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王城への召喚、今まであった中で最強の人と出会う。

「…緊張しすぎて心臓が口から出そうなんだけど。」

 俺とシャーリーは今王城に来ている。魔族と出会った事をユリウスさんに話したら有無を言わさぬ勢いで連れてこられた。そして王城の一室に通されているというわけだ。


「…お、落ち着くのよ。あくまで確認のために呼ばれただけなのよ。何かされることなんてないのよ。」

 通されたのは広い部屋だったのだが俺とシャーリーはソファーに隣り合って座っている。口では強がっているがシャーリーも心細いようだ。その証拠にさっきから尻尾を撫でているのだが一向に怒らず寧ろ俺の手に巻き付けてきている。


「…あの宝石みたいなのなんだろうな。ユリウスさんも誰かを呼びに行ったまま帰ってこないし。」

 あの宝石を見せた瞬間にユリウスさんの顔色がはっきりと変わった。それだけ希少なんだろうか。


「すまないね、お待たせして。」

 ユリウスさんが帰ってきた。後ろにはもう1人男の人がいる。


「…っ!。…」

 俺はその人を見た瞬間総毛立つ感覚を味わった。頭の中の六芒星が激しく点灯し騒ぎ立てる。…間違いない。この人は俺が今まで会った人の中で一番強い。その証拠に体には重く何かがのしかかるような感覚を覚えている。


「…この青年が報告に合った者か。成る程…出来るな。」

 その男性が俺の方を見ながらそう言う。


「エルマ様、殺気を出すのはおやめください。王城内の兵士が驚きます。」

 ユリウスさんがその男性を嗜めるように言うと俺にかかっていた重圧のようなものが消える。


「すまない。どうしても確認したくてね。君が…クラヒト君だね。話はローゼリア様から聞いたことがある。」


「…あの、…貴方は?。」


「おぉ、これは失敬。私の名はエルマ・グラッド。この国の騎士団団長を任されている。」

 …騎士団団長。…確か前にシャーリーが言っていた、単騎で古龍の討伐を成し遂げた化け物。その能力は…重力。多分この時代の最強の一角だと思われる。


「…俺の名前はクラヒトです、ってもう知ってますよね。…」


「あぁ、元々君の名は知っていた。ローゼリア様が転移で帰城され、魔族討伐の軍を率いた際にその魔族を討伐した男だとね。あの自他共に厳しいローゼリア様が手放しで褒めていらした。」

 …ローゼリア様は王城で俺のことを話し過ぎじゃないかな。セレナちゃんのお父さんも俺のことを知っていたし。


「そしてそちらがシャーリーさんだね。将来を嘱望された冒険者だったのに何故か受付嬢に転身した。変わったスキルを持っていると聞いている。冒険者への復帰歓迎するよ。」


「私の情報まで。流石に王城の情報網は凄いのよ。」


「戦力を知ることは国を守ることに繋がる。特に君たちのような勇敢で強い者の情報は常に欲しているのだよ。」


「エルマ様、そろそろ本題に。」


「あぁ、そうだな。…君たちの持ち込んだこの宝玉、…これは魔翠玉と呼ばれるものだ。」

 エルマさんが机の上に宝石を置く。俺が持ち帰った物だ。


「この魔翠玉はある種族のそれも上位の存在しか精製することが出来ない。その種族は日常からこの石に自らの生命力、魔力を蓄えておくのだ。そして有事にはそれを解放して傷などを治す。」


「その種族は魔族だ。…これを君が持ってきたと言うことは君が魔族相手にその力を使わせたことの何よりの証拠。そしてそれは君が普通の戦士ではないことの証ともなる。」

 …だから日輪を食らった後途中で炭化が止まったのか。そんなびっくりアイテムを持っているなんて反則だろう。


「…魔族を撃退した方法は…恐らくスキルだろうな。だから詳しく話さなくてもいい。でも一つお願いしたいことがある。…また何かあった時には力を借りたい。今この国では力のある者を…そして誰かを思いやれる者を探している。」


「クラヒト君がセレナ様を嵐鬼から救った話は騎士団でも有名なんだよ。本来街中での暴徒の制圧は騎士団の仕事だったのに君に任せてしまったからね。全員気を引き締めなおしているんだ。」


「…それは…。…俺が力を使うのは自分の為です。俺は勇敢じゃないし、痛いのも嫌だ。だけど自分や大切な人たちが危ない目にあったら俺は全力で戦います。ローゼリア様にはお世話になったのでこの国も大切です。…それでどうですか?。」

 俺はそこまで勇敢じゃない。怖いものは怖いし逃げたくもなる。だけど力があるのに使わずに後悔するのは嫌だ。だから俺が戦うのは自分の大切なものを守る為。小さい俺にはそれぐらいがちょうど良いはずだ。


「あぁ、それで構わない。君は歳の割に冷静で思慮深いな。今の言葉も自分のことを客観的に見ていないと出ないだろう。…君は信頼できる。」

 エルマさんが手を差し出してくる。俺はそれを握り返す。エルマさんの手をゴツゴツしていてそれだけこの人が努力してきたんだと感じた。


「クラヒト君、良ければ君のランクを上げるように手を回そうか?。此方としても魔族と渡り合える人材がいつまでも低ランクなのは損失なんだ。」

 ユリウスさんがそう提案してくれる。…ありがたい申し出ではある。純粋に俺のためを思っての発言だろう。


「申し訳ありませんがそれはお断りします。実は俺のスキルには使用制限があるんです。だから通常戦闘の技術はまだまだなので、少しづつ強くなっていきます。」

 もしスキルが全て尽きた時今の俺は雑魚だ。上のランクに上がっても誰かと一緒なら、それか敵が少数なら問題ないだろう。でも…それじゃあダメなんだ。今回みたいなことがあった時に俺自身で最低限は戦えるようにならないと。


「…そうか。うん、それならその方がいいよ。無理にランクを上げてしまっては苦労が増えるだろうからね。」

 ユリウスさんも納得してくれたようだ。


「…この魔翠玉は君に渡しておく。戦利品だ、有効に使うと良い。」


「…有効に…って……」

 宝石が俺に返却される。返却されても使い方なんて分からないので尋ねようとしたのだが突然ドアが開く。入って来たのは騎士団の団長と副団長がいる部屋にノック無しで入ってこれる人。


「ここにクラヒトが居ると聞いたのだが。」

 久方ぶりのローゼリア様だった。

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