らかにそちらの対応不備でしょ。」
「…まぁ、そうなんだがな。調べていると出るわ出るわでこれまでの不正が明るみにでたからな。そういう意味では感謝しているぞ。」
あの人、他にも色々やってたみたいだ。…うん、いい気味だな。
「…Cランクか。お前に関しては色々と噂は聞いている。Aランク冒険者に侯爵家当主、騎士団団長及び副団長。挙げ句の果てに王女様。よくもこれだけのコネクションを作れたものだ。そしてその全員がお前を高く評価している。…どうだ?もう一つぐらいランクを上げてやろうか?。」
マスターの軽口を聞いていた受付嬢がビクッとして俺の事を伺うように見つめる。どうやらあの件以来俺の事はギルド内で権力者のお気に入りと見なされているみたいだ。
「いや、それは断ってます。コツコツやっていくんで。それに俺は評価が欲しくてやってる訳じゃありませんよ。偶々繋がりを持った人がなんか偉かっただけです。どんな人とでも一期一会。縁を大事にしたい。」
「…ふん、…中々眩しい事を言うじゃないか。面白い…流石は嵐鬼に目をつけられた男。…名乗ってなかったな。王都冒険者ギルド支部長のカートだ。」
嵐鬼に目をつけられた事は不本意でしかないんだけどな。ギルドマスター、カートさんが手を差し出してきたので俺も差し出し握り合う。…待てよ、この場合カートさんはマスターでいいのだろうか。支部長とは?。
「…ん?あぁ、役職か?。知っていると思うが王都にはギルドが二つあるからな。そっちが本部でこっちが支部って扱いになっている。だから俺は王都のギルド全体ではサブマスターってことになるな。お前たちからすれば贔屓に感じるかもしれないがギルドが2つあるのにはきちんとした理由があるんだ。納得しろ。」
俺が疑問に思ったのを感じ取ったのかカートさんが答えてくれる。本部っていうのはAランク用のギルドのことだな。アリアさんはいつもそっちに依頼を受けに行っていた。一見冒険者の差別にも思えるが俺はそうは思わない。依頼と冒険者のミスマッチを防ぐ為には有効な手段だと思う。その事をカートさんに伝えると…
「…ほぅ、…気づいたか。案外その事に気付けない冒険者は多い。そういう奴に限って口ばかりだったりする。本部でランクが満たない者への妨害が入るのも決して邪魔をする為だけじゃないんだ。身に余る依頼を受けさせないようにというある種の優しさなんだ。」
「気づいたお前は見込みがある。上に上がる冒険者も初めは弱い。その弱い時にどれだけ自分を見失わずに守れるか。生き抜く為の観察力に優れた奴が結果強くなる。ま、最後は才能で振り分けられるがな。そこまでは努力で登れる。お前はその条件を満たしている。」
「強くなりたいのなら経験を積め。死ぬ間際まで追い込め。だが死ぬな。Aランクまで登った男のありがたい助言だぞ。」
それだけ言ってカートさんは奥に引っ込んでいった。…かっけぇーな。