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魔翠玉の真実、…え、産まれるの?。

「…クラヒト!話は聞いたぞ!。なんでお前はそんなに厄介ごとに巻き込まれるのだ!。」

 ローゼリア様と謁見?した日から少し経った。いつもは早く依頼を受けろと急かしてくるシャーリーもゆっくりさせてくれている。そんな所に長期の依頼に出ていたアリアさんが帰ってきた。その後ろには見覚えのある人が2人。


「…えーと、それは俺も知りたいところなんですけどね。普通に依頼を受けたらそこに魔族がいたんで。何も好き好んで魔族のところに行ったりしませんよ。」


「…あんた…本当に魔族に勝ったの?。あんた達のせいで私達の依頼達成が目立たなくなっちゃったのよ?。嘘だったら承知しないから。」

 アリアさんの後ろにいた2人、その内の1人であるジゼルさんが話に入ってきた。ジゼルさんは夢幻の砲台の異名を持つ冒険者で、幼馴染みのアリアさんと会えなくて寂しかったのに強がっちゃうツンデレな人だ。


「一応騎士団のエルマさんに確認してもらいました。」


「…え、そ、そう。エルマさんが言うなら間違いないわね。…疑ってごめん。」

 ジゼルさんはツンツンしちゃうけど自分が間違っていると分かると素直に謝ってくれる。普通に育ちが良いんだろうな。


「うむぅ、魔族か。以前に一度出会ったことがあるが…中々に骨の折れる敵だった。何とか数人で退けることが出来たのだが…君たちは2人だったんのだろ?。…素晴らしいな。」

 もう1人の来客であるイベルカさんが俺のことをじっと見つめてくる。あの目は…少しエルマさんの目と似ている。俺と戦いたいと言った時の。…出来れば、絶対、何があっても遠慮したい。


「…た、偶々ですよ。シャーリーが隙を作ってくれて!。…いやー、シャーリーのおかげだったなぁ。俺は何も出来なかったなぁー。」

 何とか興味をシャーリーへ逸らす。…すまない、シャーリー。だけど俺は戦闘狂に目をつけられるのは嫌なんだ。…既に嵐鬼こと、フィーネに目をつけられているけど。


「ほぅ、自らの武を誇らず…謙虚な姿勢だ。クラヒトよ、お前は良い冒険者になるぞ。…ジゼル、お前はもう少し慎みを持つと良い。」

 いや、なんで⁉︎。なんか評価がうなぎ上り。そしてイベルカさんに注意されたジゼルさんが恨みの籠もった目で睨んでくるんですけど!。何とか話を逸らさないと、…あ、そうだ!。


「魔族と戦った時にこれを落としたんですよ。結構珍しい物らしいんですけど。」

 俺はポケットから魔翠玉を取り出す。一応貴重な物らしいからケースに入れて身につけている。


「…これは……何?。良い色じゃない、翡翠色って言うのかしら?。…気に入ったから買ってあげても良いわよ?。」


「…待て、ジゼル。クラヒト、お前これはまさか…魔翠玉か?。」

 ジゼルさんは魔翠玉を知らないようだ。買うって言ってるのはその値段を知らない証拠でもある。一方イベルカさんは魔翠玉を知っているし見ただけでわかるみたいだ。


「…魔翠玉だと⁉︎。…いつも陛下が付けておられるブローチの素材だぞ?。」

 アリアさんは存在自体は知っているけど今俺が出した物がそうだとは分からなかったらしい。冒険者の上位になると知っている人は知っているようだ。イベルカさんが一番詳しそうなのは…何故だ?。


「実はさっき話した魔族が落としていったのだ。その時騎士団から詳しい事を聞いた。…と言っても俺の物はこの大きさだがな。」

 そう言ってイベルカさんが背負っていた大剣を机に置く。そこには俺のとは色違い石榴のような紅い欠片が埋め込まれていた。


「…武器に埋め込んでいるんですか?。」

 思わぬ魔翠玉の使い方に驚く。そう言うとイベルカさんが剣を構えながら言った。


「あぁ、魔翠玉には未知の可能性がある。俺はこれに魔力を蓄える事で……こうなる。」

 大剣が燃え盛る。


「うお⁉︎…燃えた。……でも剣が溶けたりは…」


「それがこの魔翠玉の不思議な所だ。斬りたい物にだけ熱さを伝える。剣にはなんの問題もない。」

 炎を消したイベルカさんがさっきまで熱せられていた刀身に手を添えるが火傷する様子はない。


「俺のサイズでこの力だ。お前のそのサイズなら何が出来るか。よく考えると良い。お前の一生の力になるだろう。」

 一生の力か。…どんな力があるのか考えるだけでワクワクするな。


「因みにジゼル、魔翠玉を買うと言っていたがそれは無理だ。」


「なんでよ。…高いの?。でも私は伯爵家の令嬢よ?。それに私自身もかなり稼いでいるわ。」


「俺のこの魔翠玉の時には国の一年の予算の半分を出すと言われた。まぁ、俺は金に興味がないから断ったが。今になって考えると断って良かったと思う。」


「…え、嘘。…そんなに高いの?。」


「ジゼル、お前は魔法使いなのに理解力がないな。その宝石の入手条件は恐らく魔族を追い込む事。それを出来る者がこの国何人いる?。片手で足りるだろう。それ自体にも相当な力があるとなれば値段が跳ね上がるのも納得だ。」

 アリアさんが呆れたように説明してくれる。その言葉に唇を尖らせるジゼルさん。この2人は仲が良いのか悪いのか分からないな。


「王家にも2つしか無いって言ってましたよ。一つは国王が着けててもう一つは…えーと、第一王女の…」


「マーガレット様か?。」


「あ、そうです。マーガレット様が持っていると。だからローゼリア様もとても興味津々で慎重に触ってました。」


「…なら…ねぇ、少しだけ触らせてくれない?。」

 ジゼルさんがうずうずしながら聞いてくる。その様子は玩具を前にした猫のようだった。まぁ、別に減るものでも無いし許可する。


「…壊すなよ。」


「壊さないわよ!。」

 ジゼルさんはゆっくりと魔翠玉に手を伸ばす。


「………え、……今…魔力が…」

 触れた途端不思議そうな顔をするジゼルさん。


「どうしたジゼル?。」


「…うーん、…なんだろう今のは。魔力が…乱された?…違うな……抜き取られた…そう、…抜き取られている。…でも…減り方が…」


「え、アリアさん、ジゼルさんどうしたんですか?。」

 突然ブツブツ言い出したジゼルさん。先程までの元気娘な感じとのギャップが凄い。


「あー、これはジゼルの癖みたいなものなんだ。ジゼルは昔から魔法が好きでな。自分が知らない魔法の本などを読むとこうなっていた。そして次の日にはその魔法を使えるようになっていたんだ。…ジゼルは伊達に夢幻の砲台と呼ばれていないよ。」


「……うーん、そうね。この石の中に何かがいる気がする。…吸い取られ魔力に偏りがある。…自分の好物の属性だけを食べた?。クラヒト、あなたの属性は?。」


「…闇です。」


「…闇か。…なら…『闇夜』。」

 ジゼルさんが唱えると視界がなくなる。部屋全体が闇に閉ざされたようだ。ブラインドの上位版のようだ。…さらっと使ったな。改めてこの人が実は凄い人なのだと分かった。


「…ほら、…石の周りを見てご覧。闇が…喰われている。」

 魔翠玉のあった方向を見てみると魔翠玉の周りだけぽっかりと暗闇が晴れ机の木目と見える。そしてその範囲は徐々に広がっているようだ。


「…解除。…私の推論通りだったな。この石…いや卵と呼ぶべきなのかもしれないけど…は闇属性の魔力を食べている。」

 魔翠玉なのに卵でした!。そんな事ある?誰もそんな事言ってなかったのに。


「…卵だと。…うぅーむ、これまでに例が少ないから分からんな。…流石にそのサイズならではのことだろうが。」

 イベルカさんもアリアさんも唸っている。どうやら事態が飲み込めないようだ。


「…持ってて害ってあります?。」


「いや、多分無いけど。ってあんた平気そうね。こんな事態なのに。」


「…いやー、なんか…慣れました。今まで持ってても特に悪影響とかもなかったしこれからも無いんなら別に問題ないですよ。…何か産まれるのは想定外でしたけど。…」

 …出来れば俺に制御出来るのが産まれて欲しい。…異世界でそれは限りなく可能性が低いと思うけど。

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