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ローゼリア様とお話、この国の王家は立派だ。

 入ってきたのはローゼリア様だった。俺がそれを認知するのと同時ぐらいにユリウスさんとエルマさんが立ち上がりローゼリア様に頭を下げる。


「…え、あっ!…ととっ…」

 それを見た俺とシャーリーも慌てて立ち上がろうとするのだがソファーに膝を取られもつれてしまう。


「そう慌てることはない。お前は冒険者なのだろう。ならば王族を相手にもドンと構えていても問題はない。冒険者は権力からも自由なのだからな。」

 俺とシャーリーの方を見てローゼリア様が微かに笑みをこぼしながらそんな事を言う。いや、そう言われても実際に、はい…そうですか。とはならないだろう。ローゼリア様もそれを分かっていながら言っているに違いない。


「ローゼリア様、本日はどのようなご用件で?。」

 エルマさんがローゼリア様に尋ねる。


「いや、クラヒトの顔を見に来ただけだ。あれからまた色々と活躍してくれているらしいな。アグナドラゴン亜種の討伐に嵐鬼の鎮圧、更には上位魔族の撃退。どれも素晴らしい戦果だ。」


「詳しいですね。」

 俺なんてただの1人の冒険者だろう。それにしてはローゼリア様は知りすぎている。…ローゼリア様は俺のスキルの六つの能力の名前を知っている。それと多分集めているであろうこれまでの俺の戦いの記録を合わせれば俺のスキルについてかなり考察出来るはずだ。


「お前は私のお気に入りだからな。初めてだったよ、儀礼で血の涙を流し気絶した者を見るのは。それだけで深く印象に残るのは避けられまいよ。」

 …あー、あったなそんな事。あの時はマジで頭が割れると思った。でもそのお陰で俺のスキルが目覚めたんだし感謝している。


「…ほぅ、新しい情報ですな。…それにしても…気絶するとは。私の時も痛みはありましたがそこまででは。クラヒト君のスキルは余程余程強いのだろあね。」


「おいおい、エルマ。そんな目で見ても私からはスキルについては情報は漏らさないぞ。私の信用に関わる。クラヒトとは友誼を結んでおきたいのだ。」

 この言い方からするにやはりローゼリア様は俺のスキルについて結構知っている。下手をすればアリアさんやシャーリーよりも詳しいかもしれない。…素直に全部話した方が良いかな。良い人だと思うし。


「いやぁ、これは失礼しました。やはりいつになっても強者とは闘ってみたいものなのですよ。それでは私達はお邪魔でしょう。既に此方の用件は済みましたので失礼させていただきます。」

 エルマさんとユリウスさんが退室する。どうやらローゼリア様に気を使ったようだがこちらにも気を使って欲しかった。だって俺は一介の冒険者なのだ。それが王女様と話すことなんて早々ないのだが⁉︎。


「スキルについて黙っていて頂いて有難うございます。俺自身まだ分かっていないこともあるので。」


「気にするな。さっきも言ったようにお前は私のお気に入りだ。まぁ、お気に入りと言っても友としてだがな。だからそんなに不安そうな顔をするな。」


「…べ、別に私は…、その…なんでもないのよ。」

 ローゼリア様がそれまで黙っていたシャーリーに話を振る。突然の展開にテンパるシャーリー。中々珍しい光景なのでしっかりと記憶に焼き付けておこう。


「…はは、冗談だよ。だけど安心してくれ。クラヒトを王家で囲い込んだりはしない。だから君の目の前から消えたりはしないさ。」


「…ありがとうございます…なのよ。」

 …うーん、ローゼリア様とシャーリーの話の内容は良く分からなかったけど突っ込むのも気が引ける。だから俺は黙っておくことにした。


「さて…それがクラヒトが手に入れた魔翠玉か。…こうしてマジマジと見るのは初めてだ。…少し触ってもいいだろうか?。」


「えぇ、別に構いませんが…。ローゼリア様でも珍しい物なのですか?。」

 ローゼリア様が魔翠玉を手に取り覗き込むように観察する。その際も直接は触れないようにハンカチで挟んでいる。王族がそうするってどれだけ貴重なんだ。


「あぁ、先程説明を受けたと思うが入手条件が極めて困難だ。国として所持しているのは二つしかなくそれももっと小さな欠片だけだ。」


「一つは有事に備え日頃から父上が所持している。もう一つはマーガレットお姉様が研究に使っている。だから私ではあまり見ることが出来なかったんだ。」

 …成る程…。…俺はそんな貴重な物を貰っても良いのだろうか。今からでも献上した方が…。


「…うん、…もう良い、感謝する。底知れぬ力を感じる宝玉だった。貴重な経験をさせてもらった。」

 ローゼリア様が魔翠玉を俺に返してくる。その様子には少しも後ろ髪を引かれる様子はない。


「…本当に俺が持っていてもいいんですか?。もし、良かったら…」


「いや、この魔翠玉はクラヒトの物だ。幾ら希少価値がある物でも手に入れた者に所有権が発生するのは道理。それを権力を盾に違えるのは間違っている。それに売ってもらうにしても価値が計り知れない。今所持している二つでもそれぞれ国庫の半分程の価値だったと聞く。それよりも大きく状態の良い魔翠玉など買えまいよ。」

 …どうやらこの国も王家はかなりまともらしい。酷い所だと徴収されそうなのに。


「…下手に徴収などしてその者と仲違いする方が問題なのだよ。何せ魔翠玉を手に入れることが出来た強者なのだから。値段がつく物の為に値段をつけられぬ者を失うのは馬鹿らしいだろう?。」

 どうやら俺の考えは顔に出ていたようだ。


「…とは言え…クラヒトとシャーリーには褒美を出す。我が国を魔族の脅威から守ってくれたことに対する対価だ。2人ともカードは持っておるな?。」


「はい、持ってます。」


「ならば後日そのカードに報酬は振り込んでおく。…疲れているであろう今日はもう帰って良い。…いや、私が送ることにしよう。滞在先はサクスベルク邸でよいかな?。」


「あ、はい。そうです。」

 返事をした次の瞬間、俺の前にはサクスベルク邸の大きな門があった。隣にいるシャーリーもびっくりしている。


「…では、また会おう。」

 ローゼリア様はそれだけ言うと消えてしまう。これが転移か。初めての転移で呆然として俺の忙しい1日は幕を閉じた。


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